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金利上昇期のリテール戦略

割引あり

 日本銀行のマイナス金利政策解除により、日本の経済はデフレからインフレへと転換する。インフレに換わると共に、顧客への金融商品の提案は、どのように変化するのか。今後のインフレ状況下の市場動向、金融機関担当者が備えておきたい知識として、金利上昇がもたらす今後の株式・為替相場への影響と、これらを踏まえたリテール金融商品の提案戦略を解説した。
                                             (株式会社fpANSWER 代表取締役 大泉 稔)


1 マイナス金利政策解除によって起きた変化とは

⑴マイナス金利導入から解除まで

 日本銀行によるマイナス金利政策解除の「号砲」と共に、一部の金融機関は預金の利率を20倍の0.02%にする旨の発表。それに伴い預金額が大幅増額とも報道された。日銀が決断した理由として「物価(品物やサービスの価格)が上昇していることと、賃金の上昇が見込まれる」ことを挙げてる。インフレとは、持続的に物価と賃金が上昇し続けることだ。 
 2016年、黒田前総裁は「物価が持続的に2%程度、上昇することが望ましい」とマイナス金利の導入を宣した。金利の上下により、物価をコントロールするのも日銀の役割の一つだが、前総裁の時には物価は微動だにしなかった。

⑵微動だにしなかった物価が上昇している理由

 物価上昇の理由に挙げられるのが、世界中でコロナ禍明けに伴う需要拡大と、ロシアや中東の情勢であろう。そして、需要拡大による価格の上昇を食い止めるため、アメリカ等各国の中央銀行が金利を急上昇させてきた。
 しかし、日本は最近までマイナス金利と金融緩和を続けた。その結果、特にアメリカと日本の間で金利差が広がり、低金利の日本円から高金利のアリカドルに換える動きが高まり、円安ドル高が進行した。日銀がマイナス金利を解除し金利を上げようとしたのは、この金利差を縮める目的もあったであろう。だが、マイナス金利政策解除後も円安ドル高は進行している。日米の金利差が縮まらないことが原因であろう。
 ただ、筆者は、円安ドル高が進んだ理由は、アメリカと日本の金利差だけではないと推測する。円安ドル高が進行すれば、一般的には物価は上がる傾向にある。なぜなら、私たちの暮らしは、食料とエネルギーをとってもそれぞれ食料62%、エネルギー88.7%と海外への依存度が高い。主に、海外への支払いは円ではなくドル等の外貨だ。つまり、金利差だけが理由とはならない。日銀が号砲を打った背景は、金利差だけでなく、近時の円安ドル高等を背景とした物価上昇に加え今季の春闘等で物価上昇を上回る賃上げの実現が見込まれたからといえよう。 

2 インフレ状況下での顧客提案とは

⑴そもそもインフレとは

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