満洲 最新エピソードの舞台
現在のエピソードは、虚と実の狭間を舞台にしております。
主要人物は学生、これらは全てフィクション。しかし教授陣は実在の人物が多く含まれます。この学校の名前は、建国大学。旧満洲新京に実在した、満洲の国立大学。1945年8月の満洲国崩壊による閉学まで、入学の倍率は高く秀才が門をくぐり、学びの徒となった学生を9期まで受け入れた。
満洲国スローガンと同じく、「建国大学令」によると、この大学の建学目的は
「学問の蘊奥を究め、身を以て之を実践し、道義世界建設の先覚的指導者たるの人材を養成する」
ことにあった。すなわち建国大学は「五族協和の実践」を目標と定め、受け容れた学生も満洲人や蒙古人、日本人や朝鮮人、中国人、ロシア人など国際色豊かだったという。全額国費で賄われた上、学生には月5圓(当時)が支給されたので学問を極めたいという優秀な人材の競争率は高かった。
物語は単なる学園ドラマではない。
ここに絡んでくる国策プロパガンダが、学生を嘲笑い翻弄していく。
源義経は大陸に渡りジンギスカンになった。
この論が国内外に叫ばれたのは、元来、大陸進出の正当性とな無縁の学者の考察にすぎない。大正13年(1924)に出版された小谷部全一郎著『成吉思汗ハ源義経也』。これが、今回のオムニバスの肝になる。
勿論、オリジナルフィクションである。
義経北行伝説は、一筆書きでおおよそ時系列のムラがあっても、竜飛岬まではひとつの道として成立する。義経が生きて北海道まで渡ったという可能性は、実は大いに注目している。その先が眉唾というだけで、源義経が平泉で討たれていないという説で若い頃に習作をしたこともあった。いつか手を加えてリメイクしたいと思っているけど、それ、いつになるだろう。
とにかく日本人の判官贔屓の心情は、世論を操作するうえで効果的だった。
南信州新聞連載作品「満洲-お国を何百里-」。
第4話「ジンギスカン」、現在、好評連載中!