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韓国ドラマ「トンイ」を二回観て思ったこと

私は、十四年前に朝鮮王朝ドラマ「トンイ」を初めて観た。その時、このドラマは必ずもう一回観ようと心に誓っていたが、このたび二回目を観たので、その感想を述べてみたいと思う。その前に、このドラマを観てから、主演女優のハンヒョジュの大ファンになった。今から十年前にソウルに行って、MBCのドラミア(現在 龍仁大長今パーク)を見学した。写真は、その時のものである。そして今でもハンヒョジュのファンのままである。トンイを十四年後に二度観たのも、ハンヒョジュの顔が見たかったからということもある。深田恭子に似ているものの、深田恭子よりも凛としていて、私は韓国の女優の中では、ハンヒョジュが一番好きなのである。

ドラミアにてトンイのパネルと

・剣契(コムゲ)について
トンイは賤民の出であるといわれている。宮中の水くみ女であったのが、十九代の王様、粛宗(スクチョン)に見初められて側室となり、息子を生み、その息子がやがては王となる。身分制度が厳しい朝鮮において賤民が側室となり、さらには母が賤民の出である子が王となるというシンデレラストーリーがこのドラマの大きな魅力である。
このドラマに剣契(コムゲ)という集団が出てくる。賤民の集団で、戦闘的な性格を持っている。この剣契(コムゲ)の頭(かしら)がトンイの父という設定である。トンイの父は陰謀によって死にいたらしめられ、この集団は壊滅してしまう。だが、時がたって遺志を継いだものによって再結成され、再び大騒動を起こしてしまうのだが、自分が剣契(コムゲ)の頭の娘であったということを隠して側室となっていたトンイは、この時の大騒動でそのことが王に知られてしまい、罪に問われてしまう。罪に問われたトンイは、側室の身分のまま宮中を出て、息子のヨニングンと共に市中に住むのである。
トンイの父親が剣契(コムゲ)の頭であったこと、のちに罪を問われたトンイが側室の身分のまま王子と市中に住んだことなどは、ドラマを面白くするための創作であったであろうと思われる。当時は両班(ヤンバン)を頂点とした身分制度が厳しくあって、最下層の賤民が虐げられ、苦しんでいたということは事実であろうが、賤民の戦闘集団の頭の娘が王の側室となり、王子をもうけ、ついにはその王子が朝鮮の王となるというストーリーはドラマにするにはもってこいの素材であったのかも知れないのである。
・張禧嬪(チャンヒビン)について
朝鮮三大悪女と言われている中の一人が、トンイに登場する張禧嬪(チャンヒビン)である。張禧嬪(チャンヒビン)については、何度かドラマ化されている。ある時は、欲深くて単純な性格に描かれ、またある時は明るく心きれいな女性として演じられ、またこのトンイでは嫉妬深く深謀遠慮をめぐらし、氷のような冷静さを持つ女性で、トンイの対照的な存在としてこのドラマを盛り上げている。
本当は、一体どんな女性だったのだろうか。王妃を呪い、トンイと息子を殺そうとしたということで、最後には王様から毒薬を賜り、死にいたるのである。
でも、自分の死後、息子は王位を継いでいるのである。とすれば、ある意味勝利者なのかもしれない。
        

チャンヒビン
チャンオクチョン(チャンヒビン)


「トンイ」の中のチャンヒビン

・景宗について
張禧嬪(チャンヒビン)の息子が、粛宗の後に第二十代王となる景宗である。病気でそうなったのか、もしくは何かのはずみでそうなったのか、子供が作れない身体となってしまう。また粛宗の死後、王となっても三十六歳で亡くなるという不遇の人である。
ただ、第十代目の王、燕山君(ヨンサングン)と違うところは、母を王によって毒殺された燕山君(ヨンサングン)は手のつけられぬ暴君となるが、一方の景宗は同じく母を王によって毒殺されたにもかかわらず、自暴自棄にはならないのである。それどころか真面目な王様となるのである。それはなぜであろうか。燕山君(ヨンサングン)を過去の悪例としてとらえ、それを反面教師として学んでいたに違いない。
・ヨニングンについて 
トンイの息子ヨニングンは、景宗を継いで第二十一代の王様、英祖となる。李氏朝鮮の王のなかで最も長い期間の五十二年間、王様として君臨した。名君であった。そしてその孫が第二十二代の正祖である。このことでドラマ「トンイ」からドラマ「イサン」へと続くのである。それゆえに、「トンイ」をみてから「イサン」を観ると、その面白さが倍増する。
・トンイについて
 ドラマ「トンイ」ではトンイの生涯を描いている。他のドラマでも淑濱崔氏(スクピンチェシ)として時々登場している。ドラマ「トンイ」では一貫して心の綺麗な女性として描かれているが、はたして実際はどうだったであろうか。張禧嬪(チャンヒビン)ほどではないが、きっと嫉妬深くて王の寵愛を得るために、いろいろと策をめぐらしていたことであろう。なぜならば、当時の朝鮮王朝自体が、一人一人が生き残るために他人を蹴落とすことが当たり前のような世界であったのである。
 でもこの「トンイ」をまだ観ていない人は是非観てもらいたい。「チャングムの誓い」そして「イサン」と並んで朝鮮王朝ドラマの最高傑作であることは間違いないのである。

イサン

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