20年熟成された瘡蓋を剥がされ丁寧に塩をすりこまれた者のFF7リバース感想・考察


20年ものの瘡蓋を剥がされた呻きと慟哭

 「ファイナルファンタジー7 リバース」クリアしました。
まずこれをプレイする前の私の話をすると、リメイク一作目で繰り広げられた新設定や新展開について、正直なところプレイした当時は拒否感がありました。
特に原作を越えられなかった運命、みたいな語り口で語るのが許せない!彼らはできる限りのことを必死にやったんだ!と。
原作で繰り広げられる伏線と、積み上げた伏線を回収すると共に主人公として帰ってくるクラウド……というカタルシス効果爆上げの展開が大好きで、原作の展開を変えられることに対する不安もありました。
しかし、そこまで運命とその打破についての話をするなら、エアリスの未来について何か考えがあるのですか?それを見せてくれますか?という気持ちと一緒に少し距離を取りつつ二作目を待っていました。
その結果をご覧ください。


誰か助けて

まさかこんな刺され方を令和の今されるとは思わなかった。

助けてくれ……助けて……しか呻けない身体にされてる中これを書いてる。

 エアリス、昔から「星と命を巡る物語のヒロイン」「途中で命を落とす悲劇のヒロイン」としての側面を強調されがちで、且つACなどのコンピレーション作品が台頭してからは原作後の時間軸では作中で死亡していることもあり、触れてはいけない聖域、みたいな扱いもされてきた立ち位置のキャラクターなんですよね。

 なので、前作リメイクも今回でも、エアリスの個人的な望みや背負わされた役割への不安、過去の悲しみや怒り、一人の人間としての未来への期待や望みといった感情を描かれたことでぐっとエアリスという人物の解像度が上がったな、と嬉しい点はたくさんあったんですよ。

全部この悲劇のための助走かよ………

いやホント前作で「運命は変えられる!」みたいなストーリー展開しておいて「エアリスが生きる世界は剪定される運命だしその剪定される運命の世界をクラウドは現実逃避でもって見つめている」ってそんなつらい展開の前振りにする!!?!うそでしょ!!!?!?

「リメイク、世界観設定追加したりストーリー変えたりしてやだな……自分の思い入れのある原作をリアリティレベルの調整以外で変に魔改造しないでほしいな……」

「でも原作のストーリーも結構粗削りなところはあったし、そのままというわけにはいかないしな」

「原作のストーリーを間違った運命、みたいな言説で否定されるのは嫌だけど、でもリメイクでくらいエアリスの生存に夢見たいしな……ちょっと期待しながら展開を見守るか……」

と、徐々に受け入れていっていたんですよ。

その結果がこれですよ

誰か助けて


チャプター14の終わりゆく世界でのデート

 FF7の世界はマルチバースになっているという世界設定が追加された今作。
 チャプター14でデートをしたエアリスは、恐らくセトラの力で次元を渡る、ライフストリーム内にいて肉体をもう持たないエアリスなんでしょうね。
今作中でずっと描かれていたザックスが生きている世界線、とは違う世界線ではあるが、恐らくそちらと似た経緯で一緒の部屋で寝かされているエアリスとクラウド。終わりゆく世界の二人の肉体を借りてR世界線のクラウドとライフストリームにいるエアリスが束の間のデートをする。

「無数にあると思える選択肢はすべて勘違いで、決められた運命しか選び取れない」

とあざ笑うかのように、デートの中でクラウド(プレイヤー)は様々な選択をする機会を得ますが、結局得られるもの、得られないものの結果は変わらない。

デートの中で、クラウドは何度も「何か変だぞ?」とエアリスの様子を訝しむ。
泣きたい気持ちを隠すようにあえてはしゃいでみせるエアリスの様子がいつもと違うと察してはいるものの、エアリスの真意を読み解けないクラウド。

「思い出、少ないからね」「これから作ればいい」

もう、すでに別離の運命を知っているエアリスと、知らないクラウドのかみ合わない会話と「その運命を変えられると思うな」と言わんばかりのデートの展開が本っっ当にしんどい。


「消えろ 罪悪感」

 このセリフの真意は何か、いろんなところで考察されていますが、直前に「恋愛としての好きか否か」みたいな話をしていたためにまあ~~色々な解釈がされているみたいですね。
私も最初は、エアリスが自分に言い聞かせるような声音だったので
「エアリスが抱いている罪悪感……?R世界線のエアリスに遠慮しているのかそれとも……?」などと誤解していたのですが、英語版の翻訳は
「何があっても自分を責めないで」であるとのことだったので、ここでいう罪悪感はエアリスのものじゃなくてクラウドのものという意図らしいですね。(わかりにくっ)

