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おひな様

いくつになっても

わくわく待ち遠しい

桃の節句


京雛の 御殿雛ごてんびなは長い歳月の間に

御殿も 雪洞ぼんぼりもお道具も壊れてしまいましたが

せめて雛人形お一人お一人を愛しんで飾りましょ。


長い長ーい歳月が経とうとも
子どものころから見つめ続けたお殿様
今も美男子


「今年もこうしてお目にかかれたこと、幸せよのう」
お姫様の冠が揺れる


いつまでも若い娘のまま
初々しくてまだあどけなさも少し残る白いお顔の官女
凛と美しい


「若いということは、なんと美しゅうて気高いことよ」
左大臣
見事な白髪に白い眉の赤いお顔
すこし白酒めされたか…


そして左大臣よりお若い方が右大臣
精悍な青年の眉ときりりと強い眼差し
頼もしゅうございます


年に一度の雛祭りを盛り上げるのは 五人の少年楽師のお囃子で、
元服前の少年たちが
日頃の稽古の成果をお披露目します
少年特有のヘアスタイルが清々しい
あれ?烏帽子がないわ
長い歳月の間にはいろいろな事もあるさ


「こうやってわれらを毎年飾ってくだされば、それでええ」
と仰ってくださっている そんな気がします


七十年以上前の 木目込きめこみ雛人形

伯母たちが初節句に買ってくれた 木目込きめこみ雛人形


満身創痍だけれど雅でお品のよいお顔
子どもの頃は、この雛人形のお顔も姿も好きじゃなかったけれど、
二十歳を過ぎたころから
この雛人形の持つ奥ゆかしさや両手にしっとり馴染む丸やかな姿が
好きになりました


「それはなんと嬉しいことよのう」


そんなお二方の声が聞こえてくるようです


和室の二本松車箪笥の上には
長女が生まれた年に

母が奈良町の民藝店で買った
一刀彫の小さな 内裏雛だいりびな


四十七年も前のことです。

「わぁ、これすごく品があってええねぇ」
と手に取った母の横顔が
今でも鮮やかに浮かびます


あれから長い歳月が流れて往き
色も落ち、
決して美しい状態ではないけれど、
こうして飾り
母を偲ぶ


幾時代も幾世代も越えて

ひな人形を愛でる人々の心にあるのは

郷愁かもしれません。


母を想い祖母を想う。

母は

祖母は

小さきものに幸多かれと願う。


母が娘たちに買ってくれた
大内塗の雛人形


次女が自分の娘に買った
なつめ雛人形


ちひさきものは みなうつくし

  枕草子 - 第百五十一段


桃の節句のころ

由緒ある

いにしえの雛人形を愛でるのも風雅


朴訥とした笑声が聞こえてきそうな雛人形は
越ケ谷雛
江戸時代・19世紀


素朴な立ち雛
江戸時代に関東地方で制作された雛人形


古今雛
末吉石舟作 江戸時代・文政10年(1827年)


あらぁ~美意識って変わるのね、
とか言われていたけれど
パリコレに出演しているスーパーモデルみたい
衣装や冠、化粧に品のよさを感じます


犬筥いぬばこ
江戸時代・19世紀
元祖人面犬?


ひな人形ではないけれど大好きな染付子犬形香炉
江戸時代のもので
両耳と口からお香の煙がでてくるらしい
もう可愛すぎ
何度見てもビートたけしに見えちゃうんだなぁ


三井家のおひなさま


ひな段飾り 永印のひな人形・ひな道具
京都の丸平大木人形店・五世大木平藏が特別に製作した
浅野久子氏の幅3メートル、高さ5段の豪華なひな段飾り  昭和9年


珠印のひな人形 お殿様
四世大木平藏製  明治33年


お姫様
正装の冠は内裏雛の真ん中に飾ってあります


見事な松鶴図屏風を背にされたお姫様


あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花  

 うれしいひなまつり  作詞 サトウハチロー


春です
チューリップも微笑む春です


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