落ちることのない恋について
みなさんは、愛のことをどのようにお考えですか?
とある広告が、こんなPRをしています。
「わが社は、あなたに<落ちる>ことのない<恋>を提供します。」
みなさんはこのPRについてどうお感じなりますか?
安心するでしょうか、利用してみたいと思うでしょうか。
私はそう思いません。
なぜなら、恋は「落ちる」ものであるからです。
自由な恋とは、落ちるものなのです。
街を歩いているときに、バナナの皮ですべって転び、そのときに助けて起こしてくれた異性こそが、あなたと生涯を共にする相手になるかもしれない。
そういった出来事は、誰も予見することはできません。
この「落ちる」という出来事を通じて、人は恋をするのです。
私にとって愛は、自由を象徴するものです。
時代遅れな感性かもしれませんが、愛とは基本的に、特定の他者に対して、自分の全てを捧げることなのです。
こうして人は、最も重要な自由選択のひとつである「性的なパートナーをとっかえひっかえする権利」を放棄します。
驚くべきことですが、私たちは徐々に、他者に自分の全てを捧げる自由を失いはじめています。
冒頭に記した広告は、そういった現実を表現しています。
安心したい、安全な恋がしたい。
あなたはそう思うかもしれません。
しかし、恋や、それを通じた愛は、危険なものなのです。
予想もできず、自分の全てを投げうってしまうような。
そのような危険な営みを通じて、僕たちは本当の自由を知るのです。
この文章はスラヴォイ・ジジェクという哲学者のがマッチングアプリについて語った動画の、自分なりの書き起こしです。最後の締めくくりは社会学者である宮台真司氏を意識してみました。
みなさんは、この文章を読んで、どう思われましたでしょうか。
少しでも新しい恋に踏み出す勇気を与えることができましたら、それ以上の喜びはありません。
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