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noteで読める 夢酔藤山「異形者たちの天下」

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豊臣秀吉は山窩の子。埒外の力で信長に憧れ、その死後は天下を代わりに統一し、その先の夢を理解できずに老いらくにより果てた。その秘密を知る者は世に限られている。服部半蔵は「信康事件」…
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異形者たちの天下第1話-1

【冒頭あらすじ】 豊臣秀吉は山窩の子。埒外の力で信長に憧れ、その死後は天下を代わりに統一…

夢酔藤山
2か月前
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異形者たちの天下第1話-2

第1話-2 南蛮渡りの悪魔  駿府城下の屋敷に籠もったまま、一向に動きがない大久保長安に (…

夢酔藤山
2か月前
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異形者たちの天下第1話-3

第1話-3 南蛮渡りの悪魔  江戸南蛮寺の正式名称は伝えられていない。しかし初代宣教師であ…

夢酔藤山
2か月前
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異形者たちの天下第2話-1

第2話-1 葦の原から見える世界  大久保長安事件から間もなく、幕府内は大きく派閥の流れが…

夢酔藤山
2か月前
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異形者たちの天下第2話-2

第2話-2 葦の原から見える世界  その頃の江戸は急速に発展の途にあり、職人たちの活気に満…

夢酔藤山
2か月前
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異形者たちの天下第2話-3

第2話-3 葦の原から見える世界  その日、麹町御門に稀客が来た。 「やあ、半蔵殿」  そう…

夢酔藤山
2か月前
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異形者たちの天下第2話-4

第2話-4 葦の原から見える世界  慶長一八年(1613)七月、松平上総介忠輝は幕府にも家中にもお忍びで八王子へと赴いた。服部半蔵はこれを知ると、さっそく変装をするなり後を追った。  甲州街道はこのとき完全な整備がされていない。軍道でもあり畑道でもある。しかしそれは、出鱈目な道筋でもなかった。江戸近郊は五街道としての整備が為されている。  半蔵は高井戸宿辺りで忠輝に追いついた。 「半蔵かい」  忠輝はやはり、すぐに正体を見抜いた。 「御供をさせて欲しいのですが」 「断っても

異形者たちの天下第2話-5

第2話-5 葦の原から見える世界  慶長一八年という多難な年がもうすぐ暮れる。その矢先の、…

夢酔藤山
2か月前
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異形者たちの天下第2話-6

第2話-6 葦の原から見える世界  稲荷信仰はそのルーツを辿ると平安時代に行き当たる。  狐…

夢酔藤山
1か月前
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異形者たちの天下第2話-7

第2話-7 葦の原から見える世界  慶長一九年(1614)は正月から忙しない年であった。  …

夢酔藤山
1か月前
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異形者たちの天下第3話-1

第3話-1 踊る漂白民(わたり)が笑ったあとに  慶長一九年(1614)正月九日、後陽成上皇…

夢酔藤山
1か月前
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異形者たちの天下第3話-2

第3話-2 踊る漂白民(わたり)が笑ったあとに  この年の傾奇御観覧は、時の帝・後水尾天皇も…

夢酔藤山
1か月前
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異形者たちの天下第3話-3

第3話-3 踊る漂白民(わたり)が笑ったあとに  興業を終えた阿国一座は、迅速のうちに仙洞御…

夢酔藤山
1か月前
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異形者たちの天下第3話-4

第3話-4 踊る漂白民(わたり)が笑ったあとに  仙洞御所が傾奇踊りで賑わいを見せた同じ日。  朝家恒例正月御観覧のことを 「またか」 と苦笑しながら、それでも今年の徳川家康は遠慮をしなかった。家康の心の内では、常に天下を取るための詰将棋が動いている。その矛先は豊臣家やキリシタンに向けていた。ゆえに、これまでは朝廷に手心を加えてきた。しかし、その対局も終焉であることを家康は自覚していた。  キリシタンは廃止へと進み、都合よく豊臣家がこれに引摺られていく。両者とも先はない。だ