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ドヌーヴと私

昔、子供の頃、母に『世界一の美人は誰?』って聞いたら ちょっと考えて『カトリーヌ ドヌーヴ』と答えが返ってきました。

カトリーヌ ドヌーヴ?誰だそれ?松坂慶子あたりが答えかと思っていたのに予想が外れた私は その名前が気になって仕方ありませんでした。

世界一の美人はカトリーヌ ドヌーヴ!(母調べ)

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突然中学生の頭に刻まれたカトリーヌ ドヌーヴ、どんな人なんだろうと 考えていたら、父(映画好き)が名画座にドヌーヴの映画が来てるから、連れて行ってやると言ってきました。

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初めてのカトリーヌ ドヌーヴ映画は モンパリ(1973)。相手役のマルチェロ マストロヤンニが妊娠するという70年代らしいナンセンスなコメディもの。子供にはその感覚がよくわからなかったのと、ドヌーヴは綺麗は綺麗でしたが、ちょっと私の好みではないなあ、という印象で終わりました。しかし、高校2年の冬、同じ名画座で、シェルブールの雨傘を見た時に、心臓を撃ち抜かれました。

お母さん、あなたの言う通りでした。


綺麗な上に可愛い、そして動作が美しい、この動作の美しさこそがエレガントとやシックというもので、とても重要なのだと気づくまでには、もう少し時間がかかります。

父の影響もあって、私は映画好きで映画館にもよく行っていましたし、ビデオやDVDもかなり見ていました。シェルブール〜からファンになった私はドヌーヴも女優年鑑を見ながら、出演作を順番に見ていきました。

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私のドヌーヴ作品ベスト3は反撥、ロシュフォールの恋人たち、昼顔です。

成人し、海外に行くようになってからは、世界中の映画を観ることが私の趣味となりました。特に、パリはさすが映画の国!だけあってAvant-Premier アヴァン プレミエール(先行ロードショー)に世界中から監督や出演者が来ます。パリに入るとまず、そのチケットを手に入れるというのが恒例となり、座席も早いもん順なので、なるべく早く会場入りして、前列に座ることに命かける勢いでした。

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2017年の1月11日、私は女優のファニー アルダンが監督した Le divan de Stalineのアヴァン プレミエールのチケットを予約しました。ファニーアルダンが舞台挨拶に来る予定だったからです!!出演はジェラール ドパルデューとエマニエル セニエ。その二人も来るかもしれないという噂でした。

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会場が暗くて、綺麗に撮れませんでしたが、5メートルの距離にファニー アルダンを見れました。華があって綺麗な人。背も高く、背筋がスッと伸びていて溌剌としていました。

主演のジェラール ドパルデューも来場して大満足、さあ、帰ろう!としたら、会場が混みすぎていて、観客の列が進みません。どうやら出口付近で人が立ち止まっていて渋滞を起こしていたようでした。

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それでも列がそろそろと動き出し、私も前の人の後ろを隙間を空けずに進んでいくと、出口あたりに何か光るものを感じました。会場は薄暗く、今となって考えてみると その光るものが見えたのか、感じたのかよくわかりませんが、何かを感じました。

出口までたどり着くと、そこに

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カトリーヌ  ドヌーヴがいました。


ものすごいオーラでした。あんなにはっきりしたオーラを見たのは初めてでした(多分光るものの正体)普通に立っていただけですが、あまりの凄さ(綺麗とか怖いとかでもない、ただただ近寄れない)に、誰も握手も求められず、写メも撮れず、声さえかけれない状態でした。観客は少し歩みが遅くなるだけで、迷惑をかけないように(彼女に!)速やかに出口から出て行きました。

しかし会場を出ると我に返り、こんなチャンスを逃していいものか、と言う想いが突如湧き上がり、ドヌーヴが出てくるのを 出待ちする私。

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映画館のホールでタバコを吸うドヌーヴ(もちろん禁止場所)連れの男性と話す低い声、ロシアン セーヴルの毛皮、例えようのないいい香り、ああ、目の前にいるのはあのドヌーヴなんだ。

振り返ると私と同じ気持ちの集団が、ぽかんとした表情で、ゾロゾロついて来ていました。←集団ストーカー。

ドヌーヴは友人であるファニー アルダンが監督した作品上映だったため、会場の後ろの席で鑑賞していたらしいです。

催眠術にかけられたように後をつけたものの、彼女が外に出る出口に向かっていることが予想された瞬間、私にスイッチが入りました、

どうしても写メが欲しい。

そう思った時には、前を行く彼女を走って追いかけていました。

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これが精一杯。友人の作品を見に来ていたプライベートの彼女を携帯で撮るなんて申し訳ない気持ちになりましたが、どうしても会ったという証が欲しかったのです。

ああ、私はカトリーヌ ドヌーヴに会った、一瞬だけだけれども彼女の視界に私は入った!わずか1メートルの距離に近づいた!

私にこんな日が来るなんて!

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もう宝くじはこの先当たるまい、私は運を使い果たしたんだ、私にとって、2017年1月11日はカトリーヌ ドヌーヴ記念日!

近年、ネットで検索して出てくるドヌーヴはかなりふっくらとしていて、それなりに歳も感じさせます。ですが、私が見たあのタバコを持つ流れるような身の動き、ゆっくりとした視線の動かし方、堂々とした振る舞い、自分の人生を美人女優という看板を掲げ続けて来た自信とエレガントな佇まい、単なる顔の綺麗な美人という枠を遥かに超えていました。

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ドヌーヴを例に出して結論づけるのは、あまりにおこがましいのですが、年齢は関係ないですね、美しいということは。

ドヌーヴと私、何十年経っても、美しさとは、を教えてもらう関係です。

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