古典占星術のハウスと惑星の関係は歴史を知ってるとわかりやすいかも


古典占星術のハウスと惑星の関係は歴史を知ってるとわかりやすいかも?という記事です。


現代占星術と古典占星術のハウス解釈は全然違う、というのを知ったのは、私が西洋占星術を勉強して半年くらい経ってからのこと。


現代占星術では、12ハウスの意味は12星座と対応しています。
一方、古典占星術ではカルディアンオーダー⁽※1⁾に則り、1ハウス土星から始まり、木星、火星、太陽…と振り分けられています。
また「ジョイ」と呼ばれる、天体が共通の性質を持つハウスに位置することで、居心地が良い関係性を指す状態などもあります。

※1 カルディアンオーダー
七つの惑星を軌道が大きい(速度が遅い)順に並べたもの。
土星→木星→火星→太陽→金星→水星→月の順で地球に作用すると考えられている



古典と現代ではハウス解釈やハウスルーラーが違うんだ!なるほど~!
…と分かってても、ひとつひとつ暗記していくのはなかなか大変。



でも、歴史の流れや経緯を知っていると古典占星術のハウス解釈はとても道理にかなってるし覚えやすいのでは?ということに気づきました。


※歴オタの個人の意見が多く含まれます。参考程度に見てください。



◆1ハウス 身を固めて己を守る


古典占星術では1ハウスは生命、誕生のハウス。
ルーラーは土星、ジョイは水星。


ルーラー:土星 生きるための線引きをする


土星は冷たく乾いた天体。
冷は外の影響を取り込む性質であり、乾は自分とそれ以外を線引きする性質を持ちます。


生存率を上げるには何が危険で、何をわが身に取り込めばよいか、周りの状況を察知し、生存率を上げるための現実的な策を講じなければいけません。


人間などの哺乳類はほぼ皮膚がむき出しの状態です。
体温の上がりすぎを抑制するための進化だそうですが、とはいえ寒さには弱い生き物。
寒さから身を守るには身を覆うものがなくてはいけません。
熱い場所でも、熱疲労を軽減するため、長袖などで身を守ったりしますよね。


寒い時には凍死しないよう防寒をし、熱い時には体に熱がこもらないようにする。
風雨で食料が傷まないように倉庫を作る。
川が氾濫しないように土嚢を作ったり、灌漑する、といった具合で
生き残るために色んな策を講じる必要があります。


また、この1ハウスの土星は戦いの時の鎧に例えることもできます。

足軽と大将とでは戦の際に身にまとう甲冑の豪華さや耐久度は全くちがいます。
その理由は、足軽と大将では、戦場において命の価値や背負っているもの(領土・国など)が違うから。

やがて、身を守るための服や鎧は本来持つ「体の保護・防衛」といった意味合いに加えてステータスを表すしるしにもなります。

土星は責任ある立場も表しますが、まさにこの流れが当てはまるのではないでしょうか。

土星は冷たく乾燥した性質から硬直も表しますが、「身を固める」という言葉のように、身なりを整える、家庭を持つ、就職するといった社会に対してポジティブに展開していく要素も感じられるものだと思います。


ジョイ:水星 生存のために知覚認知する


水星は知覚認知をつかさどる天体です。
読み書きなども該当しますが、まず何のために知覚認知が必要なのか?を考えてみましょう。

極端ですが、最終的に私たちは「生存のため」知覚認知をしています。

自然災害の時、周囲の状況を瞬時に判断すること、伝えることは生存のために必要です。
緊急時の時、どこに逃げればいいのかわからないのと、事前に逃げる場所が分かっていたり、周りの状況を見ながら臨機応変に逃げるかでは段違いです。

また、目の前に食べ物があったとしてもみだりに口に入れてしまうのは危険な行為。
一見大丈夫でも、臭いや触感などがおかしかったり、毒があるかもしれません。
実は腐っていて食中毒にあたる可能性だってあります。
そういった生存のための識別ができる・分かるだけでも生存率は変わります。

ちなみに日本で食中毒という概念ができた(世界で初めて食中毒菌が発見された)のは昭和20年代。
食品衛生法が制定されてからのことだそう。



また、戦の時には敵兵の数や方角、地理環境、味方側の状況はどうか情報収集をしたり、援軍を呼ぶタイミング、のろしを上げるタイミングも計らなくてはいけません。
あるいは、天候をうまくかぎ分けて山に登ったり、漁に出ても良いか判断するのも水星の役割。

識字(読み書き)に関しては誰しもができるわけではありませんでした。
キリスト教美術が発展したのは、読み書きができない庶民に聖書の内容をわかりやすく伝えるためです。
かの有名な芸術家・ミケランジェロが助手に渡したイラスト付きの買い物メモが残されていますが、それは文字を読めない助手でもわかるように買ってくるものをイラストにしたからだと伝えられています。

