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子どもの人生を生きてやることはできないんだな、と気づいた話

子育てをしていて、親は子の人生を歩んでやることはできない、子の人生をサポートすることしかできない、っていろんなところで言われたり読んだりしたけど、本当にそうだな、としみじみ思った体験をふたつしたので記録として。

植物の種をまいた

マリーゴールドとパクチーの種を植えた。どこかでもらった栽培キット。娘に植物に触れてもらったらいいかな〜という親の勝手な期待もありつつ、軽い気持ちで始めた。説明書に書いてあるとおり、培養土をポットに入れて、水を入れて混ぜて、種をまいて少しだけ土をかぶせる。よし出来た!なに簡単だな、と思った。

ところが全然芽が出ない。書いてあるとおりの手順を踏んだのに、全く芽が出ない。そのうち、水やりも面倒くさくなってしまって、飽きてしまった。数日水を忘れて土の表面がカラカラになっていたことも。でも、まあ、もうちょっとやってみるか…と思って水やりを再開し、明るいところに置いていたら、ぽんっと芽が出た。めちゃくちゃ感動した。パクチーのほうは数年前から家にあるもので、年月が経つと発芽率が下がるので芽が出ないかもしれませんね、と知り合いのお花屋さんに言われて初めから半分諦めかけていたのだが、こちらもひょっこり芽が出た。

種そのものはみずみずしくもなんともない、ただの乾いた小さなかけら。これが「生きている」という実感なんて全然ない。それをつっついたり、ゆすったり、直接の刺激を与えるわけではないのに、土と水と光の中に置けば芽が出てくる。急に「生」を見せてくれる。

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何度か危機もあった。雨で倒れてこうべを垂れていたので、首をピンっとさせたくてつまみあげたくなった。でもそんなことをして、もし芽そのものをひっこ抜いてしまったら?苦しいけど見守るしかない。いつもと同じように水をやって光にあてて。そうすると晴れた日にぐんっと頭をあげてくれた。その日もめちゃくちゃ感動した。

それで思った。この種を育てたい。でも種そのものに働きかけることはできない。土と水と光、種が育つ環境を整えることしかできないんだな。ものすごくじれったい。教科書どおりの手順でパッパッとやったらすーっと育って美しい花を咲かせてくれると思ったら大間違いなんだな。子育てみたいだな。

娘にも土を触らせて‥などと思っていたけれど、立派に育てたいと思い始めたら夢中になってしまい、他のひとに触ってほしくなくなった。それで私ひとりで黙々と世話をしていた。でも10センチくらいになったころかな?娘が急にやりたいと言いだして、私の代わりに水をやってくれるようになった。まだ花は咲かないけど、これからが楽しみ。

アゲハの幼虫を育て始めた

アゲハの幼虫を育て始めた。あまり大きな意味はなくて、家の前に植えた花柚とレモンにいつも幼虫がついて、植木屋さんには駆除しないと木がだめになるよと言われていたが殺すのが心苦しくてできなかったから。あとお隣さんも柑橘を植えていてアゲハが来るのだけど、我が家が駆除しなければお隣さんの柑橘の葉が食べられてしまうかもしれない。実際、蝶を見たくてそのままにしている我が家の事情を知らなかったお隣さんが親切に我が家のアゲハの幼虫を駆除してしまったこともあった。

小さな幼虫が二匹ついた枝を切り取って虫かごに入れる。当たり前だが切り取った葉っぱはしおれてしまうので、毎日毎日新鮮な葉っぱを切り取ってきて与えなければいけない(結局、我が家の花柚はアゲハではなく私によってだいぶ切り取られた笑)。そして毎日大量にうんちをするのでかごの掃除もした。

木についている幼虫を見ていたときは「毎日元気かな〜」と挨拶代わりに眺めていたものが、「飼う」となると急に責任が大きくなったようでドキドキしてきた。家の中で飼っていたら、早々に一匹死んでしまった。友人に聞いたら湿気がよくなかったらしい。知らずにわざわざ過酷な環境につれてきてしまったことを申し訳なく思った。こんな小さな幼虫の死だけど、自分でもびっくりするくらいショックだった。

もう一匹はすくすく育ってくれた。軽い気持ちで飼い始めたので逐一写真を撮ったり成長を記したりせずに来てしまったが、鳥の糞のような幼虫からあの大きな目玉模様の緑色になって、そしてある日突然、どうしたのかなと思うくらいぶるんぶるん大きく身を捩らせたかと思うと虫かごの天井に張り付いて動かなくなった。ここでさなぎになる?真っ逆さまだよ?と思い、割り箸をかましてやった。割り箸に乗ってきたのでよしよし、と思ったが、するするっと通り過ぎるとまたもとの天井へと這っていって、そこで止まった。天井でさなぎになると決めたんだな、と思い、もうそのままにしておいた。ある日、日中出かけて家をあけた間に、あっという間にさなぎになってしまった。

あんなに毎日葉っぱをやり、うんちの掃除をしてやってたのに、急にやることがなくなった。子どもが巣立つってこういう感じ?手がかからないのが淋しい。と同時に、こんなに何日も食べずにいるということはどれだけのエネルギーを幼虫のときに蓄えていたんだろうと思うと、その生命力にびっくりする。

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さなぎになってもうすぐ二週間。無事に蝶になってくれるのかまだわからないけど、もうわたしにできることは無い…。

育ててみて、今まで感じたこともなかったような感情がいろいろと湧いてきて自分でも驚いた。生きていくたくましい姿に圧倒されたのはもちろんだけど、やっぱり一番は「わたしが代わりに生きてやることはできない。環境を整えることしかできない」ということ。元気がないときにどう助けてやればよいか。見ているだけなのがもどかしい。子育てもそうなんだろうな、と思うと、子どもにヤイヤイ言いたくなる気持ちが少しだけ抑えられるような気がした。


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