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《まっ、エエか。あいつにツケといて》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~五十の歌~

《まっ、エエか。あいつにツケといて》原作:藤原義孝
「わぁ~、どないしょ?!」
「なんや、どないしたんや?」
「あの娘から、つきおうてもええってメール来たがな! わぁ~い! もう、死ぬなんてでけへんで!」
「えっ! おい、どこ行くんや? あかんがな、かってにお店飛び出したら! 勘定まだやで!」
「この店、高いんやで。誰がアイソすんね!? 難儀なやっちゃな、死ぬ言うてみたり、死なれん言うたり……、まっええか、女将さん、勘定はあいつにツケといて」
 (注)アイソ=支払いのこと。ツケる=信用売りで勘定をつけておくこと。
定家「君がため  惜しからざりし  命さへ 長くもがなと  思ひけるかな。嬉しいな、こんな気持ち」 
蓮生「貴方とお会いするためになら、たとえ捨てても、けっして惜しくない命だと思っていました。しかし、こうして貴方とお会いできた今は違いた他人。貴方ともっとお会いするために、いつまでも生きていたいと思います。
想いを遂げるって、ええな。なんや、こっちまで心がウキウキしてくるわ」
定家「ほんまに」
蓮生「そういや、そろそろおいとませなならんわ。待ってくれてるお人もいるし、待ちくたびれたお人もいはる」
定家「待ってくれてるお人のことは、まあ、わかるような気もするけど、誰やろ、待ちくたびれたお人って?」
蓮生「すぐにわかるって。ほれ、あの衣擦れの音。まもなく、お出ましや。いくら想いを遂げた言うても、定家はん、気絶しいなや」
※長くもがな・・・長生きしたいなあという意味。

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