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《堀川戎》嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~七十七の歌~

《堀川戎》原作:崇徳院
「二十年ぶりやな、須江ちゃん。あいかわらず可愛い」
「きれいや、とは今も言うてくれへんのやね」
「せやな。それが言えてたら、今とは違う人生やったろな」
「悔しいさかい、滝川さんから昔にもろた恋文、もう返そか?」
「あかん、あかん。返さんといて。今もその気持ち変わらへんさかい」
十日戎、残り福の宵。

<承前七十六の歌>
式子と定家は大屋根に続く回廊の棟の上を手をつなぎ歩いていった。月の灯りに二人の影が落ちた。棟を挟んで左右に分かれた影。
「瀬を早み 岩にせかるる 滝川のわれても末に あはむとぞ思ふ」
式子が定家に囁いた。
「式子様、かならずや私共は結ばれましょう。定家はそう信じておりまする」
「式子もそのように」
二人は大屋根の急勾配を支え合って登っていった。
<後続七十八の歌>

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