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【プロパテクノ】iBuyerという新しい不動産売買。誰でも気軽に住み替えできる世界へ。最新決算資料と成長可能性資料を読む。

※ 資料を読んで私なりに理解したことをまとめた記事であり、内容の正確性については保証できません。記事執筆時点で3700株保有で、贔屓目が入っている可能性があります。一次資料を置いておきますので、鵜呑みにせずに必ずこちらを確認してください。
成長可能性資料
公式HP
23年11期1Q決算説明資料

まとめ先見せ

 お忙しい方のためにまとめだけ先に見せておきます。繰り返しになりますが、「私はこのように理解しました」ということで受け取っていただけると幸いです。

① 買取再販(中古住宅の購入→リノベ→販売)が主力
② 直近業績について、契約数は伸びており私は成長速度が衰えていないことに楽観的
③ AI査定などのテクノロジー利用を強みとする
④ 消費者と直接やり取りするiBuyer領域に本格参入予定
⑤ もっとSEOを頑張って欲しい

Property Technologiesの概要と背景

 当社は『「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることができる未来』という素晴らしいビジョンをもった不動産会社です。私もそんな生き方をしたくて未だに賃貸を選んでいる。ぜひ実現して欲しいです。
 当社の事業領域は、
・買取再販
・新築戸建の施工と販売
とその周辺です。買取再販とは、要するに「中古マンションを仕入れて、リノベして販売する」事業です。そしてこの「買取再販」において、iBuyerという新しいビジネスモデルを構築しようとしているところが大きな特徴になります。

成長可能性資料P.4

 私が当社に興味を持ったのはかなり安くなっている印象だったからです。1Q決算で営業赤字を叩き出し売り込まれた模様。
 しかしながら11月決算期の1Q、つまり12月~2月はどう考えても引っ越し閑散期です。さすがに売りの判断は早すぎるのではないか、と思い、かつ売上や利益が成長しているにも拘らず、PERが低い(不動産業にしてもたぶん低い5倍)状態で放置されていたので、2Q決算発表で化けるのではないか、と期待して買い集め始めました。というわけで成長可能性資料を読んでいきたいと思います。

6/1終値時点

事業情報

事業概要

 改めて当社の事業は、「買取再販」と「戸建施工販売」です。
 買取再販は、家を売りたい人から(直接あるいは仲介会社を通じて)家を購入し、これをリノベして付加価値をつけて、家を買いたい人に家を売る、という仕事ですね

成長可能性資料P.23

 事業の売上および利益構成比は以下の図のようになっています。売上構成比はほとんど変わらず、売上が伸びているので両事業ともに成長していると言えるでしょう。一方で利益に目を向けてみると、買取再販事業が大きく利益を伸ばしてきているようです(図の黄色のHNはホームネット=買取再販)。

成長可能性資料P.9

特徴:テクノロジーを活かした効率的な仕入

 資料によると、良質な物件を仕入れることが買取再販の肝であり、当社はそれを「AI査定」や「ポータルサイト(KAITRY)」などのテクノロジーを活用しながら実現しているとのことです。 
 具体的には、例えば新人であれば通常5時間かかるような「査定」プロセスを0.5時間、つまり10倍の効率に改善しているとのこと。これにより、商品仕入件数・効率で優位性を作っています。

成長可能性資料P.16より

特徴:AIを活用しアメリカ発のビジネスモデル(iBuyer)に挑戦

 過去4000軒のマンションや5000件の戸建てを引き渡してきたデータや、周辺の住みやすさなどもスコアリングする手法で、AIを活用して物件の適正な価格を算出しているようです。
 ポータルサイトでは一般顧客に対してAIを活用して査定価格を提示、直接買い取る機能(iBuyer)を搭載しています。最短三日で現金化など、『「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることができる未来』につながるような挑戦を行っています。

成長可能性資料P.21より

業績情報

22年11月期までは増収増益基調

 こちらについては公式HPなどの新しい情報も参照してみましょう。まずは売り上げについてですが、2020/11から2022/11にかけて120億円近い成長をしています(成長資料ではさらに仕入れや販売が右肩上がりなのがわかります)。

公式HPより

 利益も気持ちよく伸びてはいるのですが、次に触れますが、今期は1Qで赤字決算を出してしまいました。これを受けておそらく先行きが不安視されて株価が下がったのではないかと思います。

公式HPより

1Qは赤字を出すも、季節性と期ズレを考慮すると挽回可能!?