そのうえで、
「なぜ自分ではなくクラウドの感情の話なのに、クラウドに伝えるためでない、意図がわかりにくいおまじないのようなつぶやきだったのか」
を、自分が感じたまま自分の考えを想像の上で書き連ねてみようかなと。

「わたしは クラウドが好き」
「でも 好きにも 色々あるよね」
「この好きは どの好きなんだろう」

そう言ってクラウドを抱きしめに行ったエアリス、その時に吐かれた言葉。このエアリスはクラウドとの別離をすでに経験したエアリス。
この時のエアリスは
「罪悪感に帰着してしまった自分とクラウドの関係」
を憂えていたのでは?

もしかしたらもっと他の可能性があったかもしれないこれからの二人の関係。クラウドからエアリスへの感情が「罪悪感」に集結してしまうのが嫌で、あの言葉が出たのではないだろうか。

 前作の「好きにならないで」と同じく、別離に終わる自分たちの関係を知っている(経験している)から、抱きしめに行った当初はクラウドを精神的に突き放そうとして「この好きはどの好きだろう」と試すような物言いをしたのかもしれない。
もしくは、純粋に自分がクラウドに抱いている感情をいま一度確かめたかったのかもしれない。

 そしてその結果、エアリスがクラウドと自分の間にある感情を考えたうえで、改めて「罪悪感」という言葉で二人の関係を語りたくなかった。邪魔だと感じた。だからあの言葉が出た。
「私のことで罪悪感を抱えないで、苦しまないで」というクラウドのための言葉ではなく、
「あなたから私への感情が罪悪感に帰結してしまうのが嫌だなあ」と感じた結果の、わがままに似た祈りの言葉だったのではなかろうか。

ここまで真剣にエアリスの心情考えてきましたが、
これを書くまでに5回ガチ泣きしました

この文章はアラサーの本気の嗚咽で出来ています。

<落ち着いたころの追記>
 FF7ACの前日譚である「On the Way to a Smile」という小説があるのですが、チャプター14冒頭で登場するエアリスが、この小説にて描写されたエアリスのその後の姿であると仮定し、そのうえでクラウドに会いに来たと考えると、もう少しだけ違う心情を窺えるとも思いました。
小説中にて、地上に姿を現そうと計画を立てているセフィロスの行動を受け、同じように地上に姿を現す方法が自分にもあるか、と考えるエアリスについてこのような描写があります。

女はクラウドに危機を伝える方法を考えていた。
考えているうちに、自分がクラウドに伝えることができなかった思いの数々が鮮明に蘇った。
女には、クラウドに伝えたいことがたくさんあった。
しかし、何をどう伝えるべきかわからなかった。
悩むのは久しぶりだった。
結局、女は、まずクラウドに会ってからどうするか考えようと思った。

”On the Way to a Smile/野島一成”

同小説内で、エアリスはクラウドのことを友人であり、恋人であり、大切なものの象徴、守るべき存在と思っているとも描写されています。
本当は、エアリスはクラウドに生前色々な想いを伝えたかったと思っており、実際に再会を果たせたのがあの終わりゆく世界でのデートの一幕だったのでしょうね。

そして、クラウドに会った彼女は、教会で何をどう伝えるか考えたんだと思います。
自分がどれだけクラウドに会いたかったか、彼のことをどれだけ想っていたか、愛していたか。
しかし、それらの言葉を伝えるにあたり、やはりクラウドの「罪悪感」が邪魔になったのかなと思います。

エアリスがクラウドを想う言葉を伝えれば伝えるほど、クラウドはさらに罪悪感を募らせることになると考えたのではないでしょうか。

本当はもっと色んなことを伝えたかった。
ただ、自分の思いの丈を伝えるためには、クラウドの罪悪感が邪魔だった。
それゆえの「消えろ 罪悪感」だったのかな、と。

前に書いた考えと大きく変わりはありませんが、「On the Way to a Smile」でのエアリスの描写を下地に考えると、少し彼女の状況が見えてくるような気がしたので、追記しました。
考えれば考えるほど色々な想像ができる言葉です。


セフィロスvsエアリス

 原作とACまでの2年間を描いた小説の幕間でも描かれていたセフィロスvsエアリスの構図がRシリーズでは裏テーマとなっていることが前作から匂わされていましたが、今回はついにライフストリームにいるであろうエアリスがクラウドと並び立ってセフィロスと直接対決。

セフィロスの「お前を侮っていた」とエアリスを敵として意識した言葉。二人はバチバチ。
なんというか、セフィロスが暗躍を続ける以上エアリスはセトラとして、星に生きるクラウド達のためセフィロスと戦い続けなければならないんだなと今回の対決を見てふと思ったんですよね。

