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君に百回「好き」と言ってから死ぬ

〈#3デート【上】〉

 先ほど約束をした蒼との待ち合わせ時間になり、待ち合わせ場所で待機していたら、すぐに蒼が来た。

「まった?」

「いや、俺も今来たところだから」

「それならよかった。じゃ、行こ」

 蒼が手を握ってくる。少し気恥ずかしい……が、嫌ではない。恋って不思議だな。

 まずはやっぱりデートの定番ということで、映画を見ることに。映画は蒼の要求で“フクシマフィフティ”を見ることに。何故こんなものが好きなのか。

「映画面白かったね〜」

「そうだな。しかし、蒼があんなものを見たいとは……」

「何かまずかった?」

「いや……そんなことはないが……女子って、こう、なんか、恋愛系が好きなのかと思ってた」

「あーなるほど。私も一応恋愛系は見るけどね。たまたまってことで」

「了解」

 この、何ともない感じの会話。すごく、いい。

「……俺、好きだな。こういうの」

「そう?」

「うん。何ともない会話が好き——あ」

「ん?」

 今、思い出した。

 告白病のことについて。既に二回言ってしまった。既に2日分寿命が縮んだ。

「?」

 まだ、何ともないが、減っていくにつれ、病気の症状が出ると、医師は言っていた。

「どうしたの……?」

 心配そうに蒼が見ている。しかし、此処でめげるわけにはいかない。

「いや、なんでもない。少し思い返しをしていただけ」

「そう。じゃあ、次はカラオケ行こー!」

「りょー」

 目的の場所、カラオケに到着。

「高校生二人。三時間で」

 蒼が手早く受付を済ませる。慣れてるのかな。

「蒼ってここの常連?」

「たまにね。ここは曲数が多いんだよ」

「へえ」

 ここのカラオケはそこまで大きくはないが、曲数が確かに多かった。三百曲はあると思う。J-POPから、ハードロック、さらにはEDMまであった。

「ほんとに多種多様なんだな……」

「それじゃあさ、点数で競わない? 曲は自分の好きなのでいいからさ、合計点数が高い方が勝ち。どう?」

「お、いいね。じゃあやろうか」

「うん!」

 いちいち楽しそう。羨ましい。そして可愛い。この時間がずっと続けばいいのになんて届かぬ願いを言う。

 そしてカラオケ大会が始まった——



 梁の死亡まで残り97日。

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