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当たり前を疑う。「ノート・グルーピング」という音楽の捉え方。

はじめに

今回はリズムに関して。

ノート・グルーピングという、あまり一般的ではない音楽の捉え方について、その初歩を、演奏しない方も実感できるように書き進め、音楽に関わらず様々なことに応用できそうな感じで結んでみよう!という試みです。

馴染みのリズム

「ちゃんかちゃんか」

音を出していい環境であれば、下の動画を開いてちょっと聞いて、印象を覚えておいてください。

阿波踊り、お祭りの定番ですね。

多分、「ちゃんかちゃんかちゃんかちゃんか」みたいに伝えれば、多くの人は聞かなくても「ああ、あのノリね」と共有できると思います。

楽譜通りの区切り方

このリズムを簡単な譜面にすると、次のようになります。

「ちゃんかちゃんか」は小節線で綺麗に括られています。
この区切りに違和感を持たない人は多いと思います。

恐らくほとんどの人は、阿波踊りのノリを「ちゃんかちゃんか」の連続として、赤枠のように認識しているはずです。

楽譜と違う区切り方

次に、馴染みのあった阿波踊りが全く違うものに感じられる実験をします。

リズムは一緒ですが、次の譜面のように「かちゃんかちゃん」を繰り返すイメージでノってみましょう。

難しく感じる人もいると思いますが、しばらく繰り返せば馴染むはずです。

音の区切り方を変える

さて、タイトルにある「ノート・グルーピング」とは、マルセル・タビュトーというオーボエ奏者が提唱したリズムの捉え方です。

阿波踊りに当てはめると、「ちゃんかちゃんか」じゃなくて「かちゃんかちゃん」って感じで演奏しようぜ、という話。

それでは、「ちゃんかちゃんか」と「かちゃんかちゃん」で何が違うのか、改めて比べてみましょう。

「ちゃんかちゃんか」=赤い枠は、一拍目から始まって、小節の最後の音で区切られます。

一方「かちゃんかちゃん」=青い枠は、小節の二つ目の音から始まって、次の小節の一拍目で終わります。

タビュトーは「楽譜は音楽を広める上で欠かせなかったけど、読みやすくするために書いた小節線が原因で流れの途切れた演奏が行われるようになった」といったようなことを語り、より豊かな表現を行うためにリズムの捉え方を赤枠から青枠のように変える必要性を訴えています。

全ての音が大切

1拍目や3拍目などの奇数拍は強拍とも呼ばれ、アクセントをつけるように言われたりする、とても重要なタイミングです。

ただ、強拍を重視しすぎた結果、それ以外の音、つまり偶数拍目や裏拍などの弱拍への意識が希薄になってしまうことは少なくありません。

それを回避するため、裏拍を意識しようと言われたりもします。
重要な指摘だと思います。

流れはもっと大切

一方タビュトーは、一拍目をスタート地点でなく終着地として捉え、そこに向かう過程を大切にすると良い演奏ができると主張しています。

足でリズムをとる時、ほとんどの人は1拍目でドンと地面を踏むと思います。

この時、下げること=強拍だけを意識すると、上げること=弱拍を疎かにしてしまう。
その結果、下げるまでの動作にばらつきがでて、不安定になります。

下げる前の準備段階として、上げる意識は重要です。

一方、上げること=弱拍だけを意識すると、下げること=強拍を疎かにしてしまう。
それはそれでなんとなく落ち着きません。

下げるという目的も忘れてはいけません。

重要なのは、上げてから下げる、弱拍から強拍、「か」から「ちゃん」といったように、準備から目的までの流れを感じることです。

当たり前をそのまま受け入れてしまうことの危うさ

解説はここまで。

本当にさわりだけですが、リズムの区切り方を変える意味について書いてきました。

「準備から目的までの繋がりを意識する」というのは、文章で見れば重要だと誰にでもわかることですが、音楽になるとその意識ができていなかった、流れが途切れてしまっていた人もいると思います。

自分にとっての当たり前を疑ってみると景色が違って見えること。
景色の見方を変えると出力も変わること。

ノートグルーピングはとても示唆に富んだ考え方です。

読んでくれた皆様も、当たり前だと思っていたことにメスを入れてみてください。

実際、何度取り組んでも上手くいかず停滞していた物事があっさり進展したりします。

問題をなかなか解決できない原因は、景色の見方、感じ方にあるのかもしれません。

演奏される方へ

僕は、指を動かすのが苦手ですが(笑)ギターを弾きます。

父がベーシストなこともありリズムトレーニングはたくさんさせられてきたので、コードストロークだけは比較的得意(笑)だったのですが、ノートグルーピングの存在を知って実践している今の方が、より楽しく、より豊かに演奏できている実感があります。

認識を変えるのはとても難しく、僕自身まだまだ葛藤はありますが、当たり前と思っていたリズムの感じ方を否定してくれたタビュトーには感謝しかありません。

楽器を弾かれる方は、馴染みのある楽曲を違う区切り方で捉えてみてください。

脳から火が出ますが、演奏は確実に変化します。

まずは弱拍から強拍への意識を持つことからはじめ、少しずつ発展させていくのがおすすめです。

より詳しく知りたい方は、ぜひ以下の本を読んでみてください。


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