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干しいもが知りたい エピソード1

この焦燥感、なんなのですか。

ええ歳をこいて右往左往しておる。

知りたいことは明らかなのです。
その知りたいことを求めて右往左往しておるのです。
どこへいけば知りたいことにたどり着けるのでございましょうか。

わがいもは
みやこのうしとら
しかぞすむ
そをほしいもと
ひとはいふなり  

この歌は、みなさまご存知の通り喜撰法師の本歌取り、
というか完全にパクリであるね。
曰く

「わたしの手元にあるこの芋は
 みやこ、今でいう東京大都会からみて、
 いやいや都は京都やろ、とかそういう正論もあるのだけれどね、
 ここはひとつ話の都合上、大目に見ていただきましてですね、
 ええ、ご不満は重々承知しておりますけれども、
 そのTOKYOからみて、
 グローバル社会に冠たるキャピタルTOKYOからみて!(しつこい)、
 丑寅(北東)の方向が
 わたしの手元にある芋の故郷であって、
 常陸というところにあたるのです。
 そこにはちょっと離れてるけど鹿島神宮というのがあってやね、
 神からの御使いということで鹿さんがいるのさ。
 そういう土地、いや、ちょっと遠いけどね、
 その、鹿島神宮からちょっとまだ離れているのだけれど、
 まあそのへんからやってきたこの芋なのだ、ということなのよ。
 この芋はね、これはいわゆる
 さつまいもを加工した魅力的なおやつであってですよ、
 まあ世間でいうところの"ほしいも"というやつやね。
 そういうことやね。」

つまり、ここからわかるのは、ほしいものおいしさは民間口伝によって今に生きている、という事実であった。
・・・完全に嘘やね。しれっと大嘘やね。自分で勝手なことを言うてるだけやないか。百人一首をいったい何やと思うておるのだ。

じりじりするなら

焼くや藻塩の
身も焦がれつつ

とかいうのんもあるがな、というツッコミは至極当然なのですけれども、しかしそれでは干しいもにならないのである。

………どうでもええがな。
はよ先へ進めなはれ。

いや、どうでもよくはないのである。
これは、この気持ちは、何だ。焼くやおいもの 身も焦がれつつ。

恋ではないか。干しいもへの。


そして、
本題にはまだ入ってないのであった。

もったいぶってるわけではないのです。
しかし一方で
わたしの思うところにたどり着いていないこともまた
事実なのです。


恋は盲目とはよく言ったもので
しかし盲目であれば目の前を情報が通り過ぎても
ぼさっとしてる以外のことができないのであって
盲目であるわけにはいかないのである。

あれですよ、刮目せよ!とかいうやつ。

結局、干しいもに関して
わたしの知りたい情報とはなんなのか。
大きくはふたつである。

ひとつめには
 原料いもの種類の違いによって、どのように香りや食味が違うのか
であって
ふたつめには
 原料いもから干しいもを作るにあたって
 そのもっとも大切なプロセスはなんなのか
である。

原料が違えば味が違うのは当然である。
ワインだって、ぶどうの品種によって個性が違う。
普段食べているお米だって、品種で香りや味が違う。
干しいもだって同じである。
品種によって味が違うのである。

であれば
自分好みのものを見つけるにあたって、ある程度の科学的根拠をもったほうがよいのではなかろうか。そうすれば逆に、はじめて食べる品種でも、どういう個性のいもなのかがある程度把握できるかもしれないではないか。

そう思ったのであった。


というサイトもあって、個人の好みとはいえ参考になるものである。

そして
わたしが知りたいのは
いもの品種による食味や香りの違いは、
いものどういう特性に由来するのか
、である。
わたしはそれが知りたいのである。

さらに
製造プロセスにおいて何がもっとも大切なのか
これは、甘みを増幅させるための「蒸し」の工程にあるに違いない、と思っているのであって、そうであれば、その工程でもっとも原料の個性を引き出してやるにはいったいどうすればよいのか、それがわかれば自作自演で干しいも作ったる、やったろやないか。

そう思ったのであった。


そうしてまずは
素人なりに書籍にあたったのである。
農業の分野の書籍では
・種苗として優れている
であるとか
・土の作り方
・季節による注意
など、
書いてあることは全くそのとおりであってね、
しかし
わたしが知りたいことはそういうところではない。

