文章の「声」を読む
こういう講座を家にいながらにして見られるのはほんとにありがたい。しかも無料って。
文章から聞こえてくる声。作用あるいは効果とも言い換えられる。文章はなぜその体裁をとるのか。
その「なぜ」という問いを立てなくても、ひとはたとえば読書をするにあたって字面通りの意味にとどまらず、その背景にあるものや単語のつらなりによって構築される演出を受け取り、自分の意識や記憶を刺激して、それを読んでいる文章へフィードバックする。その円環のような意識運動(=サイクル)を積み重ねることで、読書体験とする。
そこでいちど立ち止まって、文章に用いられている語句の特徴をひろいあげていくことで、その文章の演出手法を学んだり、読むという時間によって発生する書き手と読み手との関係性に気づいたりする。
こういう試行錯誤の積み重ねが、言葉に対する感覚を少しずつ磨いていくのだろう。試行錯誤とは正解のないところで自分の感覚を頼りに行きつ戻りつすることである。これは日々だれもが人間関係の構築や自分と折り合いをつけるためにやっている心理・思考活動であって、それを文章の解釈にあてはめるだけのことである。