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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 099:ウッドストック・フェスティヴァル出演者特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第99回(2023年8月18日(金)20時~
(再放送:8月20日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週はウッドストック・フェスティヴァル出演者特集です。せっかくですから7インチ盤でお届けします。54年前の今週、1969年の8月15日から3日間、実際には18日の朝まで開催された歴史的と申しましょうか、伝説のロック・イベント、ウッドストック・フェスティヴァルですが、カウンター・カルチャーとしてのロックの一つの頂点と言われます。チケットは18万数千枚売れたということですが、おそらく20万人はきてしまうだろうと予測していたところ、なんと40万人もきてしまいました。それでも意外なほど混乱も少なく、平和な状況で終わったということですが、それでも大渋滞と大雨、それから食糧不足という不測の事態はあったようです。

今更に、カウンター・カルチャーだのと言われても若い人には「なんのこっちゃ?」といったところでしょうが、この番組のリスナーさんはそれなりの年齢層の方が多いようですから、共通認識としてしまいますが、結局は時代背景も含め、社会現象的に捉えないと、ただの大きなフェスがありまして、ということで終わってしまいます。ただ歴史的にみても、愛と平和を希求するヒッピー・ムーヴメントというものがあり、文学の世界を中心とした50年代、60年代を通してのビートニクという伝統的な価値観に対する拒絶反応的なブームがあり、いろいろなものが転換期を迎えておりました。ヴェトナム戦争真っ最中、要人暗殺も続いて世情は不安定になっているところでした。要は、前年1968年にキング牧師の暗殺とか、ロバート・ケネディ元司法長官の暗殺とか、流血の民主党大会とか、いろいろありました。一方でちょうど一カ月前7月16日にはアポロ11号が月面着陸に成功し、夢と希望に満ちた宇宙開発が現実のものとして目の前に提示された瞬間だったわけです。

さらにその一方で、8月9日には、シャロン・テート事件という、凄惨な殺人事件もあって、ヒッピー・ムーヴメントにも暗い影を落とし始めたタイミングでした。シャロン・テートは映画監督のロマン・ポランスキーの奥さんですが、女優さんでして、テリー・メルチャーという音楽プロデューサーが住んでいたあとに引っ越してきて、間違って殺されたんです。カルト宗教の指導者チャールズ・マンソンという輩が、テリー・メルチャーを頼みの綱に音楽的にデビューしようとしていたんですけど、その願いが叶わなくて逆恨みされていたんです。逆恨みの人違い、酷い話です。実行犯はマンソンの信奉者たちです。これで、愛と平和のヒッピー・ムーヴメントも冷や水をぶっかけられたわけです。その事件の一週間後に開催された愛と平和の3日間というわけです。

ここには33組の出演者がおりまして、初日8月15日は金曜日、午後に始まりました。土日に比べフォーキーなアーティストが9組ほど集められております。スタートを切ったのはリッチー・ヘブンズ、続けてインドの聖者の祈祷とかもあり、スイートウォーターやティム・ハーディン、アーロ・ガスリー、ジョーン・バエズなどといった人たちが出演します。ノラ・ジョーンズのお父さんでビートルズの面々も敬愛したラヴィ・シャンカールの演奏は雨で途中中止となってしまいます。

1曲目
「Beautiful People」Melanie (1967)

初日からは、一組聴きました。メラニーですが、1971年に「心の扉をあけよう ブラン・ニュー・キー」が大ヒット、ナンバー・ワンになります。ストーンズ・ナンバーの「ルビー・チューズデイ」のカヴァーも有名な人です。ここでは1967年のデビュー曲で、ウッドストックが開催された69年にも再度シングル・カットされている「ビューティフル・ピープル」をお届けしました。71年に「R.P.M.」という映画のサントラに収録された「悲しみの足音」という曲のB面に収録されたライヴ・テイクです。

2曲目
「Evil Ways」Santana (1969)

2日目、8月16日土曜日ですが、飛び入りのジョン・セバスチャンも含め15組。ザ・クイルからスタートし、カントリー・ジョー・マクドナルド、サンタナ、キャンド・ヒート、マウンテン、グレイトフル・デッド、CCR、ジャニス・ジョプリン、スライ&ザ・ファミリーストーン、ザ・フー、ジェファーソン・エアプレインといったラインナップです。もの凄いです。

