『ポケットモンスター』発祥の地、町田市~「はじまりの町」へ~
「ポケットモンスター、ちぢめてポケモン。この星の不思議な不思議な生き物。」
アニメ『ポケットモンスター』(以下『アニポケ』)の劇場版、オーキド博士(CV:石塚運昇氏)のナレーションより
田尻智さんの出身、町田市
1996年に発売されたゲームボーイソフト『ポケットモンスター 赤・緑』(以下『赤・緑』)の発売から約28年が経ちました。最初ポケモンの数が全部で151匹だったのが、今やその数は、1000匹を超えます。
そのゲーム『ポケットモンスター』(以下『ポケモン』)をつくった生みの親がゲームクリエイターの田尻智さん。
幼少期を田んぼや森が多く残っていた新興住宅地の町田市で過ごし、昆虫やカエル、ザリガニ、オタマジャクシなどを採取して、観察・研究をしていた思い出からポケモンのアイディアが生まれたと言われています。
『ポケモン』を制作しているゲーム会社・ゲームフリーク代表取締役社長で、『アニポケ』の主人公・サトシの名前の由来でもあります。
今回町田市に行き、町田市役所広報課に取材して「ポケふた」(ポケモンがデザインされたマンホール蓋)をはじめとする、市内で行っている『ポケモン』についての取り組みを中心にお聞きしました。
その『ポケモン』の発祥の地と言われる町田市では、(株)ポケモンが行っていた、全国への来訪促進を目的として「ポケふた」を設置する企画に、シティプロモーションの一環として設置を希望したところ、町田市への「ポケふた」6枚の寄贈と設置が実現しました。「ポケふた」の設置場所は、安全面やいつでも来訪可能などの要件を考慮し、芹ヶ谷公園に設置が決まりました。「ポケふた」は地域の魅力として、芹ヶ谷公園を起点とした中心市街地の回遊性を高めることなどに活用されています。
市としては、引き続き「ポケふた」を地域の魅力として、芹ヶ谷公園を起点とした中心市街地の回遊性を高めること等に活用していきたいと考えています。
その「ポケふた」と「ポケふた」が設置されている「町田市の魅力」を紹介するオンライン番組を、2021年10月17日にYouTubeでライブ配信しました。
コロナ禍でも楽しめる番組として企画し、ゲストには、タレントのつるの剛士さんとイラストレーターのキン・シオタニさんが招かれました。
番組内では、キンさんが実際に町田市に赴き、「ポケふた」がある芹ヶ谷公園、薬師池公園、町田リス園など、市内のスポットを1つずつ紹介し、つるのさんと番組を盛り上げました。
つるのさんは『ポケットモンスター ベストウイッシュ』でED「ポケモン言えるかな?BW」を歌い、2011年に公開された『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ ビクティニと黒き英雄 ゼクロム・白き英雄 レシラム』に出演したこともあり、『ポケモン』との縁が深いです。
また、2023年8月8日~14日に横浜で行われたポケモンバトルの世界大会「ポケモンワールド チャンピオンシップス2023」の開催に合わせ、8月8日放送のテレビ神奈川「猫のひたいほどワイド」とタイアップし、芹ヶ谷公園の「ポケふた」を紹介する番組が放送されました。これを機会に町田市の「ポケふた」の認知度は、より広がりました。
芹ヶ谷公園
町田駅の中央口から歩いて約10分ほど移動したところに、芹ヶ谷公園があります。豊かな緑と水の中に彫刻が点在していて池や広場、ターザンロープや各種遊具のある冒険広場、四季を通じて色とりどりの花が咲く花壇などもある大きな公園です。
実際に来てみて、『赤・緑』の序盤の舞台・トキワのもりに近い雰囲気を感じました。
(以下の町田市の芹ヶ谷公園や町並み、恩田川の写真は2024年1月時に撮ったもの)
以下、芹ヶ谷公園のマップ(町田市のHPより)
この公園内にフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ、ニョロモ、ポッポ&コラッタ、ナゾノクサ&ビードル&キャタピーの合計6枚の「ポケふた」があります。
以下、芹ヶ谷公園内の「ポケふた」
ゲームにおけるこれらのポケモンのデザインは、イラストレーターのにしだあつこさん、杉森建さんらが手掛けました。
にしださんは、元ゲームフリーク所属でピカチュウ、フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメをはじめとする人気のポケモンを数多く世に生み出しました。ピカチュウの名付け親でもあります。
杉森さんは、学生の頃から町田市で田尻さんと交友を深め、親友の間柄です。ゲーム会社・ゲームフリークの前身となり、多くのゲームの攻略法をまとめた同人誌『ゲームフリーク』を学生の時から田尻さんと一緒に制作していました。杉森さんは、自身を含む複数のスタッフがデザインしたポケモンなどのキャラクターを最終的に、公式イラストとしてまとめ上げています。
