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日銀マイナス金利政策解除後の金融環境

 日本銀行の金融政策決定会合により、17年ぶりにマイナス金利政策が解除となった。金融機関としては、実際の取引を考え直す必要に迫られることもあるため、顧客への対峙に備えて、政策決定の経緯から未来の環境を見据えておきたい。
 本稿では、マイナス金利解除の経緯から当面の金融取引への影響について解説した。

1 マイナス金利政策解除

⑴ 政策金利を0.1%ポイント引き上げ

 3月19日に日本銀行はマイナス金利政策を解除し、17年ぶりに利上げを行った。この決断自体は歓迎したいが、もっと早くに実施するべきだった。世界的な物価高騰が始まった数年前の時点で政策修正に踏み出していれば、今ほどには円安は進行せず、また個人の物価高懸念は高まらなかったのではないか。
 今回の政策の修正点は、主に3点だ。第1がマイナス金利政策の解除である。階層型の日銀当座預金制度を廃止し、2016年にマイナス金利政策を導入する前の従来型の当座預金(所要準備と超過準備)に戻したうえで、超過準備への付利金利を+0.1%とした。従来の政策金利(政策金利残高への付利金利)の-0.1%を0.2%ポイント引上げた形だ。
 ただし、政策金利と位置付ける金利は、従来の政策金利残高への付利金利から、2016年にマイナス金利政策が導入する前の無担保コールレート翌日物の誘導目標へと戻し、その水準を0~+0.1%程度とした。これで見れば、今回の利上げ幅は0.1%程度と小幅にとどまる。

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