ごめんください、ごめんください。玄関からずっと奥まで風を通しているのに誰も出てこない。やっと人家にたどり着いたと思ったのに、庭の植木が風にそよぐ音だけが聞こえる。戸締りもせず呑気なものだ、と悪態をつくと、奥で何かがゴトリと動き、続いて玄関の戸が震えた。うなじから厭な汗が出てきた。
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