映画「こちら、あみこ」
今村夏子原作の映画「こちら、あみこ」を見た。
あみこは、字が読めない。
人の気持ちも読めない。
(と、家族やみんなから思われている)
あみこのお父さん哲郎(井浦新)は再婚して、新しいお母さん(尾野真千子)が出来たが、自宅で習字教室を開いて、あみこには、あまり、かまってくれない。
あみこも習いたいと習字教室をのぞくと、
継母から「あみこさんは学校に行ってないからダメ!」と、ピシッと言われてしまう。
中学校に上がると、あみこはすぐ女子トイレに呼び出されてイジメられるが、あみこに、
不良のお兄ちゃんがいると知るや否や、
「ゴメン、田中先輩の妹さんだって知らんかったんよ」とみんなはバタバタと逃げだす。
あみこには、好きな人がいた。
同じクラスの、ノリくんだ。
教室の後ろには、みんなの習字が貼ってあるが、あみこは、字が読めないので、隣りの男の子に、いつも聞く。
「ねえ、ノリくんのは、どれ?」
「コレじゃ。おまえは何度教えてもすぐに忘れてしまうのう」と隣りの子に呆れられる。
あみこは、基本、いつも一人だった。
でも、時々、音楽教室からベートーヴェンやモーツァルトやシューベルトが遊びに来てくれる。(イマジナリーフレンド)
継母のさゆりも、機嫌の良い時は、あみこと遊んでくれたりもした。機嫌のいい時は、お母さんのアゴの下のホクロはとても小さくなり、機嫌の悪い時は、とても大きくなった。
あみこにはどんな時に、お母さんが優しくて、どんな時に機嫌が悪くなるのか、わからなかった。
やがて、さゆりは妊娠して、あみこは弟か妹が出来ると楽しみにしていたのだが、赤ちゃんは流産になってしまう。
そこから、あみこの兄はさらに不良になり、
家に帰らなくなる。
継母は鬱になりかけていたが、あみこが、
お母さんを慰めようとしたある行為が彼女をさらに追いつめてしまう。
やるせないのは、原作でもそうだったが、
全編に、そこはかとなく、(あみこが悪い)
という空気が漂っていることだ。
そして、みんなはその暗黙の了解の下で、
あみこを(エアーで)、サンドバッグ代わりに殴っていたのではないか。
あみこはツラくても、
泣くことすらしないから。
全編にわたって、ノリくんを好きと言った以外はあみこの気持ちは不思議なくらい、どこにも描かれていない。
唯一、あみこが自分の意思を示したのは、
継母の、さゆりが入院した時に、
「あみこも、入院したい」とお父さんに言ったことくらいだろうか。
私は、このひと言に、あみこの複雑な心が、ギュッと込められている気がした。
あみこの心情は殆ど描かれていない。
見る者に委ねる、ということだろうか?
映画は、ほぼ原作に忠実だが、あみこのイマジナリーフレンドが、普通の女の子や男の子でなく、ベートーヴェンやモーツァルトを登場させるところが面白い。
何も解決しないまま、物語は終わるけれど、
あみこが明け方、ひとりで海へ行って、
知らない人に向かって「大丈夫じゃ!」
と叫ぶ笑顔に、あみこの光りを感じた。
あみこは幼いけれど、誰も恨まない。
誰かのせいにも、しない。
周りから見れば何も出来ないように見えて、
いちばん生きてゆく力を持っているのは、
あみこなのではないか。
結局、自分の世界を持っている者が、いちばん強いのかもしれない。周りからは、あみこの世界が、きっと見えないのだ。
私も、誰にも侵されない、強い世界を持ってゆきたい。
イマジナリーフレンドは、いないけれど😅
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