余談ですが、ロナルド・ドーアの著『学歴社会』では1870年ごろには日本の各年齢層の40~50%、女子の15%が日本語の読み書き算数を一応こなしていることが推測できると指摘されています。




◆2ハウス 貨幣制度以前の富の象徴は穀物



古典占星術では2ハウスは物質的に所有した才能、富、豊かさ、財産などを表します。

ルーラーは木星、ジョイはありません。

ルーラー木星:食べ物はあるほど良い



富や豊かさと聞いて真っ先に浮かぶのは「お金」ですよね。
けれど、いったん貨幣制度以前、素材そのものが価値をもっていた時代のことを考えてみましょう。

昔は金銭の価値より食物(特に穀物)の方が価値が高いとされていました。
なぜなら、貨幣は今の時代のように統一化されていることはまれで、新しく発行されるたびに質が落ちるという特徴があったからです。

悪銭という、銭貨には使用しない金属が混入した貨幣が流通したり、そういった質の悪いものを避ける撰銭(えりぜに)の風潮があったりと、今よりも貨幣の価値は乱高下しやすい物でした。
偽ものが市場に沢山出回ると払う方も受け取る側も信用を失うし、なにより食いっぱぐれてしまいます。


人は食べていかないと生きていけません。
どんなにお金があっても、それを食べ物と交換できなければ生きていけない生き物です。

また、食べ物の中で穀物は比較的長期保存が可能です。

日本でも戦国時代や江戸時代、年貢という制度で貨幣そのものではなく穀物や布製品などを納めていたことからもなんとなくその価値の高さが分かるのではないでしょうか。

特にコメは長期間の保存が可能で、新米より古米のほうが水を多く吸うため価値が高い、なんてこともあったとか。


食べ物は少なければ飢え死にしてしまいます。
生きていくためには食べ物が必要だし、あればあるほど、実り、増えていけばいくほど人々は豊かになっていきます。

だから拡大を表す木星が「所有」の2ハウスに入る、と考えると納得できるのではないでしょうか。





◆3ハウス 歴史上身内争いはよくあること



古典占星術では3ハウスは近隣者を表すハウス。
ルーラーは火星、ジョイは月です。

ルーラー火星:身内でも争いは起きる


火星は物事を切り開いたり、時には諍い、トラブルを表す天体です。

隣近所、親しい中、たとえ兄弟であってもいさかいは起こるもの。
兄弟喧嘩、親子喧嘩から起こった歴史上の出来事なんて古今東西たくさんあります。
壬申の乱だったり、保元の乱とか。
源頼朝と義経兄弟の対立も有名ですね。

また、現代においても近い関わりの人たちがストレスや衝突の原因になることはよくあることです。

火星の象徴するように、自発的に外の世界に飛び出したり、土地を切り開くことは危険と隣り合わせでもあります。
しかし、思い切って飛び出してみたことで思いがけない資源が見つかったり、新しい交流が生まれたり、結果として生活の質が上がることも。



ジョイ月:ルーティンの基礎


月は太陽とともに時間や日を知る標でした。
月の周期を暦にした太陰暦は占星術が行われていた古代メソポタミア文明や中国文明で生まれ、現在ではイスラーム暦で使われていますね。
日本でいう「旧暦」も太陰暦がベースになっています。


暦があることで、人々は天候に応じた農耕や収穫をすることができます。

そこから日々の営みや、五穀豊穣を祝う祭りや祈り、信仰などが生まれ、人々の交流も盛んに。

いけだ笑み先生の『ホラリー占星術』では、3ハウスは女神崇拝や自然崇拝やフェミニズム、民間療法やシャーマニズムとの関連が高く、一神教や国教を支配する9ハウスと対を成す、と記されています。





◆4ハウス 農耕社会にとって最も大事なものは「土地」



古典占星術では4ハウスは土地や父親を表します。
ルーラーは太陽、ジョイはありません。


ルーラー太陽:土地とアイデンティティ


人類は農耕を開始したことで定住化の社会が成立し、飛躍的に人口が増加しました。
農耕という行為を永続的に続けるためには

・その土地と農耕に適した作物を見つけて育てること
・畑にできるような肥沃な土地
・作物を育てるための水

などが必要です。

どれだけ土地が広くても、その土地がぺんぺん草も生えない不毛の土地であれば穀物は育たず、生きることも難しいでしょう。


農耕はある意味、自分たちが選んだ土地に投資し、誇りをかけて愛することがベースになっているともいえるかもしれません(ちょっと主語が壮大な気はします)

