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現代高校生が犬を拾ったら犬娘になりました。

前話です↓

【8話:修学旅行】


 今日は待ちに待った修学旅行の日だ。
 隣には大きく膨らんだリュックサックがある。
 あるじは隣で寝ている。
 時刻は5時半。
 そろそろ起きて空港に向かわないといけない。
「あるじ、おきて」
 やさしくあるじを揺らして起こす。
 ハッと一つ恐れていることを思い出す。

 発情期。

 去勢していない犬や猫は必ず発情期が来る。
 それはわこも例外ではなく。
 日中にそうならないかがとても心配だけど、あるじに一回相談してみようかなと思う。
「んん~……」
 あるじが起きる。
 もぞもぞとする布団。
「チョコおはよお……」
 朝に弱いあるじ、かわいい。
「あるじ、起きないと朝ごはん抜くよ?」
「それはいやだ!」
 バッと目が覚めるあるあるじ。
 かわいい(二回目)。
「あるじ起きたね。朝ごはんできてるよ」
 そんなことを言いながら台所へ向かう。
 なんだか発情期のことをいうのが恥ずかしきなってきた。
「ち、ちなみにあるじに相談したんだけど」
「ん?」
「わこ、そろそろ『アレ』が来そうなんだけど……」
「あれ……?」
 うーん、あれじゃ伝わらないか。
 でも恥ずかしいし。
「えっと……発情期なんだけど……」
「ブッ」
 あるじが味噌汁を吹いた。
 それはもう盛大に。
「発情期ってあれか? 犬とか猫が交尾するやつ」
「うん」
「まじか。どうするのが正解なのだろうか」
「わこもわかんない。でもそろそろ来るんじゃないかなって少し不安」
「とりまご飯食べ終わったら空港に向かいながら考えようか。今はあまり時間がない」
「そ、そうだね」
 急いでご飯を食べ、駅に向かいつつ空港にも向かう。
 電車に揺られること1時間。
 空港に着いた。
「空港ってこんなに大きいの? わこ初めて来たから興奮してる!」
「かわいいな、チョコは」
 そんな誉め言葉をもらい、にこにこしてしまうわこ。
「それで? 発情期ってどうやったら治るんだ?」
 わこも初めての経験だから何もわからないけど、これまでの思考を張り巡らせる。
「……たぶん、わこも交尾すればましにはなると思う。ただの憶測でしかないけど。でも、それ以前に……」
「そ、それ以前に……?」
「……相手が居ない」
 くーん、と鳴く。
 あるじとなら安心できるかもしれないけど、あるじが嫌ならどうしようもないし……。
「僕でいいなら相手するけど?」
「えっ」
「いやだった?」
「そんなことないしうれしいけど……。いいの?」
 完全に予想外の回答だった。
 あるじすき~~!!!
「まあ、チョコを彼女にしたいと感じていた時からそのぐらいの覚悟はしてたから何も問題ない。むしろ歓迎というか」
「…………」
 感動で泣きそうになる。
 わこのことをそこまで思っていてくれてたなんてうれし泣きものだよ。
「……じゃあ、そうなっちゃったら・・・・・・・・・よろしくね。何してもいいから」
「何してもいいって……。まあ、了解した」
「おーいB組集まれー」
「先生が呼んでるから行こうか」
「うん!」
 それからわこやクラスメートは飛行機に乗り込み、広島へフライトを開始した。


【9話:初日】


「わあああああ!! 知らない場所だ!!」
「チョコは忙しいね」
 広島のついたわこは大はしゃぎしていた。
 いたるところに鳥居とりいがあり、海がアクアブルーの色で美しく、何よりも空が快晴という犬からしたら大変はしゃげる環境だった。
 海! 晴れ! たのしい!
 そんな笑顔ではしゃいでいると氷くんと美咲みさきちゃんが話しかけに来た。
「ご機嫌だね。そんなによろこんででもらえるとこっちもうれしくなってくるよ」
「うんうん。チョコちゃんのはしゃぎかたがかわいい~」
「わこももちろん楽しいけど何よりもあるじ! 嬉しさが隠しきれてないぞ!」
「ぐっ……ばれた……」
「さすがチョコちゃんだね。薫のことよくわかってる」
「おーーい。集まれー」
 先生の呼びかけで先生の周りに集合する。
「いいか? 楽しむのは結構だが、はしゃぎすぎてやらかすなよ? あくまで「修学」する「旅行」なんだからな。とりあえず、これから原爆ドームに向かう。行動班でドームを回ること。お土産、食べ歩きは制限しないがほどほどにな」
「「「「「はーーい」」」」」
 そういい告げられ、バスに乗る。
 わこと主は一番後ろの右窓際。
 だれもいないというところではラッキーだった。
 ちなみに、隣にこおり君と美咲みさきちゃんがいる。
「チョコちゃんと薫くんはいつも家では何してるの?」
 美咲ちゃんが質問してくる。
「うーん、あるじに抱っこしてもらったりよしよししてもらったりしてるかな」
「チョコがかわいいからつい……」
惚気のろけてくるねえ~~ラブラブでうらやましいよ」
「そっちはどうなの? 今年から急に仲良くなってるけど」
「あ、それ聞いちゃう? なんとね、薫君が告白されて文化祭が終わったとにね、私も氷君に告白されちゃったんだよ!」
「ちょっ……!?」
「なるほど~~」
 そんな感じでバスの中はかなりにぎやかになりつつ目的地に向かっていった。

