〈韓国原書〉不便なコンビニを読みました
韓国でシリーズ累計150万部を超える大ベストセラー。
「Kヒーリング小説」「おとなの童話」などの評価を得ている作品です。
昨年、日本でも訳書が発行されましたね。
2冊で完結するストーリー構成になっています。1冊目で物語の舞台である靑坡洞のコンビニ周辺から抜け出せなくなってしまい(笑)、間髪入れずに2冊目まで一気読みしました。多くの人に読まれている作品にはやはり、夢中にさせる「なにか」がありますね。
題 名 불편한 편의점(2021年4月発行)
불편한 편의점2(2022年8月発行)
著 者 김호연(キム・ホヨン)
出版社 나무옆의자
あらすじ
ソウルの下町、靑坡洞にあるコンビニ「ALWAYS」を経営するオ社長は、外出中に財布を落としてしまう。その財布を拾ったのは、過去の記憶を失ったホームレスのトッコ。この縁がきっかけで、トッコはコンビニで夜勤バイトを始める。
家族関係や就職など、悩みや問題を抱えたコンビニの店員や客たちは、トッコとの関わりを通し、再び勇気を出して歩き出していく。そしてトッコ自身も、人々と関わりながら徐々に記憶を取り戻し、やむを得ず放置されていた問題と向き合うべく、元居た場所へと戻っていく。
続編では、トッコとの関わりによって一歩を踏み出した客の一人の縁により、新たな夜勤バイト、クンベが登場。彼もまた、コンビニにやってくる人々の抱える問題を、対話や小さなおせっかいで解決に導いていく。
この作品は、コロナ渦に発行されました。続編では、事業が立ち行かなくなった、劇の公演が延期になった、学校でオンライン授業が始まった等、コロナの影響を受けて問題を抱えた人々のことも描かれています。マスクに隠れた人々の表情、そして、マスクを外した人々の笑顔の描写も印象的でした。
物語の中で印象的だった2つの言葉を取り上げて感想を書いていきます。
동병상련(同病愛憐れむ)
一作目ではトッコが、二作目ではクンベが、コンビニに訪れる人々の悩みを解決していきます。しかしそれは、トッコ自身、クンベ自身が悩みを抱え、その苦しさや辛さを知っていたからこそ、絶妙なタイミングで人々に寄り添い、傾聴し、声をかけられたのだろう、と感じました。
そして、トッコやクンベから声をかけられた人々は、場合によっては泣き出したりしながら、心の内を吐露します。それは、作品にたびたび登場する「동병상련(同病愛憐れむ)」という言葉のとおり、かかわることによってお互いが親しみを抱いたから、起こった反応といえます。
興味深いのは、トッコもクンベも人々に共感を示す上で、自身の経験談を具体的には語っていない、という点です。何気ない行動や対話だけで、相手の心を開かせる――まさに、ヒーリング小説ですね。
옥수수수염차(とうもろこしひげ茶)
トッコは、コンビニに訪れる人々に、とうもろこしひげ茶をふるまいます。トッコからとうもろこしひげ茶を受けとって飲み干すと、人々が悩みを打ち明け始める場面がたびたび登場します。トッコ自身も、アルコールを断つためにとうもろこしひげ茶を飲み、アルコール依存症を克服していきます。まるで、魔法のお茶。特効薬のようですね(笑)。
トッコがとうもろこしひげ茶をふるまう時、特別なことはなにも言いません。しかし渡された人は、飲み終わると口を開くのです。とうもろこしひげ茶とトッコの真心を一緒に飲み干したから、かもしれませんね。
本に登場する人々が悩んでいることが、実際にありそうだったり、それに近い経験があったりしたため、共感しながら読みました。特に、大変だったコロナ渦を思い出しながら、本の登場人物たちと「私たち頑張ったよね」と言って肩をたたき合いたい気持ちになりました(笑)。これから読む人々の心も、この本がきっと癒してくれると思います。
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