詩:左手

左手

右手の空白を埋めている時間は退屈で
包まれた寂しさの手の甲と優しさの手のひら
溶け切った昔の接着剤を思い出す
別の日には人差し指と中指を繋いだら
他の指がヤキモチをやく
囁き声が聞こえるのは
これ以上くっつくと別れるのが辛くなるからで
あなた専用の爪痕がわたしのより大きいから
最近できた傷の深さはかさぶたにもなっていない
風化したときに気がつけばそこはほくろができている
ぽつんって絵の具をたらしたみたいに
数えた分だけしわくちゃになってもまだ好きでいられる気がする
眩しくなった時に太陽を隠すのも
自分を慰めるのも
タバコを吸う時もいつもその手
まめができたとこだけ色違いで
苦労カラーに染まる爪だけは少し黒い
日替わりの指紋みたいだねってわたしがいうから
顔を隠すときの比較対象が滲んで反射する
買い物するときにカゴを持ったわたしの左手はカレーの気分
半歩遅れて歩くあなたの視線はチョコレート
好きなお菓子をカゴに入れるとき
知らなかったカロリーの大きさに気づく
ホロホロに崩れたじゃがいもと
おやつにとっておいたチョコレートをルーに混ぜる
ひたすら
あなたの元に運んだときスプーンは
何色に輝くのだろう

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