スマブラに参戦した時も「いい加減クラウドを解放してやれよ!」とネット上で散々言われていたセフィロスですが
私は今回「お前が暗躍を止めないと、エアリスが普通の女の子に戻れないんだ!!」と「さよなら、ドラえもん」ののび太ばりにセフィロスに訴えたくなりました。頼むから二人を解放してくれ。

あとエアリスがセフィロスに問うた、
「ひとりで 寂しくないの?」という言葉について話にあがっているのをしばしば見かけますが、個人的にはセフィロスの中にある孤独を指摘した言葉というわけではないと思っています。
むしろ、今ライフストリームの中で同じような境遇に置かれているもの同士、エアリスはひとりで寂しくて仕方ないのにあなたはどうしてそんな平気でいられるのか、という疑問を投げかけているのではないかな、と。
(私は寂しくて仕方ないのに、あなたは平気で自分ひとりのために世界を滅ぼすことだってできてしまう。どうしてそんなことをやらかしてしまえるのか、という抗議の気持ち?)

私はセフィロスに、人間であることに耐えられなかった弱い人間である側面と、悪のカリスマである側面を期待しているので、今更孤独に苦しんでいて……とか人間らしいことを言ってほしくない、自らの意志でもって怪物と成り果てたのだから最後まで笑う外道でいてくれという望みがある故の解釈ではあります。(HELLSINGかジョジョの話かな?)


エンディングについて

「エアリス、起きてくれ」

その瞬間分岐した世界である虹色のオーラの演出と共にエアリスは目覚める。
そのあとも、エアリスはクラウドの隣にずっといる。

一瞬、ホントに一瞬、エアリスが生きる世界線に分岐できたかな?と思いました。
クラウドの表情、声音は至って冷静。でも仲間はずっと意気消沈している。このエアリス、クラウドにしか見えてない……

ではここからの地獄ポイント書き連ねていきますね!!

・このエアリスはクラウドにしか見えていない。

・ただ、ナナキが気配を察知しているため完全なクラウドの幻覚というわけではない。

・クラウドはエアリスが生きる世界線が見えていて、世界線を越えてエアリスと会話している。(世界線を越えるエアリスやセフィロスと関わったり、次元の狭間に飛んだ影響?)

・クラウドには終わりに向かう世界の空に表れる光が見えている。つまり、エアリスが生きる世界線は遠からず他の世界線に統合され消滅する未来にある。(セフィロスが言っていた「負の感情が強い世界が強い」という理論を信じるならば、エアリスが死亡する世界線が選び取られる。選択肢が存在しているように見えて選ばされている……)

はい。

なのにクラウドは穏やかにエアリスに笑いかけているんですよね。
「エアリスが生きている世界」が遠からず消滅するということも、今自分が生きている場所が「エアリスが死んだ世界」であるという現実も認識できていない。
彼だけ「エアリスが生きている世界線」だけがこの世に存在していて、自分もそこに生きていると思い込んでいる。
「セフィロスの凶刃を止めることが出来た。しかし白マテリアの祈りはまだ届いていないためエアリスとはここでお別れだ。俺たちは旅を続けるがすべてが終わったらまた会える」というストーリーの中に生きている。

というより、恐らく実際にどういうわけか別世界線のエアリスと会話はできているんでしょう。
ただ、彼が今生きている現実であるはずの「エアリスが死んだ世界線」が見えていない。完全になかったことになっている。周りの仲間とは違う世界に生きている。エアリスがいる世界線にしかピントが合っていない。
仲間が意気消沈する中で当然のようにエアリスと再会の方法について会話している。

アルティマニア情報曰く、クラウドは「エアリスを失ったことを受け入れられない状態」とのことで、マルチバース世界の希望の光というわけでなく、やはりそういうことだったのかと………
前作プレイ時、自分がソルジャーでない事実やザックスの話など都合の悪い事実が出てくるたびに頭痛に呻くクラウドを見て、
「都合の悪いワードが出てきたらクラウドの頭痛い痛いで耳ふさぐことしかできねえのかよジェノバさんよぉ!!」と言いながらプレイしていましたが、
ジェノバの認識改ざん能力ってこういうことなんだ……とめちゃくちゃゾッとしました。
こういう見せつけ方してほしかったわけじゃないんです…………助けて………

エアリスと幸せそうに、再会の約束を当たり前のようにした後に
破滅の象徴である空を見るなと仲間に言うクラウド。
思わず「あなた今正気じゃないのよ……」とうめき声が漏れる。助けて。

