学習出版:執筆の7ステップ (3)概念
教育現場での学生出版として、私のゼミではこれまで3冊26人による本を出しました。TOEICスコアアップ方法がテーマです。3年の実践でわかってきたコツ、特に文章に個性や強みを出すための7つのステップをまとめています。
今回は3番目のステップです。簡潔に語ることを目指します。ただわかりやすい言葉を使って短文を使えばいいわけではありません。短文を心がける人は、ただ単に長いものを書けないだけではないですか? 本当に読者のために短くしようとしているのではなく。ここでいう簡潔さは見た目の分量ではなくわかりやすさです。人はあなたに興味を持つほど暇じゃありません。皆、忙しいのです。いちいち無名なあなたの文章にどっぷり浸っていられません。だって村上春樹の小説に時間をかけずにあなたの文章を読んでられますか? 感じ悪くてすみません、でも、私でなくて読者が感じ悪いのです。
3.1 二行が全て
考えるコツは一つだけ。私たちが取り組んだのは、自分の強みを2行で言ってみるということです。前回のステップでオリジナルコンテンツが見つかったあと、それを2行以内で文にすることを考えてみます。その2行をメインアイディアと言います。
(ちょっと脱線:英語の文章にはmain ideaがあります。この点に普段あまり馴染みのない方、日本語と英語の文章の違いは、main ideaのルールがあるかないか、です。アルファベットか漢字か以上にとてつもなく大きな、厳格なルールです。英語では文章の冒頭(通常)、その文章で言いたいことを1文だけ(2つ以上の文じゃ絶対にダメ)で言い切ることが絶対ルールです。これがない日本語文章を英語に翻訳すると、ドラマティックにルール違反した完全な駄作文章に認定されます。絶対です)
メインアイディアで重要なことは三つです。
3.2 単位を無視したら小学生の算数以下
言いたいことが溢れてきたら危険です。まず黙ってください。指導教官としてはあなたの文章を残酷に切り刻むことになってしまいます。
「単位」を考えてください。「文章単位」、「章単位」、「段落単位」ということです。文章単位を(文章全体を)総括する2行がメインアイディアです。さらに、章単位でも総括するセンテンス、段落でも総括するセンテンスが必要です。
これを言い換えておきます。総括するポイントのない段落は、存在価値がない。そんな段落を作ってはいけません。
3.3 サポート情報
では2行で言い切った後は何を書くのか?????と心配になる学生もいました。
この答えは、「2行についての理由や事例」です。これをサポートと言います。大事なのは、理由や事例は事実を言うこと。事実とは誰が見ても同じことです。「たくさん」と言うのでは人によって感覚が違いますが、数字を出せば誰が見ても同じです。「カラフルなペン」と言うよりは「何色が何本」のように具体的な説明をしておきます。どれも事実、誰が見ても同じことを積み上げて、メインの2行が本当に説得力のあるものにします。
この点に関しては、ステップ「4」の記事で取り上げる予定です。あなたが書くのは、ポイントとその理由、事例だけで、そのどれでもないことは基本、削除対象です。
3.4 タイトルは要約じゃなくて!
メインアイディアや各章や段落でポイントを提示することを言いました。それは、本のタイトルや章の見出しにつながっていきます。
見出しの付け方はさまざまな手法が書籍として出回っていますが、私たちが注意しているのは、単純です。これを言わないと、こうする学生がとても多いのです。
単純ルールは「見出しはトピックではない」ということです。つまり、「ーーーについて」的な発想です。例えば、「私のスコアアップ法」というタイトルや、「二年間の学習記録」という見出しは、文章の中身を伝えるものではなくトピックです。それだけではどんなメインアイディアか、伝えられません。
目指すのは、メインアイディアを示唆すること。下の画像は、章ごとの見出し(オレンジ文字)事例とそこで述べられるメインアイディア。3つの事例です。
注意! 見出しで興味を煽るだけでは無責任だし、自分でハードルをあげることになるので、興味を持たせつつも、メインアイディアにしっかり直結するようなタイトルを心がけています。
3.4 素晴らしいセンテンスが無視されるかも!
文章を書き出す時は、メインアイディアを上手に言い切れないことも多々あります。普通です。「だいたいこんな感じ」ではじめて良いです。まずは文章を書いてしまっても構いません。文章を最後まで書いて締めの結論っぽいところになってようやく、自分でもちゃんと結論っぽいことを書けることが多々あります。
文章の締めになっていい結論のセンテンスができたら、それは冒頭に持って来られないか、考えてみます。
それがメインアイディア。タイトルに使えないか、考えてみます。
いきなり冒頭で結論を出すのはもったいなく感じるかもしれません。が、素晴らしいセンテンスが文章の最後に待っていることなど、読者は知りませんし、最後まで待つつもりもありません。冒頭で出し切ってください。
これまでの出版用原稿で、最後の3行を冒頭に移植する、というのは何度やったことか・・・
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