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『ポバティー・サファリ』とある東大卒の帰省

ポバティー・サファリ』を読み終えた。

わたしは自分が所属している会社を愛しているが、時々彼らの「中流階級」ぶりに気圧されることがある。彼らは裕福な有産階級で、善意の自由主義市民で、リバタリアンで個人主義で実力主義で、プチ・ブルだ。我々の会社を含む、インターネット周辺の人たちは、最近、「社会課題に取り組む」という顔をしてSaaSやらAIやらを売り込むのがとても上手だし、本気でそれを信じている高潔で善良な人たちだと思う。が、多くはMARCHから慶応あたりの出身で、裕福な中流家庭出身の、小賢しくて不遜な大学生だった人たちだ。親のクレジットカードで10万円とかするようなカバンを買って学校に通っていた人たちだ。スタートアップっぽい界隈の若者たちが、AI議論の延長でなのか、クールな言葉のように「ベーシック・インカム」とか言っていたりするが、わたしには借り物に聞こえてならない。(ベーシック・インカム議論はまた別でちゃんと勉強するので偉そうなことは言えない段階だが)私立大学に行かせてもらえるような家庭の人たちに、それが必要な人たちのことが理解できるかどうか、わからない。

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ダレン・マクガーウェイの言う「貧困」サファリ。中間層やエスタブリッシュメントたちが、貧困層の生活苦や悲しい物語を聞きたがる一方で、彼ら自身の政治に対する意見を聞きたがらない態度。貧困層の生活を、サファリパークのように、厚い格子で守られたバスの中から見学して、涙を流して、去っていく態度。

このタイトルは、芸術を愛し、生産性の高い産業で働き、かつ高潔な意識で政治参加もして、自分たちをリベラルで思いやりに満ちた人間だと考えてきた中間層に気まずい思いをさせる。その態度に隠された無知や思い上がりが、BrexitでLeaveに投票した人たちの怒りを呼んだという一つの文脈を突きつける。

著者、ダレン・マクガーウェイはグラスゴーの出身のラッパー。代々アルコールとドラッグと暴力にまみれた家庭で育ち、早くで母を亡くし、自身もアルコール・ドラッグ・ジャンクフードの依存症とホームレスを経験している。

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33歳、新卒入社11年目にして、終わらない「自分探し」をする皮肉屋の冷笑家です。自嘲気味ながらも、墓場に自分を探しに行く、そのグダグダな軌…

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