無題001
これはTweetでは書ききれない「心の応援」メッセージを文章にしたものです。
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無題001
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車窓から外を見ると夕立はあがったようだ。
ホームに降りると急ぎ足で階段をあがり、
線路をまたぐ連絡通路から東の方角を見た。
まだ青さの残る夕方の空の下、
いま乗ってきた電車が小さくなっていく。
去年の今頃、同じ場所から見た虹は今日も見えない。
夕立のあと、数分で消えた虹は、今も心に残っている。
空に向かって伸びた虹は、
長さも短く、幅も狭く、色も淡く薄かった。
写真集に載るような鮮やかな大きな虹ではない。
それでも弱々しくとも、自分の前に現れてくれた。
スマホで写真を撮れば良かったと後悔してる。
お守り代わりになってくれたかもしれない。
子供たちの騒ぐ声で、現実に引き戻された。
「お前、生きてる価値ねえよ!」
子供同士が大声を出して笑い合いながら、背後を通り過ぎた。
子供たちは、冗談でも強い言葉を使う。
なんでそんな言葉が出たのだろうか?
他愛もないことがきっかけで「生きてる価値がない」なんて、
多分、微塵も思ってないのだろう。
それは分かる。それでも胸がチクッとした。
もう一度、東の方角を見て、青さだけが残る空を見た。
空には薄い雲しかなく、
遠くから電車が近づいてくるのが見えた。
今日は良いことがなかった。
たぶん、明日も同じような日だろう。
仕事を思い出し、客を思い出し、同僚を思い出し、
良いことが起きそうな可能性を探して、
すぐに考えるのをやめた。
驚くような幸運がやってくることは、まだ経験したことがない。
簡単に奇跡が起きないことくらい、理解している年齢だ。
それでも、もう一度あの虹は見たい。
日が沈む前に夕立があがり、
早く仕事を切り上げられて、
地元の駅に帰って来られる日があれば、
また見られるかもしれない。
もう一度何かを見たいと思えれば、
また明日を待とうという気持ちになれる。