五回目のクリスマス

クリスマス。
と言えば、家族や恋人、友人、グループ等と過ごす人が多いのかと思います。
でも、クリスマスだからと言って一人で過ごすクリスマスもあると思うんですよね。
誰かを思うクリスマスを寂しいと感じるか、その人と過ごせなくても、その人に出会えた事を奇跡と感じて過ごすのか?
それはあなた次第。なのかもしれませんね🎄

アドベントカレンダー2022を開催します。西野 夏葉


の参加作品です。



一人で過ごすクリスマス。大学を卒業してからだからもう5回目のクリスマスになる。
窓の外はホワイトクリスマス。静かに雪が降り続いている。

一回目のクリスマス。
大学を卒業した私は地方に就職。知り合いのいない土地で一人暮らしを始めた年の初めてのクリスマス。この時は恋人や友達も居なくて一人ぼっちの寂しいクリスマスだった。

二回目のクリスマス。
仲の良い友達が出来たけど、その友達に「やっぱりクリスマスは彼氏と過ごしたいから」と言われ、それならば仕方ないとやっぱり一人のクリスマスだった。

三回目のクリスマス。
友達が結婚してやっぱり一人でクリスマスを過ごした。実家の母から一人で過ごしてるのならクリスマスに帰ってきたら?って言われたけど、年末には帰るからやっぱり実家に帰るのは面倒くさくて結局一人でクリスマスを迎えた。

四回目のクリスマス。
その年、社会人になって初めて彼氏が出来たけれど、二股掛けられてる事が分かって即効三ヶ月で別れた。結局四回目のクリスマスも一人で過ごす事になってしまった。

そして、五回目のクリスマス。
どうやら今年も一人で過ごす事になりそうだ。外は真っ白な雪景色。アパートの前を時々通り過ぎる車のライトに照らし出された雪が絶え間なく降っている事がよく分かる。
窓から外を見ると家々の明かりが雪が降る向こう側に薄っすらと見えた。その窓一つ一つに今夜のクリスマスの物語が詰まっているのだな〜と感慨深く感じてしまう。
結局私はと言うと、五回目のクリスマスも一人なんだと流石に実感するしかなかった。

けど、

けどね、

そう五回目のクリスマス。
今私は恋をしてる。だけどそれは、完全なる私の片思い。相手は同じ会社に勤める同期で私と同じ様な背格好な彼。私の身長は168cm。彼も168cm。だからなのか、凄く身長を気にして私と並ぶのを彼はとても嫌がる。それが何時も私を悲しくさせる。私は身長差なんて全然気にしていないのに、彼は事ある事に凄く気にしてくるから…私は何時も冗談ぽく「そんなの気にする事ないって!身長が低いから嫌いとかタイプじゃないとか言う女子はこっちから願い下げだよ!」と言っては見るけれど、彼はそんな私の気持ちを知ってか知らずか「言われなくてもそんなこと分かってる!けど、やっぱり気にしてしまうんだ」あ〜、そんなこと言われたら私が貴方を好きだなんて言えなくなるじゃない。

五回目のクリスマス迄に彼に告白して、今年こそは“目指せ!ぼっちクリスマス卒業!”が目標だったけれどそれも叶わないままもうすぐクリスマスが終わってしまう。

窓をそっと開けてみると、僅かな隙間から雪が温かい部屋に滑り込んで来る。舞い散る雪は部屋に入ると直ぐに跡形もなく消えてしまう。
時々思う。私のこの思いもこの雪の様に跡形もなく消えてしまえば良いのに。そう思う事が出来たなら、五回目のクリスマスを一人過ごす事が、こんなにも寂しく感じないのになって…。

窓から忍び込む雪と一緒に私の中の悲観的な思いを断ち切るように窓を閉める。改めて物も言わずに降り積もる白い雪を見て

ああ…。私確かに恋をしてる。
例えそれが、片思いだとしても。
初めて一人で過ごしたあのクリスマスの時とは違う貴方を思う五回目のクリスマス。
何かで読んだのか?聞いたのか?
人を好きになるって

:本当に大切なパートナーとの出会いは、人生の中でそう何度もあるものじゃ無い。大袈裟に言えば、奇跡に等しい出来事。余計な事をグズグズ考えてると、起こる奇跡も起らなくなる:

彼と出会えた事は“奇跡”なんだと、この言葉を何度も噛み締めながら、五回目のクリスマスが終わろうとしていた。






机の上のスマホが小さな光を放つと、




画面には貴方の名前…。







五回目のクリスマス、
誰かを思う夜に起きた私の小さな奇跡。




Merry Christmas🎄


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