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FM84.0MHz Radio City presents "Saramawashi.com -The Vinyl Paradise" 089:ロイ・ブキャナン特集

さらまわしどっとこむ -The Vinyl Paradise-
第89回(2023年6月9日(金)20時~
(再放送:6月11日(日)19時~)

清澄白河にあるカフェGINGER.TOKYOのオーナー高山聡(あきら)がお届けする音楽番組です。
全曲アナログ・レコードでお届けします。可能な限り7インチ盤で、しかもフルレングスでかけます。
サーフェスノイズにまみれた1時間、ぜひご一緒に。

今週はいぶし銀のテレキャスター使い、ロイ・ブキャナン特集です。日本では「メシアが再び」という、実に渋い曲が人気だったりするのですが、この曲はもうかけてしまっているので、今回はかけません。経歴ですが、1939年9月23日生まれ、60年代70年代に活躍したミュージシャンよりは少し上の世代です。1943年から48年あたりがボリュームゾーンですから。亡くなったのは1988年8月14日、酔っぱらってトラ箱に収監されているときに首つり自殺をしたということになっています。死因については殴られたような跡があったという証言もあって、ハッキリしないまま年月が流れてしまいました。ちょいと変り者だったという話もありますが、お酒は大好きだったようです。やたらとギターが上手い近所のオッサン的な人というあたりが案外的確に捉えている表現かもしれません。ステージ衣装もお出かけスタイルとも言えない普段着の渋いジャケット姿でした。とにかく他のアーティストとあまり交わることもありませんでした。セッション音源とかは皆無です。

強いていえば、メジャー・デビュー前の話でしょうか。15歳でプロ・ミュージシャンとして活動を始めています。レコード・デビューは1958年、デイル・ホーキンスの「マイ・ベイブ」という曲です。1960年にはデイル・ホーキンスのいとこのロニー・ホーキンスのバンドに移籍します。ロニー・ホーキンスのバンド、ザ・ホウクスは後にザ・バンドになる連中うです。ここでロビー・ロバートソンらと一緒にやっている時期があるんです。そして、1963年のロニー・ホーキンスのヒット曲「フー・ドゥ・ユー・ラヴ」では、なんと彼はベースを弾いております。

1曲目
「I Am A Lonesome Fugitive」Roy Buchanan (1971)

1972年にファーストがリリースされますが、その時点では自己のスタイルがしっかり確立されています。しかし、その前年頃、ライヴ会場で手売りしていた自主制作盤がありまして、「ブッチ・アンド・ザ・スネークストレッチャーズ」といいます。そこから1曲ご紹介しましたが、まだカントリーみたいなこともやっていたんですね。

2曲目
「Sweet Dreams」Roy Buchanan (1972)

ファースト・アルバムはビルボードで107位どまりで終わってしまいます。シングル・カットは「スイート・ドリームス」、幻のシングル盤です。76年になって日本国内では再発されます。その辺の事情はまた後程。

3曲目
「Roy’s Bluz」Roy Buchanan (1974.11.)

この方、シングル・ヒットとかはありません。「メシアが再び」という日本で異様に人気のある曲がありますが、あれも実際のところ売れておりません。でもライヴとかでは人気だったりします。実はリクエストをいただいておりまして、先にその辺の音源を聴きました。

如何せん、ファンには大人気の「ライヴ・ストック」という1974年リリースのライヴ盤があります。この方、88年に亡くなった後はいっぱいライヴ盤がリリースされます。生前はこの「ライヴ・ストック」ともう一枚78年リリースの「ライヴ・イン・ジャパン」があります。日本ではアメリカ以上に評価されていたようなところがあります。

4曲目
「A Nickel And A Nail」Roy Buchanan (1985)

この人、本当にやりたいことをあまりやらせてもらえなかったという事情があるようで、ピークは70年代後半かと思いますが、80年代は活動のペースを落としてしまいます。「やりたいことをやらせてもらえないなら、もうスタジオに入らない」と宣言してしまいますが、85年には結構機嫌良さげな顔でジャケに写っている「ホエン・ア・ギター・プレイズ・ザ・ブルース」というアルバムを、ブルースの名門アリゲーターからリリースします。これが彼のやりたかったことなんだというアルバムです。でも結局ビルボードで161位までしか行きません。その後もアリゲーターから2枚リリースしますが売れずに亡くなってしまいます。アリゲーターの3枚は、内容は悪くないのですが、時代がちょいと違っていたかなというところです。亡くなった後にブルース・ブームのような時代がくるんです。残念です。