1Q決算説明資料P.8

 売上は予算84.5億円に対し実績68.1億円と、予算を20%近く下回りました。しかし、今期予算は下期にかけてQごとの売り上げ・利益が伸びていくような構造になっており、進捗率としては3.5%の未達にとどまりました。

1Q決算説明資料P.12

 計画は未達ですが、しかし次に見るように、Qの販売契約数は前年同期の+24.3%に増えています。年間の業績予想は昨対比で+21%ですから、もしも単価が変わっていなければ、契約数の伸び的には上振れているとも読めるのではないでしょうか。「売上計上タイミングは契約時ではなく引き渡し時(入居時)である」ということを考慮すると、私は、多少なり期ずれはあるだろうが少なくとも1Qはほぼ予定通りのペースでの成長基調である、と結論しました。
 懸念があるとしたら、このままずるずると引き渡しが後ろ倒しになって、4Qの売上が想定以上に来期以降に回ってしまうこと。ですが、成長基調であればまあそれは1Q分ずれるだけのことなので、一旦無視しても良いのかな……。

1Q決算説明資料P.10

 それにしてもなんで後半にかけて伸びるのでしょう? 引越し繁忙期とかを考えると3~4月(2Q)のイメージがありますが……。強気に仕入れを増やすから結果的に後半に売上が伸びる、という想定なのでしょうか?
 ここら辺は新築と買取再販で結構細かくデータがあるので分析しがいがありそうなのですが、成長可能性を見るのが趣旨ですのでちょっとまた改めてやるとして、次に進みましょう。

成長戦略

iBuyer領域のリーディングカンパニーに向けて

 消費者(エンドユーザー)と直接物件をやり取りする「toC」こそが当社が本格的に参入しようとしている事業領域です。iBuyerはまさにその流れ。(当社では「仲介会社経由の取引はtoB」と定義しています。P.30脚注より)。
 そしてそのために、「大量の査定結果と実績データを強みに、iBuyerで重要な査定システムをブラッシュアップする」というのが基本的な方針です。

成長可能性資料P.32
成長可能性資料P.33

 上記P.33では、買取再販の市場規模6300億円に対し、中古マンション市場丸ごとを市場として捉え直しています。これが、「C2Cプラットフォーム(消費者同士が物件を直接売買するプラットフォーム)を作っていくぞ」という意思表明なのか、あくまで「iBuyerという形で買取再販を超効率化して中古マンション市場を飲み込みにいくぞ」という意味なのかは正直よくわかりません。「iBuyerリーディング企業」としているので定義的には後者が正しそうでしょうかね。

対象物件を非居住用にも広げる

 いずれにせよ、このビジョンを進めるには、iBuyerプラットフォームへの個人の参加を増やさねばなりません。そのためにも、居住用だけでなく、投資用や非居住用(例えばレンタルスペースへの転用)まで対象物件を拡大し、より幅広い顧客層にアクセスすることを試みるそうです。しかし「中古 家」とか「家 売る」とかで検索してもKAITRYが全然出てこないので、シンプルにSEOにもっと力を入れた方が良いのではないでしょうか……。

成長可能性資料P.34

その他の戦術

 こういった大方針を持ちつつ、販売の最適化(思ったように売れない物件をどうするのか、意思決定をAIで補助する、ということだと思われます)や、KAITRYをSaaSとして提供、2B領域のターゲットを弁護士や税理士まで広げていく、消費者との関係構築などの方針を掲げています。

成長可能性資料P.31
成長可能性資料P.37

まとめ

 Property Technologiesについて見てきました。ポイントをまとめます。
① 買取再販(中古住宅の購入→リノベ→販売)が主力
② 直近業績について、契約数は伸びており私は成長速度が衰えていないことに楽観的
③ AI査定などのテクノロジー利用を強みとする
④ 消費者と直接やり取りするiBuyer領域に本格参入予定
⑤ もっとSEOを頑張って欲しい

 iBuyerという新しいビジネスモデルで業績を伸ばしていくという方針。家は買ったら一生住み続けるもの、という世界観を変えてもらえることに期待したいですね。しかし一方で買取再販の枠を出ないのでは……? という疑問は率直にあり。もう少しパンチ力あるキラーコンテンツが生まれてくると良いなと期待します。
 また住み替えは不動産売買だけでなくて、「引越し」「諸々の手続き」も死ぬほど面倒くさい。ゆくゆくはそういったところまでカバーしていってもらえると嬉しいですね。

 計画通りの利益を出せれば成長曲線的にPER5倍ってことはないんじゃないかと思いまして、とりあえず2Q決算で2200円くらいを目標にしたいです。逆に2Qで下行ったらえらいことになる気もするので頼みますよ……。

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