 * * *

 バスに揺られること一時間。
 目的地の原爆ドームに到着した。
「ここからは行動班行動だがとにかく静かにな。他のお客さんもいるからな」
「「「「「はーーい」」」」」
 行動が開始される。
「あるじ、原爆ってなに?」
「原爆は『原子爆弾』の略語で、放射性元素、主にウラル235を利用した落下型爆弾を原子爆弾というよ。爆発範囲は最小でも半径2~5キロ程度、広島に落とされた『リトルボーイ』は少なくとも14万人が亡くなったらしい」
「ほえ~。あるじ物知り」
「まあ、下調べはしっかりやってきたぞ」
「ドヤるあるじかっこいい」
「そ、それほどじゃないけどな……」
 あ、照れてる。
 かわいい(3回目)。
 一通り原爆ドームを散策し終え、お昼ご飯に使用となった。
 ちなみに氷君と美咲ちゃんはそれぞれで散策していた。
「お昼なににする?」
「ん~どうせなら地元のご飯がいいよね」
「「確かに」」
「それなら牡蠣とか? 本場の牡蠣を食べてみたい」
「じゃあ、魚系になるのかな。意義のある人」
「「「異議なし!!」」」
 そんな感じで魚屋さんになりました。
 魚屋があったのは原爆ドームから徒歩3分のところにあった。
 マグロやサーモン、養殖ようしょくしている魚や牡蠣などもおいしく食べれた。
 あるじは牡蠣の青臭さでくたばってしまった。
 逆にわこは焼き牡蠣が食べれなかったので交換し合いっこをしてみんなで食事を楽しんだ。
「B組行くぞー」
 先生が呼んでいる。
 パパとママへのお土産にいろいろお好み焼きのチャームを買った。
 時刻は五時。
 一旦宿に泊まると言っていた。
 バスに揺られ宿に帰った。


【10話:発情】


「…………」
 宿に戻ってからわこは発情に関して悩んでいた。
 どうやって抑えるかそれとも発散するか。
 うーーーむ……。
「チョコ? どうしたん?」
「ん、えーと朝にも言った発情期について考えてた」
「いつ来るかとかわかるもんなん?」
「わからない。初めてだからもう来てるかもしれないし、まだかもしれない」
「うーん……。とりあえずお風呂入るか」
「そうする」

 それは・・・突然来た・・・・

 わこがお風呂から戻ってきたとき。
 あるじが居なくて一人でベッドに座っていた時に来た。
 来てしまった・・・・・・
 単純に言えば、ムラムラとした感情が込み上げてきた。
 あるじと一緒に居たくて、どうしようもない感情。
 こんな気持ちは初めて来た。
「ちょ、ちょっとならいいよね……?」
 そう思い、あるじのh句を顔に寄せる。
 少しだけ、匂いを嗅ぐ体制になる。
「あるじの匂い……」
 安心感を感じる。
 あるじに抱きしめられてる感じがする。
 抱きしめられているだけじゃこの感じ・・・・が満たされず、手が伸びる。
 その後もいろいろなあるじのものを堪能したが一切欲求が収まるわけもなく。
「チョコいるー?」
 あるじが戻ってきた。
 そこでハッと気が付く。
 あるじのものが散乱していることに。
「…………チョコ」
 やばい。怒られる。
きたの・・・?」
「……(こくり)」
「そっか……。チョコは今何がしたい?」
「うーん……。さっきあるじの服の匂い嗅いでも欲求が満たされないからそういうこと・・・・・・なのかな……」
「そっか。ちょっと髪乾かすまで待ってて」
「うん」
 待っていようと思ったけど。
 感情は高まるばかり。
 焦らされている感じがして憤りも感じるように。
「お待たせ」
 そうしてあるじの髪が乾くとともに、あるじに抱き着くような形でしがみつく。
 犬ならば許されない行動。
 だけども発情期を迎えてしまっては何も抑えることができない。
 だからほんの一瞬でも。
 ゆるしてほしい。
「……っ」
 あるじが緊張しているのがわかる。
 わこの興奮は止まらなかった。
「あちょ、まっ、アッ——」
 あるじにかみついてしまった。
 今日だけは許してほしい。

 * * *

 あるじに嚙みついていろいろしてからしばらくたったあと。
「落ち着いた?」
「うん。ありがとうあるじ」
「チョコのためならなんだってするよ」
 そんな優しい言葉をかけられたことなかった。
 うれしくて泣きそうになる。
「あるじ……すき!」
「僕もスキだよ」
 そういい、二人で寝たのは言うまでもなかった。


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