町田市の町並みと自然環境
芹ヶ谷公園から徒歩10分ほど移動した所に、町田市の住宅地が広がっていて田尻さんは、この近くの学校に通っていたと言われています。
田舎の町並みの雰囲気は、まさに『赤・緑』の主人公とサトシの出身であるマサラタウンを彷彿させました。
ここの住宅地付近から、さらにバスで約30分ほど移動した所に恩田川という町田市と横浜市を流れる一級河川の川があります。
田尻さんは少年時代、この近くを過ごしたと言われ、生物の採取などもここでしていたのかもしれません。
田尻さんが中学生になった頃(1978年頃)は、この近くの小川や田んぼ、雑木林も開発が進んで住宅地になり、近所の釣り堀もゲームセンターになりました。そういったゲームセンターに設置され、当時全国で大ブームを巻き起こしたビデオゲーム『スペースインベーダー』に夢中になり、ゲームに興味を持つ大きなきっかけになりました。
また、町田市は現在、恩田川を含む計 5 つの川が流れる豊かな自然環境を有していますが、自然的土地面積の割合は田尻さんが幼少期の頃、町田市を過ごしていた 1967 年度の 65.9%から 2020 年度には 20.5%まで減少しています。
ただ豊かな里山環境があり、 2013 年度に実施した町田市生物調査では、オオタカをはじめとする貴重な生きものや里山環境内に生息する動植物が確認されました。
町田市内の公園緑地は全部で800箇所あり、現在では下水整備がされ、川の水質も以前より良くなっています。
なので、田尻さんが幼少期の頃過ごしていた当時と比べて自然的土地面積自体は減っていますが、実際に来てみると芹ヶ谷公園や恩田川のような豊かな自然環境は、町田市に未だに残っている印象でした。
2021年7月15日~28日の間には、ポケモンに似ている町田市の「野生の生きもの」を募集した生きもの発見レポートを行い、11種類のポケモンに似ているという投稿が集まりました。レポートは、NPO法人や森林インストラクターといった専門家の方々も作成に関わりました。
例:ヒガシ二ホントカゲ⇔ヒトカゲ
ミシピッピアカミミガメ⇔ゼニガメ
https://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/city_promotion/pokemonmanhole.files/ikimono.pdf
この発見レポートでは、市民通報アプリ・「まちピカ町田くん」を通して投稿者が町田市で発見した野生の生き物をアプリ内で投稿し、専門家の方がどの生き物か回答します。その上で、投稿者はその生き物がどのポケモンと似ているか選定しました。
「はじまりの町」から始まった『ポケモン』
ここまで田尻さんが過ごした町田市における「ポケふた」をはじめとした『ポケモン』の取り組みや町並み、環境などについて紹介してきました。
『ポケモン』は、2016年からアプリのゲーム『ポケモンGO』が世界中で展開され、大ヒットを記録し、『ポケモン』関連のゲームソフトの累計出荷本数は現在、4億8000万本以上にもなりました。『ポケモン』は、現在では世界をまたたぐ共通言語の1つになっていると言っても過言ではありません。
『ポケモン』はそのような世界全体で広がっているコンテンツであり、不登校や引きこもりなど、生きづらさを抱えている人にとって心の支えになっているのも多いでしょう。そういった力を持つ『ポケモン』は、幼少期の頃、田尻さんが町田市で過ごし、行っていた生物採取の経験、中学生以降のゲームに夢中になった経験の積み重ねの1つ1つが結果的に今にも結びついて、多くの人の心の支えになるまで発展していったのだと言えます。
その『ポケモン』の「はじまりの町」と言える町田市の魅力が広がっていくこと、そして「はじまりの町」から始まった『ポケモン』が世界中のより多くの人の心の支えになって、これからの未来を照らしていくことを僕は願っています。
最後に、今回の取材と写真提供などにご協力いただいた町田市役所の広報課の皆様に深く感謝を申し上げます。
ありがとうございました!
取材協力、写真提供:町田市役所広報課
参考資料
書籍:『ポケモンをつくった男 田尻智』、『田尻智 ポケモンを創った男』
町田市HP:「ポケふた」のあるまち。まちだ、 芹ヶ谷公園の基本情報、オンライン番組「"ポケふた"のあるまち。まちだってどんなまちだ?」、第3次町田市環境マスタープラン、公益的活動報告(学校・事業者)
株式会社ポケモンHP:数字でみるポケモン、ピカチュウ誕生秘話
相模原町田経済新聞:「ポケモン発祥」の町田でも「ポケモンGO」人気
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