ラインの幅とチームの戦略

今回は、ゾーンディフェンスの要"ディアゴナーレ"について、その解釈の違いに触れ、オープンとは何か、状況に適したラインの横幅がどのような要素によって決まるのか、チームとしてどのような選択をするのか考察します。

ディアゴナーレとは

ディアゴナーレという言葉自体はサッカー用語の中では比較的普及している印象ですが、複数の解釈が可能な概念な気がしています。

・前に出たDFの背後を予め"埋めておく"
・前に出たDFの背後へのコースにアプローチする“準備”


プレーする際には、どちらか一方というよりは、"何対何で配合するか"みたいな話になるはずです。

ですが、この意識の違いによって、ラインの横幅と、両脇のスペースのサイズ、適切な体の向きは大きく変化します。

背後のスペースを埋める

これが一般的な解釈だと思います。

前に出た選手の脇を通るコース上に体を置くことで、そこを達パスやドリブルの可能性を消す意図があります。

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比較的長距離の移動が求められ、次の可能性に準備するため体の向きを大きく変える必要もあります。また、ユニットの両脇のスペースが広がるため、攻撃側にとってはサイドには展開しやすい状態です。

サイドに行かせるというのも考え方の一つで、チームとして前からプレスに行く際、重要になってくる発想です。それについてはまた後々。

背後へのコースにアプローチする準備

背後のパスコースを完全に消すのでなく、実際そこにパスやドリブルでボールがきた場合にアプローチしやすいポジショニングで準備しておくパターンです。

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移動距離が短く済み、体勢の変化も小さいです。より危険な場所にボールがくる場合を想定して、ユニットの内側に足を出しやすい体の向きとステップワークが求められます。

また、より危険度の低いユニットの外側にボールが出た場合、ラインの幅が比較的広いためボールが渡るエリアを絞りやすく、アプローチにかかる時間も短く済む傾向があります。

ラインの高さとラインの幅

ここまではチームやユニットがどんな意図でディアゴナーレをするかについて考えました。

が、そもそも局面で"求められる"ディアゴナーレの配合の具合は、ボールホルダーの前方にどのくらい蓋をできるかによって変わってきます。

1stディフェンダーがボールホルダーにアプローチしきれず、パスコースをほとんど限定できていない場合、簡単に縦に正確なボールを出せる状況なので、ライン上の隙間はできるだけ狭める必要があります。

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よりラインを広く、また角度を浅く保ち、多くの可能性に少ない人数で対処できるようにするための前提として、ボールホルダーへのアプローチは欠かせません。

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参考…
https://www.youtube.com/watch?v=dPJ8KVL-vDw

オープンか否か

それでは、どのような状況ならアプローチできていると言えるか。

チーム全体のイメージ共有は不可欠です。前線の後方確認も大切ですが、より広く視野を確保できている背後の選手が声で前線の目になる必要もあるでしょう。

その上で、個人的にはリターンパスを簡単に出させないポジショニングを行えるかが重要だと考えます。

受け手が前進しそうな姿勢であれば、二度追いで一気にボールホルダーを囲みます。

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バックパスを出しそうな体勢であればそのままユニットを前進させ圧力を強めます。(ここでも再度「アプローチできているかどうか」の判断を行うことになります)

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逆に、アプローチしているつもりでも距離が遠かったり、近くても足運びが悪ければバックステップで簡単に逃げられてしまいます。

また、前項で書いたように、ボールが通る可能性のあるエリアを限定できていない時、両脇の選手もラインの横幅を広く保って前進することができません。

横パスが出されたのを確認してから寄せてもアプローチしきれない可能性は低くないでしょう。

このように、アプローチに行ってもその後のリターンパスの可能性に対して準備できない状態を、“オープン”というのではないでしょうか。

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このような状況では最低限、見えている後方の選手は無理にいかず、まずは背後と中央の密度を高めてより危険なエリアにボールが通る可能性に対して準備をして仕切り直すのが先決ですが、ポジショニングや体勢を修正している間にその動きを利用される可能性があります。

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ラインの幅とチーム戦略

さて、“ディアゴナーレにも複数の解釈がある”という話から、オープンとは何かまで考えてきました。

このような前提を踏まえた上で、どのように対応するか、判断はあくまでチームとして何をよしとするか、つまり戦略に基づいたものになります。

実際の効率に関わらず、チームにとっての正解を再現するための基準を選手達に感覚として馴染ませるのがトレーニングの役割の一つです。

正解は、所属する選手たちの特徴や、相手チームとの兼ね合いによって変わります。

例えば、選手たちが中央にパスを出されたくないと感じやすいチームは、ボールにアプローチに行けたはずの状況でも「埋めるディアゴナーレ」の色が強くなります。

また、クロス対応が得意な場合、サイドで相手が自由にするのは許容するというのも手でしょう。

逆に出来るだけサイドで好きにされたくない場合は、「ラインをできるだけ広く保つ」あるいは「片方のサイドに閉じ込める」、もしくはその両方で相手のビルドアップに圧力をかけていく必要があります。

前者については、前述のとおりボールホルダーをフリーにさせない、オープンな状況を作らない必要があります。

後者についてはカットインの回で。ありがとうございました。


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