役に立ったのは
原料いもについての記載であって
そもそもさつまいもには大きく2種あるようで
食用とするものがひとつ、
もうひとつはデンプン加工用ということであった。
わたし如きの素人、そのようなことさえ知らなかったのである。

デンプン加工用のものは、
収穫後、貯蔵している間に起こるデンプンの糖化が進行しづらい品種であって、昔から干しいもとして親しまれている我らがタマユタカもここにカテゴライズされていたのである。玉のようなころころとした見た目であって、作付面積あたりの収量が多いことからこのような名前となったのね、きっと。

しかし、品種の特性として比較的糖化しづらいものを干しいもとして商品化するのは不思議なのであって、なぜ不思議なのかといえば、すでに人の需要によって改良された、貯蔵中に糖化しやすい品種のありがたみを享受している立場に立って見ているからであった。

農業関係の書籍にいくつかあたってわかったのはそういうことであった。
しかしまだ、タマユタカ以外の品種がどういうものなのかが解っていないのである。これではいかん。
わたしの手の届くところにあった農業関連の書籍は2010年以前に編集されたものばかりで、最近の情報については手がかりがないのであった。

そうして
街に出ていろいろと本を探しているうちに
「ほしいも百年百話」
という茨城新聞社の新書サイズの本を見つけた。

何やこれ?
中古でべらぼうな値段になっとるな。
モラルっちゅーもんがあるやろがぇ。
こっちで買うとお安いですよ。

というように、
ネットでも見つけることができるけれども、この本の記載でわたしがポイントだと思ったことは「ほしいも学校」というサイトに公開されていてそれ以上の情報は得られなかった。

しかしこの本は、さつまいもの源流から干しいもの未来までのダイナミズムが感じられる面白いものであるよ。数年前に、その名も「ほしいも学校」という百科事典のような本を渋谷でみつけたのだけれどそれを購入して持って帰ると肩の骨が外れてしまうので(嘘)、諦めたのを思い出したのであった。
後悔先に立たず、とはよく言ったものである。


情報に飢えた私は
あまり期待せずに製菓関連の本をあたったものの
やはり「干しいも」の作り方なんぞ書いているわけもなく
では干しいもは日本料理なのかというと
そこに書かれてあるのは
吸い物の出汁がどうとか、魚の扱いはああせいこうせいとか
・・・いや、ちゃうねん。ちがうのですよ。
わたしが知りたいのは、
干しいもをどのようにおいしく作るのか、
ここで知りたいのはその1点なのです。


書籍にまとまっているかと思っていたものの
予想に反してわたしの思いつく範囲に
知りたい情報を網羅しているものはなかったのであった。


いや、待ちなはれ。


そういえば書籍といっても
食品化学に関するものにはまだあたっていない。
こうなったら本気である。

そう、明日から本気出す。

いまの時代、インターネットがあるではないか。あるやんけ。

いくつかの書籍にあたったことで干しいもに関するキーワードを知ったわたしは、農業や食品化学に関する学術論文に干しいも研究があるのではないかと思い足を踏み入れたのであった。
・・・もはや干しいもでずぶずぶである。

三ツ星生産者から買い求めた紅はるかの平干しをかじりながら、
わたしはいくつかの論文にたどり着いたのである


まず、さつまいもに関する研究が一定数なされている事実を初めて知ったのである。そしてなんと、ほしいもに関する研究もなされているのであった。

調べていくうちに当初は想像もしていなかったことがいろいろとわかってきた。ちょっとした驚きの連続ですよ。

手元にある20報くらいに目を通した段階でわたしなりにまとめよう。

専門外の分野に足を踏み入れて、世に出た研究成果の一端をなぞっただけではあるものの、素人視点から見ただけでも、十分面白いのであった。


続く。


なぜ続くかといえば、こちらには
「駄文でも短文でも悪ふざけでも、とにかく気軽に投稿しましょう。」
とあるからである。たとえ駄文でも、悪ふざけと思われようとも投稿するのである。

しかし、実のところわたしは大真面目なのである。

大真面目というのはときに、
傍から見て滑稽に映るものなのであった。

知らんけど。