特に面白いのがカルロス・サンタナ率いるサンタナです。今ではウッドストックを代表する熱演で聴衆を魅了したということになっておりますが、何はともあれ、このフェスの時点ではまだロクに知名度もない新人です。フェスの2週間後、8月30日にようやくファースト・アルバムがリリースされますからレコード・デヴュー前の新人です。初期のサンタナにはジャーニーの初期のヴォーカル兼キーボードのグレッグ・ローリーもいます。あの大ヒット曲「ブラック・マジック・ウーマン」のヴォーカルです。バンド自体は1966年にカルロス・サンタナやグレッグ・ローリー等を中心に結成されています。ニール・ショーンの方は71年から72年にかけて「サンタナⅢ」録音時にちょっとだけ在籍しておりました。当時17歳の天才少年ギタリストのレコード・デビューだったんです。

カルロス・サンタナは、シスコのフィルモア・ウェストにしょっちゅう潜り込んでいたらしいのですが、オーナーのビル・グラハムにそのたびつまみ出されていたということなんです。前年リリースのあの有名なマイク・ブルームフィールドとアル・クーパーの「フィルモアの奇蹟」に収録されている「ソニー・ボーイ・ウィリアムソン」という曲にはしっかりクレジットされています。そして、今日ここでご紹介するサンタナのファースト・アルバムからシングル・カットされて全米9位まで行くヒットとなった「イーヴル・ウェイズ」は、ビル・グラハムの提案でファーストに収録されることになった曲だと言います。なんだかんだで仲が良かったようです。「イーヴル・ウェイズ」は当時の日本語表記は「エビル・ウエイズ」になっております。

3曲目
「Theme From An Imaginary Western」Mountain (1970)

巨漢ギタリスト、レスリー・ウェスト率いるマウンテンです。この人たちもファースト・アルバム「マウンテン・クライミング!」は1970年3月リリースですから、正式にはレコード・デビュー前です。ただギタリストのレスリー・ウェストのソロ・アルバムのタイトルが「マウンテン」と言いまして、これが出ております。凄いメンツを集めた伝説のフェスのように言われますけど、後々有名になった連中ばかりという気もしないでもないです。ただマウンテンの場合は、加えてベースのフェリックス・パッパラルディがエリック・クラプトンのクリームのプロデュースをしておりますから、少しは注目されていたかもしれません。ここでは「想像されたウェスタンのテーマ」をご紹介しました。これ原題は「Theme from Imaginary Western」ですから「想像上のウェスタンのテーマ」でないとおかしいですね。

4曲目
「Suzie Q」Creedence Clearwater Revival (1968)

CCRです。タイミング的にはバンドの絶頂期です。この人たち、ライヴでは淡々と曲を演奏し、アンコールをやらないということで有名でしたが、それでも最後に長尺曲「スージーQ」の熱演をこれでもかとやってみせて、観客も納得したということなんです。

5曲目
「Kozmic Blues」Janis Joplin (1969)

この辺からがハイライトでしょうか。まずはジャニス・ジョプリン、この日のセットリスト8曲をみますと、エディ・フロイドのカヴァー「レイズ・ユア・ハンド」に始まり、ビー・ジーズのカヴァー「トゥ・ラヴ・サムバディ」をやり、ガーシュウィンの「サマータイム」をやり、終盤にはオーティス・レディングの「アイ・キャント・ターン・ユー・ルーズ」までやります。アンコールは2曲で「ピース・オブ・マイ・ハート」と「ボール・アンド・チェイン」です。フェスでウケるようにと、もの凄く考えられたセットリストなのかなと思います。その中、6曲目に歌われた「コズミック・ブルース」をご紹介しました。

6曲目
「See Me, Feel Me」The Who (1969)

ザ・フーは順番的には、ジャニスの次にスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンが出て、その次だったのですが、もうそれだけでも凄いです。彼らは1969年5月に4枚目のアルバム、大作「トミー」をリリースしていますから、最高のタイミングです。ここでは「トミー」から「シー・ミー、フィール・ミー」をご紹介しました。