また、農耕社会により人類は定住生活を送ることができるようになります。
定住生活はやがて集落や祭祀、国家といった共同体と、それらを取りまとめる「王」の存在を産み出します。

共同体はやがて実家やふるさと、郷土と呼ばれ、その土地、共同体意識から愛国心といったアイデンティティも生まれます。
そういった場所が争いや災害で土地を奪われたり、立ち去らねばならなくなった時、人はアイデンティティを失うといっても過言ではありません。

土地は故郷、父祖伝来の地所、相続財産、家督継承にも関連しています。
家を継ぐということは「土地をや田畑を引きつぐ」ことでもありますね。
なぜ4ハウスと父親がリンクするかに関しては、聖書でも、日本書紀でも家父長制の文化だからかなあと思います。



◆5ハウス ハレとケのハレの方



古典占星術では5ハウスは幸運の場所とされています。
ルーラー、ジョイともに金星です。

ルーラー・ジョイ金星:ちょっと特別な日やお祝い



金星はうれしい!たのしい!大好き!な惑星。
ハレとケで言ったら圧倒的にハレの方です。

安定した生活のなかに、冠婚葬祭や年中行事といったちょっと特別なことがあるとやっぱりうれしいもの。

農耕社会により集落が生まれると、人の生死にかかわることはもちろん、田畑の収穫(五穀豊穣)や雨乞い、安産などの祈りや祭祀がはじまります。


祭祀はある意味ハレの場です。
人々の願いから祭りは生まれ、それはやがて人々の日常に楽しさやときめきを与えていきます。
例えば、神楽や散楽といった催し物も5ハウスに該当するのではないでしょうか。

あとは労働歌なども当てはまる気がします。
労働環境から生まれた音楽はブラックミュージックや沖縄の民謡、田楽などがありますね。

5ハウスは11ハウスの神の恵み(good deamon)からみてオポジションの位置にあります。
天の恵みが11ハウスだとしたら5ハウスは地上で起こる楽しいこと、あるいは神からのギフトを表しているのかもしれません。


◆6ハウス 知恵を働かせて実行することを要求される



古典占星術では6ハウスは悪運のハウスと呼ばれたり、労働を示すハウスです。
ルーラーは水星、ジョイは火星です。


ルーラー水星:厄介ごとを現実的に処理する


より豊かに、人間らしい生活がしたいと思ったとき。
自分の知恵では働かせたり、自分以外の力を借りねばならないことがあったりします。

やり方が間違っているのかもしれないし、自分がやるよりも最適なものがいるかもしれない。
奴隷、家畜に任せた方がずっと楽できるかもしれない。

生きていくうえで発生する厄介ごと、面倒ごとは色々あります。
でも、それをそのまま放置するのではなく、なにかしら現実的な方法で解決していく(せざるを得ない)のが6ハウスなのではと思います。

子供が生まれて、食い扶持が増えたけど労働力が足りない。
自分がせっせと田畑を耕すより、牛や馬に耕してもらったほうが早いかも?
羊飼いが一匹ずつ羊を追いかけるより、習性を活かして犬に追いかけてもらった方が効率がいいのでは?
田畑をより豊かにするためには土地そのものを改良するべきでは?
病気だけど働かなきゃ生きていけない。なら働く先を変えたほうがいいのか?

といったように、現実的な改良はないか、情報収集を迫られることがあります。
かつて奴隷貿易や人身売買といった人類にとっての負の歴史があったのも、開拓を進め、労働力を求めた結果でした。

ルーラーが水星なのは、物事を認知し、外の情報と今までの情報を比較し、行動に移せるかあれこれ考えることが必要なハウスだからなのでしょう。


ジョイ:火星 面倒ごとはさっさと処理する


歴史とはあまり関係ないかもしれませんが、面倒ごとは現代社会でもさっさと処理してしまった方が得策なのは現代でも同じ。
病気は長期化する前に原因を見つけて治療する(病のもとを断つ)ことが必要です。

ストレスや自分がイライラするものから離れることも大事。


また、昔は一度病気にかかってしまうと現代社会より命取りでした。
今より明確な治療法などないため、病気になれば隔離か祈るくらいしか対処法がありません。
また、昔は病気になれば年貢や課役が免除されるどころか、その分を他の人が補わなければならない、なんてこともありました。

重労働で病気になってしまうこともありますが、昔はそもそも重労働ができるというだけで(労働できる身体があるだけで)恵まれていたかもしれません。

6ハウスで火星がジョイになるのは、そういった面倒ごとや理不尽さを自ら行動して、面倒ごとを処理する(断つ)ことが必要だった時代の名残かなと感じます。




後半はまたのちほど。











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