「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」 「モネ 連作の情景」
気になっていた展覧会を三井記念美術館と上野の森美術館で観た。
高校時代の友人といっしょだから展覧会の後、日本橋でランチをして、最後は上野精養軒でお茶をするという贅沢時間。
三井記念美術館 「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」
午前11時、次々と来館者、圧倒的にシニア多し。
2017年9月、「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」での、気が遠くなるような長い時間がかけられたであろう作品が放つ存在感に圧倒されたことを今でもはっきりと記憶している。
今回もまた、若い作家や明治の匠の研ぎ澄まされた感性と唯一無二の 渾身の作品に感嘆したのだった。
【木彫】福田亨(1994年生まれ)
なんと精緻な作品なのだろう。
1994年生まれ。この時代の寵児である1994年生まれの超人たちを思った。
羽生結弦、反田恭平、大谷翔平。
アーティストもアスリートという言葉を使って賞賛することもあるけれど、まさしく稀代のアスリートだ。
【木彫】大竹亮峯(1989年生まれ)
月光 2020年
一年に一度、夜にだけ大輪の花を咲かせる月下美人を表した作品。
超絶技巧の木彫りの月下美人だけでも驚くのに、この花が固い蕾から開花するというからくりに、常人は理解不能となり、ただ、う~ん凄い、凄すぎると唸る。
【ガラス】青木美歌(1981–2022)
あなたと私の間に 2017年
「この作家さん、若いのに亡くなっていらっしゃるのね」と友人。
「ほんと、41歳とは、なんて若い」
モノクロの深層な世界から輝きを放つ作品の前で立ち止まる。スマホを向けて写真を撮る。
「作品を観た瞬間、萩原朔太郎の竹という詩が脳裏に浮かんだのよね」と友人。
さすが45年間、高校国語教師を務めたひとは知識量が違う。私はいつも刺激をもらうばかりだ。
たまたま作品の近くに青木美歌さんのお母様が友人の方たちと来館していらっしゃり、少し話をすることができた。
作品から感じとったことを友人と二人、言葉で伝える。
合唱と英語を教えていらっしゃるそうで
「だから美歌という名前を付けたのです。美香は札幌で育ったんですよ」
とおっしゃる。
「作品を観て、バロックという言葉が浮かんできました。雪の結晶が美歌さんの幼いころから感性として育まれたのでしょうか」
と私が感じたことも伝えた。
「巡回展のすべての会場に足を運び、娘に会いに行くんですよ」ともおっしゃる。
「多くのかたたちに娘の作品を観てもらいたいのです」ともおっしゃった。
早逝の作家さんの生きた証である作品とお母様の想いに胸が熱くなった。
写真撮影が出来なかったけれど、盛田亜耶さんの切り絵作品「ヴィーナスの誕生II」も自己の内面や世界を凝視する哲学のオーラが漂っていて、素晴らしかった。
また円山応挙「虎図」(大英博物館所蔵作品)に刺激を受けて制作された明治の刺繡画「虎図」(無名)の横に展示してあった応挙「虎図」のインパクトあるキュートさにも参ってしまった。
※2024年も巡回展は続きます。
ぜひ足をお運びください。
その後、予約していた近くのレストラン Farsi largo!へ
午後12時半の予約。
ネットでの高評価とコスパのよさでチョイス、ここが大正解の隠れ家的美味レストラン!
まったく予備知識もなく伺ったレストランだったから余計に満足感も高く、日本橋に来たら再訪したいお店。
オーナーシェフの辻 秀永さんの料理のファンになりました!
次に上野の森美術館 「モネ 連作の情景」へ向かう。
午後2時30分からの予約、夫も合流。
平日だというのにかなりの入館者、若い世代が多い。
展示作品がすべてモネ、”100%モネ”の贅沢な展覧会ということで、人気展覧会のようだ。
会場に入ると、まず壁と床に投影されたジヴェルニーの庭の睡蓮池を歩いて渡る趣向。
池の水面を歩くと波紋が現れ、水音が聴こえるという凝った演出。
いいタイミングで11月11日の「【美へのまなざし】一歩前へ アトリエ舟から波間から モネの対象に迫る力」 という新聞記事を読み、なるほど、こういう視点でモネの作品に向かいあえばいいんだと納得、取り上げられた作品モネのアトリエ舟、ラ・マンヌポルト(エトルタ)の前に立ち止まり、一層深く観ることができた。
展覧会で実際に作品を前にしたときに感じるのは、カンヴァスに残る筆跡、絵の具の重なり方、作品の大きさなど、画像や映像画面からでは伝わり切らない作品の持つ生命とでもいえる気のようなものだ。
橋の向こうの川岸には工場の煙突が並び、煙がたなびいている。
展覧会で実物を観るまでは(ああ、工場の煙突風景か、そう好きではない風景画だな)と思っていたけれど、連作を前にすると、時間や気候と共に変わりゆく橋を包む光の粒子が見事にカンヴァスに写し取られていて、曇り、夕暮れ、日没の色彩の中で揺らぐ空気や風を肌に感じ、魅せられた。
第5章「睡蓮」とジヴェルニーの庭
モネは睡蓮を主題とした作品を約250点残しているそうだ。
睡蓮そのものから、季節や時間、天候によって刻々と変化する睡蓮の浮かぶ池の描写へと彼の興味は移っていく。
1897年頃から1900年までの第1シリーズとそれ以降の第2シリーズ。
睡蓮の花と葉がクローズアップされた1897年から1898年に制作された「睡蓮」も、実物を観るまでは、粗くて彩度も暗い絵だなと思っていたけれど、実際に観るとモネの睡蓮への視線と観察の集中力の凄さに圧倒された。
第2シリーズに描かれているジヴェルニーの花の庭と水の庭も好きな作品だ。
ジヴェルニーでの生活で絵の制作とともにガーデニングも、モネが情熱を注いだという。
世界中の珍しい植物の種を取り寄せていたともいう。
日本各地にはジヴェルニーの庭を模したガーデンが作られているぐらいだから、日本人のモネ人気は絶大だ。
夢中で鑑賞した。
ジヴェルニーとオランジェリー美術館へと心は誘われている。
よく歩いたから上野精養軒でお茶しよう。
午後4時前。上野精養軒本店レストランがいいねと上野恩賜公園を歩いてお店に向かう。
陽射しが暖かいのでオープンテラスの席でお茶。
深まる秋のころの不忍池を眺めながらの、ゆったりお茶時間。
そろそろ陽も傾いてきたから帰りましょうか。
今回も名画と美味なる料理、潤いのある佳き一日でした。
帰宅して萩原朔太郎の「竹」を読んだ。
長文noteです。
二回に分けるべきかもしれませんが、美術展評などという大それた内容ではないですし、大人のお出かけの一日という記事なので、ランチと二つの展覧会記事にまとめました。
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