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《なんや、なんやて!?》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~五十七の歌

《なんや、なんやて!?》原作:紫式部
式部はんのこと、どう思うかて?
あの方は才女、才媛さかいなぁ……。
お逢いすると気持ちが、ピーンと張るんや。
せやさかい、すぐに逃げ出したくなる。
けどな……、エエとこもあって、特にあそこは……、
こちらのあそこがピーンとしとるから……、
……まっ、やめとこ!

<承前>
濡れそぼった直衣から水をしたたらせながら定家は両腕に抱いた式子を見遣った。
「式子様、貴女の禊ぎは終わられました。御身は清浄な気に満たされております」
定家はそう呟き、式子を胸に抱いたまま、庭を横切り、階を登り、室内に入った。明かりが二基灯されている。式子を几帳の影に横たえた。
「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな」
式子が薄目を開けて囁く。
「定家はまだ離れはいたしませぬ。御身を拭う布をお持ちいたします」
定家は室内の奥まった場所においてあった唐櫃の蓋を持ち上げ麻の布巻を取り出した。
<後続>  


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