7曲目
「Somebody To Love」Jefferson Airplane (1967)

2日目のトリはジェファーソン・エアプレインでした。とはいえ、登場したのは翌朝午前8時だったということです。この人たちだけは、当日の演奏の方をご紹介したかったんです。妙にドラムスもハードヒットしていて格好いい演奏です。オリジナルも好きですけどね。ここでは「あなただけを サムバディ・トゥ・ラヴ」をご紹介しました。

よくウッドストックと比較されるものに、ローリング・ストーンズも出演して、この数カ月後に開催されたオルタモントのフリー・コンサートがあります。観客の黒人青年が殺されてしまうので、「オルタモントの悲劇」と言われております。このジェファーソン・エアプレインとグレートフル・デッドは両方に出演しておりました。ウッドストックでは「新しい時代の夜明け」とか言っているジェファーソン・エアプレインも、オルタモントの記録映画では、ヴォーカルのマーティ・バリンがぶん殴られていたりします。愛と平和の象徴と言いつつ、実際のところ、愛と平和の終焉の象徴だったわけです。

8曲目
「Feeling Alright」Joe Cocker (1969)

3日目はジョー・コッカ―から始まりますが、大雨で数時間中断してしまいます。その後は、テン・イヤーズ・アフターや、ザ・バンド、ブラッド・スウェット&ティアーズ、ジョニー・ウィンター&エドガー・ウィンター、クロスビー・スティルス&ナッシュ、ポール・バターフィールドなどが出て、最後がジミ・ヘンドリックスといったラインナップです。まず、先般ヘンリー・マックロウの特集をしましたが、彼のグリース・バンドがバックアップするジョー・コッカ―も大変評判がよかったといいます。ここでは、「フィーリング・オールライト」をご紹介しました。

9曲目
「Spinning Wheel」Blood, Sweat & Tears (1968)

ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズですが、1969年という時代を代表する音とでも申しましょうか、ブラス・ロックの代表的存在、シカゴもチェイスもありますが、重厚なブラスが知的に感じさせるのでしょうか、シカゴ同様、立ち上げ時は全員大卒で、ドラマーのボビー・コロンビーは後にコロムビア・レコードの副社長にまでなります。その分、ゴタゴタも多かったようです。バンドを作った中心人物のアル・クーパーを追い出してしまう、面倒くさい奴等だったのかもしれません。元メンバーのほとんどがミュージシャンを続けなかったというのも、その辺を感じさせます。ここでは「スピニング・ホイール」をご紹介しました。

10曲目
「Mean Town Blues」Johnny Winter (1968)

ジョニー・ウィンターですが、1968年の秋ごろにソノビートというマイナー・レーベルから「ザ・プログレッシヴ・ブルース・エクスペリメント」というアルバムをリリースします。その後、コロムビア・レコードと巨額の契約金でデビューし直すわけで、「100万ドルのギタリスト」と呼ばれることになります。コロムビアからのファースト・アルバム「ジョニー・ウィンター」が69年の4月にリリースされます。その次のアルバム「セカンド・ウィンター」が69年の11月リリースですから、その間にウッドストック・フェスティヴァルに出演しております。やはり、デビュー前後の勢いがあるアーティストがこぞって出演していたということなんでしょうか。ここではマイナー・レーベル、ソノビートの「ザ・プログレッシヴ・ブルース・エクスペリメント」収録曲「ミーン・タウン・ブルース」をご紹介しました。

11曲目
「Voodoo Chile」Jimi Hendrix Experience (1968)

ラストは大トリ、ジミ・ヘンドリックスですが、このフェスの時点では、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスではなく、ジプシー・サン・アンド・レインボウズと名乗っております。ベーシストがノエル・レディングからビリー・コックスに替わり、サイド・ギターとパーカッション2人を加えております。ジミヘンの演奏が始まったのは18日月曜日の朝9時だったということで、40万人いたといっても、ジミの演奏を実際に聴いたのは2万数千人にとどまるということです。ここでは「ヴ―ドゥ―・チャイル」をお時間までということでご紹介しました。

次回はオーディオ・チェック向き音源の特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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