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嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~二十七の歌~

《ど平凡》 原作:中納言 兼輔 
「おそいなぁ、もう。いっつもや。待ち合わせはこれやから嫌や」
美加の原駅は田舎駅。川風が吹き抜けてえろう寒い。
「おっ、あの車かな。来たかな? ……ちゃうなぁ。どないなっとんね?」
ーーと、携帯電話が鳴る。
「もしもし、エッ?! あと1時間遅れるって? なんでェ? お父ちゃんと一緒に来るって……? いや、会いたくないわけやないけど……。あの、その、とにかくちイヅミゃんには会いたいのやけどな……。うんうん、わかった。会うわ。とほほ……えらいこっちゃ」
※みかの原・・・京都府相楽郡を流れる木津川の北岸あたりのこと。

定家「まぁ、待ち合わせで先に来たほうは、待つのが辛いわな。おまけ恋人のオヤジ殿まで来るとあっては」

蓮生「みかの原 わきて流るる いづみ川いつ見きとてか 恋しかるらむ。実加の原を流れとるのはイヅミ川や。その、イヅミ川(=「いつか見た」が掛け言葉)の名のように、いつか見た姫を恋しく思ってしまう。とにもかくにも姫に会いたい。その一心やね」

定家「せやせや」

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