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詩)不規則な音に対する皮肉っぽい繰り言

電車の窓が開けられているせいで不規則な「ただただビュー」という打撃音がする その中で 坂本龍一のシェルタリング・スカイを聴いている 僕の鈍感な耳 打撃音の激しさが心地よい まるで無反省な状態 人のなにを言っているかはわからない会話が音として聞こえ この車両全体が打撃音に従っているように思える 文字通り奇妙な光景 踊らされているような

もう一つの考えが頭に浮かぶ 胎児は母親の体内でおそろしく規則的な音を聴き続ける 聴く以外の選択肢はない 生命の絆は強制的に規則的な音を聴かせ続ける
世界がもし おそろしく危機的な時 永遠に途切れることのない(そう見えるだけかもしれないが)安定した音に浸ろうとする これは本能的な防衛だろう 

戦争から聞こえてくる抑圧と悲鳴 優しければ優しいほど聞きたくはない 戦争はいつか終わるかもしれない そしてまた新しい戦争が始まる 人間は楽天家になれなくなる 
攻撃的な音 抑圧する音と優しく規的な音 どちらかが人間の在り方とは言え無いだろう 弱い部分があるから人は成り立つ 

一度も会ったことが無い詩人のことを あの人はこういう人らしいですよという声だけで ああ ある種のああいう人なのかと思う 言葉ではなくあの人はという誰も傷つけ無いように張られた防衛線 誰も踏み込まず 誰も怒らず 誰もが知らんふりをし そうして誰も会ったことが無い詩人の評価は決まっていく さてこれは?

電車の音が不規則に響く その心地よい響きへの一種の皮肉めいた繰り言でしかなく

2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します