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世界と戦うためのエゴ

今回の東京オリンピックで、女子バスケットや男子サッカーU24代表が銀メダルとベスト4というすばらしい結果を残しました。

しかしこのようなチーム競技では、日本はなかなか突き抜けて世界で勝つのが難しいことが多いです。女子サッカーが2011年ワールドカップで優勝した時は、澤選手が強烈なリーダーシップでチームを率いていました。

チーム競技では、日本はとかくチームワークで挑むことを強調しますが、世界に出ていけば、常勝軍団と言われる国にはチームとしての強さもありますが、強烈な個の強さも持ち合わせています。

そんなことを考えていると、NBAの歴史に残る強烈な個の強さを持つ選手の事を思い出しました。

ロサンゼルスレイカーズのレジェンドであるコービーブライアントは、NBAで5度の優勝を誇り、彼がつけていた背番号8と24は両方とも永久欠番となっています。

そんなチームのレジェンドである彼はとにかく自己主張が激しく、俺にボールをよこせ、俺が勝負を決めてやる、という選手でした。NBAで一試合の最多得点は100点を記録したチェンバレン選手ですが、コービーは歴代2位の一試合81得点を記録しています。チェンバレン選手は1962年に記録したものなので、リーグのレベル等を考えると、コービーの記録はそれに匹敵すると言えるレベルのものです。

しかし、強すぎる自己主張がときにチームのバランスを崩すこともありました。1999から2003年までコービーとシャキールオニールとの最強デュオを組んでいたレイカーズはリーグ3連覇を成し遂げました。2003~2004シーズンは、カールマローンとゲイリーペイトンというオールスター級の選手を加え、チームの強さはより強固なものとなり、4連覇は確実と言われていました。しかし、コービーの性的暴行疑惑など、プライベートでのあわただしさや、それぞれの選手が個を主張しすぎたことで、チームはファイナルまで進出するものの、デトロイトピストンズに敗れました。

その後、コービーの強すぎる自己主張、自分を中心にチームを構築してほしいという意見から、シャックやほかの選手は移籍していき、チームはばらばらになります。しかし彼はその圧倒的な個の強さで長い時間をかけてチームを立て直し、2008~2009、2009~2010シーズンで連覇を成し遂げます。

強すぎる自己主張もありますが、それは圧倒的な努力に裏打ちされたものでもあります。有名な話ですが、彼は朝の5時には起きてチーム練習の前に一人でシューティングをしていたそうです。また、人が嫌がるような地味なフィジカルトレーニングも誰よりも熱心にしていました。その努力に裏打ちされた自信が、俺をつかえ、俺を信じろという自己主張につながるのでしょう。

コービーとシャックの会話で、こんな会話があったそうです。

「おいコービー、TEAMに”I”はないんだぞ」

「わかってる、だけど”ME”はあるぜ○○野郎」

彼の強い自信と自分がチームを勝利に導くんだという強い意志が感じられるちょっとしたエピソードです。

そんな彼は2016年に現役を引退。後進の育成などに積極的にあたっていましたが、2020年1月26日ヘリコプターの墜落事故で突然帰らぬ人となってしまいました。

そのとき世界中のバスケットボールファンは悲しみにくれ、私もなんとも言えない喪失感に襲われてしまいました。それほど偉大な功績を遺した、すばらしいプレーヤーでした。

日本は強いチームワークで世界を相手に良い勝負をするものの重要な局面での勝負強さで相手に一歩負けてしまうことがあります。

ここまでの自己主張の強い選手だと、チームのバランスを崩してしまう危険性もあります。しかし、本気で頂点をねらうのであれば、これぐらい強烈なエゴと個性をもった選手を育てることも必要なのではないか、そんなことを考えた夏の日でした。

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