5曲目
「My Friend Jeff」Roy Buchanan (1976)

この世紀の過小評価ギタリスト、ミュージシャンズ・ミュージシャンで終わってしまったテレマスターですが、75年に一大事が起こります。あのジェフ・ベックが名盤「ブロウ・バイ・ブロウ」収録の名曲「哀しみの恋人達」のアルバム・ジャケットの曲名に「デディケイデッド・トゥ・ロイ・ブキャナン」と書き添えてしまいます。ボリューム奏法の先駆者として敬意を表したわけですが、あの曲は確かにロイ・ブキャナン・スタイルの演奏なんです。一体誰?ということで騒ぎになります。ポリドールさんも、人気曲「メシアが再び」とデビュー曲「スイート・ドリームス」をシングル・リリースしたり、来日公演をセットしたり、大騒ぎです。ロイ・ブキャナンのほうは、76年のアルバム「ア・ストリート・コールド・ストレイト」にアンサー・ソングのような「マイ・フレンド・ジェフ」という曲を収録します。この盤、邦題は「メシアが再び」といいます。「メシアが再び」も再録されているんです。ジミヘンの「イフ・シックス・ウォズ・ナイン」なんかもやって、ジェフ・ベックから尊敬される凄腕ギタリストだぞという売り方をしてしまいます。

6曲目
「The Heat Of The Battle」Roy Buchanan (1977)
7曲目
「Hidden」Roy Buchanan (1977)

77年に「ローディング・ゾーン」、78年に「ユー・アー・ノット・アローン」をアトランティックからリリースします。世間の注目を集めてしまいましたから、会社側もいいメンツを揃えてくれます。私もロイ・ブキャナンの入り口はジェフ・ベックで、このアトランティックの2枚のアルバムで好きになったクチです。順番に聴いていきますが、まず「ローディング・ゾーン」、1曲目「ザ・ヒート・オブ・ザ・バトル」はスタンリー・クラークにナラダ・マイケル・ウォルデンです。スタンリー・クラークの曲です。2曲目「ヒドゥン」はヤン・ハマーにスタンリー・クラークです。もう思い切りジェフ・ベックを意識させてしまうラインナップで作ってしまいました。当然なかなかにいい演奏、いい曲です。でも売れません。

8曲目
「Green Onion」Roy Buchanan (1977)

この盤には、もう一曲面白い曲が入っています。ブッカーT&MGsの「グリーン・オニオン」のカヴァーですが、こんどはこの曲の共作者でもあるスティーヴ・クロッパーと競演です。交互にリード・ギターのバトルを聴かせます。ベースはドナルド・ダック・ダンです。

9曲目
「Turn To Stone」Roy Buchanan (1978)

78年の「ユー・アー・ノット・アローン」は、宇宙服のヘルメットにレス・ポールが映っているようなジャケットでして、スペイシーな内容になっております。近所の安酒場で飲んだくれている方が似合いそうなオヤジに何やらせるんだというようなアルバムです。やはり売れません。でも面白いことをやっています。ここでご紹介しましたのは、ジョー・ウォルシュのカヴァー「ターン・トゥ・ストーン」です。ここでバックアップしているのが、当時のジョー・ウォルシュ・バンドのリズム隊ウィーリー・ウィークスとアンディ・ニューマークだったりします。本人がやりたかったことではないのかもしれませんが、全くもって面白いことをやらせております。

10曲目
「Down By The River」Roy Buchanan (1978)

もう少し音源を聴かないと本質的な部分は分からないかもしれませんが、ブルースを弾かせれば上手いギタリストです。結構いい曲もあります。本日ラストは、これも78年の「ユー・アー・ノット・アローン」から、ニール・ヤングのカヴァーで締めとなりました。

次回は7インチ盤で聴くBluenote特集です。お楽しみに。
番組へのご意見やお便りをください。
voice@fm840.jp

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