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みこし・マクリスティ

偶発的か、戦略的か、知らん。
とにかくみこしが乱立している。
いわゆるみこしまくり状態だ。
俺は、ふはは、と笑った。
怖かったが、同時に嬉しかった。
みこしまくりに遭遇できるなんて。

巻き込まれれば死ぬかも知れない。
何人か、歴史の中でみこしまくりは発生し、犠牲者を出している。
天災に近い。
なにしろどこでいつ起こるのかわからない。

異空間に続く隙間ができて、そこからみこしがやってくる。
当然、担いでいる若い衆と共に。
彼らは皆熱く、威勢の良い声で、わっしょい、わっしょい、と叫んでいる。
跳ねる汗を浴びてしまえば、取り込まれる。
だから避けなければならないのだが、みこしまくり、である。
そこいら中にみこしが踊っている。
若い衆は競い合うように自分たちのみこしを担いで、他のみこしを威嚇する。
ぶつかる。
火花が飛び散る。

その中で汗を浴び、俺は服を破り捨てた。
生まれたままの姿でみこしまくりに混ざる。
意識は薄らいでいく。
みこしまくりに遭遇して生還したものの証言を思い出す。
あるみこしをかついでいる時に、声が聞こえたんだ。
低く、小さな声だった。
注意していないと気づかないような声。
その声は言う。

うさぎを持つときは耳を持て、かめを持つときは首を持て

俺にも聞こえた、確かにそれはうっすらとメロディに乗せて歌っているようだった。
意味はよくわからない、けれどそれを俺も誦じた。
すると意識がはっきりと戻ってきた気がした。
思い出せ、これはみこしまくりである。
気を抜いたら最後、取り込まれて意識もなくなり、あの若い衆に混ざることになる。
終わりのない労働への片道切符だ。

もう一度、声に合わせてそのメロディを俺は誦じた。

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