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吉野家によって鬼滅女子がシャブ漬けになった話

昨今「生娘シャブ漬け戦略」というワードが巷を騒がせています。筆者は倫理面に関しては寛容なサイコパスなので、話題となっている表現の方法が良くないという話は置いといて、マーケティングの戦略的にかなり良くできた戦略だなあと思ったので、記事にしてみました。


事の発端について


この話がなされたのは早稲田大学でのマーケティング講義で、吉野家の伊東正明常務が、同社のマーケティング戦略を「生娘シャブ漬け戦略」と表現したことで話題になりました。この講義の受講料は38万5000円、カリキュラムではダイキンやファミリーマートの重役が出ているなど、大学としても力を入れた講義だったことが伺えます。これだけの受講料も取っているのだから、大学生だけでなく、企業の中でもマーケティングの戦略を立てる側のお偉いさんも多く、中年の男性優位の空気感ででた発言だったんじゃないかと思います。

そして不幸にも一回目の講義でこのような発言が飛び出してしまったわけですが、意気揚々と講義をセッティングしたにも関わらず、悪い意味での注目を集めてしまった早稲田大学の職員には同情をします。


さて、倫理的な事はさておき、「生娘シャブ漬け」という言葉には短いながらもこの戦略の要点が良く詰まっているフレーズだと思います。まずは吉野家がこの戦略を実行するに当たった背景から考えていきたいと思います。ちなみに筆者はこの講義を聞いていたわけではなく、あくまでも個人の解釈なのであしからず。


背景

元々牛丼と言えば吉野家が業界一位の店舗数で、外食で牛丼と言えば、吉野家以外ありえませんでした。2003年アメリカで狂牛病の流行が起き、牛肉の輸入禁止がニュースで日夜取り上げられている時、取り上げられるのは吉野家ばかりですき屋の話は全く出てこなかったのを覚えています。
そのぐらいに吉野家のブランドは強く、ハンバーガーを食べたいとなるとまずマクドナルドをイメージするのと同様に、この頃の牛丼は吉野家以外ありえませんでした。

それが、2010年頃になると、すき家が業界1位になると同時に、松屋やなか卵等、チェーン店が大頭しはじめ、牛丼を食べたいとなっても、じゃあ吉野家に行こうと真っ先に思い浮かべるような強いブランドではなくなっていきます。停滞の理由としてはいくつも考えられますが、「吉野家の経営学」で挙げられている課題点を引き合いに出しますと

  1. 男性、特にサラリーマンの利用が多く、女性やファミリーでの利用が少ない事、女性にとって吉野家は入りにくい事

  2. 安いというイメージが強く、お金がない人がいくイメージ

の2点が挙げられます。そしてマーケティングの力を用いて課題を解決するために戦略の立案がなされていきます。

余談ですが、吉野家停滞の理由として、よくすき家が多商品を提供したにも関わらず、吉野家は牛丼一種類の提供にこだわった事が挙げられますが、2016年出版の「吉野家の経営学」によると代表は多商品化には懐疑的で多商品にコストと時間を割くよりもなによりも牛丼の質を高めるべきと述べています。
(流石に2022年の今では吉野家もカレーや唐揚げ定食等の多商品を提供していますが)



なぜ生娘がターゲットなのか

マーケティング戦略を策定するに当たり、ターゲットを想定するのは必須でです。ではなぜ、吉野家は生娘をターゲットとしたのでしょうか。その理由を考えていきます。
生娘という言葉には、女性、年齢が若い、世間をよく知らないという意味合いが込められています。つまり生娘を対象とすると下記のようなメリットがあります。

性別:女性
ー既に男性は吉野家の顧客であるため、新しく遡求する意味合いは薄い。それよりも今まで利用が少なかった女性を対象にするのが効果的。
年齢:16~20歳
ー価格の安い吉野家は、お金のない大学生、若者と相性が良い
世間を知らない
ー価値観が形成されておらず、吉野家に対して新しいイメージを持ちやすい
ー高いレストランに行って事がなく、美味しい料理を知らない
ーおしゃれなカフェには行ったことが少なく、内装がおしゃれだとかはまだ気にしない 

上記のような生娘をターゲットにすれば、吉野家の問題点であった、女性に弱い、値段が安く、ダサいというイメージを払しょくする事ができます。そのため、様々な事にリソースを割きたい中で、真っ先にターゲットに選ぶべきは生娘がよいというのは、納得のいく結論です。

それを意図してか、吉野家は鬼滅の刃や呪術廻戦、菅田将暉等若い女性に人気のあるコンテンツとコラボをしたり、ライザップとコラボしてヘルシーな商品を開発する事、黒い吉野家といったおしゃれな雰囲気を持った店舗をオープンする等様々な施策を行っています。


シャブ漬けにする事の合理性

シャブ漬けという表現は要するに依存するという意味合いですね。
医学的には麻薬だけでなく、様々なものに依存性があります。
・アルコール
・カフェイン
・喫煙
・摂食障害
 砂糖依存、ジャンクフード、動物性脂肪
・ギャンブル
・ネット、スマホ
・ゲーム

麻薬には劣りますが、ジャンクフードである牛丼にも依存性があります。そのため消費者を依存させ、定期的に吉野家に来させるようにする事が、店として重要な事となります。では依存させるためにはどうすればいいのか。それは至って単純でとにかく食べさせる機会を増やす事が重要になります。

戦術としては、有名コンテンツとコラボしてグッズを集めさせる方法があります。
吉野家は今まで、ポケモン、鬼滅の刃、呪術回線、菅田将暉、ハローキティ等とコラボしてきました。一回のコラボでは何品ものグッズがあり、しかもそれらは抽選です。またどんぶりをもらうためにはポイントを貯めなければなりません。全てをグッズの揃えた頃には牛丼中毒になっている事は間違いないでしょう。この戦略によって全国のウツドンが欲しい子供や丹次郎が好きな女性が牛丼中毒になっていった事でしょう。
(なぜ数あるポケモンの中で知名度の低いウツドンがでたのかコレガワカラナイ)

ところで、このような消費者を中毒症にさせる戦略は古今東西でよく行われています。

レッドブルがレッドブルガールと共にレッドブルを配るのも消費者をカフェイン中毒にする目的でしょう。
日本マクドナルドの創設者である、藤田田氏は「人間は12歳までに食べてきたものを一生食べ続ける」と語り、味の刷り込みをすべく、12歳以下の子供たちをターゲットにハンバーガーを売りまくってきたそうです。

食べ物の依存症だけでなく、実際に商品に麻薬を入れちゃった例もあります。コカ・コーラっていう会社なんですけど…

話を元に戻すと、とにかく、吉野家のシャブ漬け戦略は比較的どの会社でも、同じような意図でこの戦略を取っており、名前はどうであれ社会的には許された戦略だという事です。またこの戦略をとるに当たって、マクドナルドの人が言っているように食べ物の嗜好品が定まってしまう前、なるべく若いうちに行う事が必要で、若い女性をターゲットにする事は戦略的に正しいという事が言えます。


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