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続・下町音楽夜話 0285「クルマ趣味は多様なり」

中央エフエムの東京音楽放送局~Tokyo Music Station~という番組のパーソナリティを仰せつかって3カ月が経つ。月一回ペースで深夜の生放送2時間、中央エフエムの代表小松和也氏と音楽談義を交わしながら持ち込んだアナログ・レコードをかけている。初回は「ラジオ映えする曲」、2回目は「ウェスト・コースト」、3回目は「クルマ・ソング」というお題が提示された。そして3回目にしてゲスト登場だ。神田須田町にあるケン・クラフトというモデル・ショップのオーナーさん、高石賢一氏である。巨大重機が専門という一方で、個人的にはシトロエン・マニアということだ。自分もクルマに関してはそれなりの数の欧州車を乗り換えてきたクチなので、語れないわけではない。しかし、クルマ趣味は多種多様、今回の番組に関しては、全くの門外漢だったかもしれない。

自分の場合は、クルマはいじらない。新車で購入し、そのままの状態で乗る。せいぜいでヘッドレストにバンダナを巻く程度で、内装もいじらない。そしてとにかく走る。納車されれば、まず伊豆スカイラインが美ヶ原高原のビーナスラインあたりに試しに行く。最短コースをトレースすることを理想とし、ドリフトはしない。だいたい手放すときに、ブレーキとタイヤの状態がよくて驚かれる。しかし、それなりの距離は走る。所詮東京の街乗り中心なので、大きなクルマは好まず、小型車専門である。これまでに、三菱コルディア、ルノー5、旧型ミニ、シトロエンAX、フォード・モンデオ、マツダ・ロードスター、マツダ・スポルト20、BMWミニ・クーパーS、ミニ・コンバーチブル、BMW320iツーリング、プジョーRCZ、プジョー308、プジョー208と乗り継いでいる。決して嫌いではないことはご理解いただけるだろう。

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音楽番組でクルマの話をすることは、意外なほど難しく、意外なほど楽しかった。小松氏はムスタングに乗っていたことがあるというだけで、趣味の違いがハッキリしている。自分はアメ車には全く興味がない。フォード・モンデオは欧州フォードの車である。高石氏はシトロエンがお好きと言っても、自作のパーツを付けたりしてデザインに手を入れる方なので、やはり趣味が違う。ひたすら走り、移動を楽しむ自分のようなタイプではなさそうだ。趣味の違う人と話すときには、絶対に相手の趣味を否定してはいけない。しかし、今回は否定どころか、拘るところが違いすぎて話についていけない。番組内でも明言していたが、変態の領域である。否定以前に唖然呆然といった状況だった。

ただし、問題は音楽番組であることだ。クルマ関連の音源にもいろいろある。高石氏が持ち込んでいたのは、自動車メーカーが作ったプロモーション用のレコードであり、しかもヴィンテージものといった様相で、2度とラジオではかからないであろうレア音源ではある。小松氏と自分は、タイトルやら歌詞がクルマ関連だったり、カージャケのレコードだったりするので、音の傾向はバラバラである。リスナーの皆さんは楽しめたのだろうか?まあ、こういったものは、かける側が楽しむしかないのだ。楽しみ方こそ千差万別、こちらが楽しんでいれば、楽しさが伝わると考えるしかない。

今回、番組前1~2週間はいろいろ資料にあたり、記憶を整理したりしていた。古い小説に登場するクルマなどの車種やら特徴を確認したり、「カージャケ」というクルマがジャケットに登場するレコードを紹介する本なども読み返した。店に置いてあるレコードは全てチェックして、ジャケットに車がいないか調べておいた。面白かったのは、中森明菜のシングル盤に古そうなクルマのフロント・ピラーが見えるのだが、高石氏は瞬時に「ルノー4」だと当てていた。恐るべし。

今回自分がドイツのNena「99 Luftballon」をかけた。これはジャケットにプジョー203が登場するから選んだものだが、「カージャケ」では車種が間違って紹介されている。プジョー推しとしては非常に残念な気持ちであった。他にはタクシー関連として、ジョニ・ミッチェル「ビッグ・イエロー・タクシー」と映画「タクシー・ドライバー」のサントラを持ち込み、その場の気分でトム・スコットの名曲「タクシー・ドライバーのテーマ」を選んだ。これは大好きな曲だけに、かけられたことが嬉しかった。

また番組の終盤では、ロバート・ジョンソンの「テラプレイン・ブルース」のテラプレインがハドソンというメーカーの車種であることを紹介しながらフォガットがカヴァーした「テラプレイン・ブルース」をかけた。夜中に聴くには少々うるさかったが、まあよしとしよう。斯様に趣味の世界にどっぷりの2時間はあっという間だった。意外だったのは、小松氏と初めて曲が被ったことだ。ローリング・ストーンズ「ライド・エム・オン・ダウン」はシングル盤を持っていたこともあり、ストーリーがよくわからないMVがやたらと格好良いというだけで選んでいたのだ。ところが小松氏はMVに登場するのと同じ年式のムスタングのファストバックを所有していたということだったので辞退した。いやはや面白い。久々にハンドルを握りたいという気持ちが湧いてきた。ここ数年は朝の仕入れ等もあって、毎日乗っているんだけどね。



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