おかいこさん

かつて、裏の家の2階におかいこさんが住んでいると聞かされていた。

全然顔を合わせることがなく、恥ずかしがりな若い女の人がいるのだろうと思っていた。外から見上げると、天井も低そうで、背をかがめて暮らしているのかなと、子どもながらに想像したものだった。

大正時代に建てたものを移築し、当初は蚕室だったと知ったのは、取り壊して2軒の家に変わった時のこと。今は垣根に残る桑の木にかすかな面影を残すのみ。往時どれほど美しい糸に仕上がったのか、見てみたかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?