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災害による担保不動産の滅失・毀損への対応実務

 地震等が続く昨今では、自然災害に基づく人材な被害により建物等の損壊が生じ、担保物件の滅失や既存が懸念される。そこで、甚大な被害による担保物件の滅失・毀損による法的影響、金融機関における対応を、東日本大震災等の事例も踏まえ解説した。

1 災害発生による問題の所在

 2024年1月1日に発生した能登半島地震では、7万7703棟にも上る住家被害が発生した。そのうち「全壊」認定だけでも7737棟に上り、「半壊」認定も1万2681棟を数える(注1)。特に石川県内の被害は著しく、珠洲市及び輪島市では、被害状況調査対象建物のうち3割超が「全壊」認定となったという報道もされている(注2)。
 大規模自然災害は地域金融機関の業務にも当然、甚大な影響を及ぼす。それらのうち、あまり言及されることがないが無視できないものとして「担保不動産の滅失・毀損」という問題がある。
 すなわち、大規模自然災害によって多数の不動産(主に建物)が滅失・毀損した場合、多数の「担保割れ」案件が一挙に発生し、融資債権の回収に不安を生じることはもちろん(災害被害により債務者の弁済能力そのものが低下している)、場合によっては金融機関の側でも多額の貸倒引当金を計上する必要が生じ、自身の財務状態にも悪影響が及ぶ可能性がある。
 金融機関には悪夢のような事態だが、近年頻発する大地震や台風・豪雨による水害の実態を見れば、悪夢を悪夢とばかり言ってもいられない時代になったことも確かである(注3)。
 そこで本稿では、、主として地震・水害等の大規模自然災害が発生した場合を想定し、融資先の個人・法人から担保として提供された不動産多数に滅失・毀損の被害を受けた地域金融機関が採り得る法務上・実務上の措置について、弁護士の視点からの解説を試みる。

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