「あ、黒マテリアだ」とでもいうようなノリでバスターソードに黒マテリアをしまっていたり、もう今のクラウドは正気ではないんですよね……
エアリスはそんなクラウドの危うい状態を知っていて、あえて優しい世界にいさせてあげたんだろうな………

エアリスはおそらく、自分がいる世界が長くは続かないことを知っているんでしょうね。
エアリスのイメージ画に被せたアングルで、永遠の別離を覚悟した「さよなら」。

飛空艇を見上げるエアリスのイメージ画が
「『いつか飛空艇に乗せてね』とクラウドに約束した、未来を楽しみにする女性としてのエアリス。叶うことのなかった、彼女の未来の象徴」
としてのメッセージ性をはらんでいるのであれば今回は
「永遠の別離を迎えたエアリスが、仲間を見送り一人取り残される」
というシーンになってるんですよ。

しんどい…………

クラウドは次回作で原作同様彼の現実を取り戻すんでしょう。
「俺は俺の現実を生きる」と決めたその時、彼は初めてエアリスの喪失にむせび泣くことになるのだろうか。

希望の話もしておこう

 正直、期待はしすぎると身体に毒になるので(今作で嫌というほど実感した)、希望はあるがまあ期待はしないでおこう……くらいの温度感で今ある希望を書いておこうと思います。

・「再会」の花言葉
 エアリスの象徴でもある花。エアリスとの再会に導いてくれるか。

・ザックスの「再会の時は来る」
 ザックスとクラウドの再会か、誰との再会かはわかりませんが、ザックスとクラウド、エアリスの再会はいつかまたあるのかな、
 という予感がする言葉。頼むよ……

正直期待しない範囲でも、クラウドとエアリスは次作で再会はするんじゃないかなと思ってるんですよね。
ただ、今回のような寂しい笑顔でクラウドを見送る別れとセットの再会になるとまたエアリスを置いていかなければいけないのか……とそれが嫌だなと思ってるんです。
エアリスが心からの笑顔を見せてくれる結末がどうにか訪れてくれないものかと祈るばかり……

最後に気分を変えて今残っている謎の話

【白マテリア白いままだが!!?】

  どうするんでしょうね………

  • 今シリーズではホーリー以外の解決方法を図る。

  • 別世界線のエアリスが祈りを完遂させてくれる。

 このいずれかになるのかなとは思いますが、ホーリー以外の解決方法となるとクラウドがエアリスからもらった透明マテリアがカギでしょうか。

【透明なマテリア】
 ギ族が話した黒マテリア誕生秘話では、無垢なるマテリアにギ族の祈りを込めたところ黒マテリアが出来た、とのこと。
 なのであの透明マテリアも今の持ち主であるクラウドの祈りがいつか宿るのでしょうか。
 重要なカギになることは明白ですが、彼の祈りと考えるとパッと思い浮かぶのはエアリスとの再会でしょうか。
 次元跳躍能力とか手に入れてくれないかな(願望)。
 エアリスがくれたものだからここにセフィロスの思惑はないものと思いたい……

【黒マテリアどうして最後クラウドが持っていたんだ問題】
 これは一応考えがあります。
 原作では、5年前クラウドにやられた傷を癒すためセフィロス本体は最北端で眠っています。
 そのため、セフィロスは共に眠っているジェノバの頭部を利用し、
 頭部を中心に再結合を試みようとするジェノバ因子の「リユニオン」という本能を利用することで、黒マントやジェノバ(そしてクラウド)の手によってセフィロス本体に黒マテリアを届けさせようとしていました。

 原作では、竜巻の迷宮で戦う「ジェノバ・DEATH」を倒して一時的にクラウド一行が黒マテリアを取り戻します。
 (「俺はいつおかしくなるかわからないから他の仲間が持っててくれ」と自己申告して黒マテリアを託す原作クラウド、リバースクラウドと比べるとめちゃくちゃ正気だったな今思うと……)
 それが今回のリバースでは、忘らるる都で戦った「ジェノバLife」が古代種の神殿でクラウドから黒マテリアを受け取ったジェノバだったんだと思います。
 ジェノバを倒した際、「ならお前が運べ」と言わんばかりにクラウドに押し付けたんではないでしょうか。

【白マテリアの祈りが間に合わなかった理由】
 これははっきりしたことはわかりませんが、
 クラウドが止めに入ったことが関係していたら地獄だなと思います。
 もしかするとそのためにセフィロスはクラウドをそそのかしたのか?
 と思うくらい。

また今度はエアリス以外のキャラについても感想を書きたいと思います。
言いたいことたくさんある………ティファがこれから負うであろう苦労とか……

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