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灰原哀を崇拝していた女が語る!映画「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」の感想

 私は、灰原哀を崇拝していました。
 それまで小説にしか興味のない、スカした小学生だった私は、行きつけの本屋でとある漫画を手に取りました。それが『名探偵コナン』です。
 しかも初めて手を出したのは、17巻! 漫画の買い方も知らないようなお子ちゃまは、衝撃を受けました。こんなに、こんなに面白い漫画があるなんて!!
 漫画なんて子どもの読み物だし〜、と子どものくせに思っていた私は、貪るように名探偵コナンを買い漁りました。

 そんな小学生が崇拝していたのが「灰原哀」だったのです。
 クールな小学生ですが、コナンくん同様、彼女も頭脳は大人なわけです。そんな彼女に、私はなりたかった。
 まぁ、全然方向性の違うゲラな大人になりましたが…。

 そんな私が、コロナ禍になってすっかりご無沙汰だったコナンの映画を観に行きました。タイトルすら見ずにチケットを買ったので、映画が始まってしばらくは、『ハロウィンの花嫁』だと勘違いしている有様でした。ネタバレ嫌いもここまで来ると、ビョーキですね。
 
 『黒鉄の魚影(サブマリン)』(変換するのが面倒になったので、以下『サブマリン』)は、灰原哀ちゃんが活躍(メイン)する話です。
 この映画を観るまで、私の憧れの大人は哀ちゃんでした。……そうなんです、過去形になってしまったのです。

 それは私が、彼女よりも随分年上になったからでしょう。
 憧れって、なりたいとかそういうものだと思うんですね。でも、いつの間にか私は、クールでも冷静でもなく、ウェーブでもないストレートヘアーな色気もない自分を受け入れてました。恐ろしいぐらい、すんなりとありのままの自分を受け入れていたことに気付きました。
 そして憧れていた頃では、気付かなかったことにも、沢山気付いてしまったのです。

 『サブマリン』では、灰原哀の正体である黒の組織に属していた宮野志保という科学者が、アポトキシン4869の副作用で身体が幼児化して身を隠しているという前情報ありきで話が進みます。
 コナンオタクすぎて、一時期は巻数だけでアノ話だ! と当ててた人間なので、アポトキシン4869なんてスラスラと言えちゃう大人ですが。
 そんな私が気づいたのは、まず……

 蘭姉ちゃんに対する感情です。
 腐ったアップルの話らへんで、拐われた灰原哀を守るために、蘭姉ちゃんが車のトランクから飛び出すシーンがあります。
 小さい時の私は、何にも気付いてなかったんです。蘭姉ちゃんの度胸に胸を打たれたぐらいだった。
 もうひとつのことには気付かないぐらい、私はお子ちゃまでした。
 あの時の哀ちゃんは、蘭姉ちゃんに亡くなった姉を重ね合わせたのです。そして同時に、江戸川くんへの恋心の敗北すら知ってしまった。
 もうね、これが映画で全面に出てるわけですよ。だから蘭姉ちゃんに、唇を返した。哀ちゃんは江戸川くんも好きだけど、蘭姉ちゃんも好きなんです。
 これは、私がもうひとり憧れて止まない女性と同じ視点なんですよ。
 はい、ここでベルモットが出ます!

 ベルモットもねぇ、好き。あの名台詞「女は秘密を飾るほど〜」は本当にカッコイイ。私は残念ながら、秘密もミソもない正直者になってしまいましたが……。
 バーボンともマッチしてて、いいんですよね。ミステリアスな感じ。こちらはまだ、憧れさせてほしいなぁ。彼女も同じように、黒の組織に属していながらも、シルバーブレット(工藤新一)とエンジェル(毛利蘭)を愛している矛盾した想いを抱えた女性です。そこがまた、いいんです!
 
 さて、哀ちゃんの話に戻ります。
 映画の哀ちゃん、とにかく可愛かった。
 可愛いなんて、私は1回も思ったことがなかったんです。もう20年近く哀ちゃんを崇拝していた私が、憧れをやめてしまった(大谷翔平選手みたいなことも言います)のは、

「江戸川くん。…………私たち、キスしたのよ」

 というセリフを聞いてしまったからです。
 これ、本当に、濁すと思ってまして……。
 今までの哀ちゃんなら、察させるタイプだったんですよ。わざわざあのセリフを言わなくても、その先の言葉は観客の頭の中に浮かんでた。その上で哀ちゃんが、そういうセリフを濁すズルい女だと思っていた観客(というか私)は、びっっっっくりしてしまったのです。

 それでね、なんか知らんけど泣いてしまった。

 いや、理由は分かるんですよ。
 私ね、哀ちゃんが胸中ですらツンデレだと思ってたんです。その殻が破られた瞬間に見えて、初めて、初めて灰原哀を愛おしいと思いました。

 絶対に叶わない恋心を抱かせる男前な江戸川くんに振り回されて、それでも灰原哀はずっと江戸川くんが好きなんですよ。江戸川くんのことも、姉に似た強くて優しい蘭姉ちゃんも。どっちも好きだから、潔く身を引くんです。
 でも、ちょっとだけ、ワガママになる自分もいる。だから江戸川くんの前で、わざと蘭姉ちゃんに唇を返すという意地悪をした。そのぐらいの茶目っ気を備えた哀ちゃん、愛おしすぎる!!

 私は、『サブマリン』で灰原哀への崇拝がなくなり、憧れもなくなり、すごく寂しさを感じました。でも、失ったモノと同じぐらいに愛おしさが込み上げてきて、観てよかったと本当に思いました。
 年齢を重ねた上で同じ作品を読む(観る)と、見方が変わる。それによって、自分の成長具合が分かるのは毎度ながら不思議な感覚です。
 
 私は、灰原哀とは真逆の大人になりました。そして、憧れていた人を見守りたいという新しい想いを知りました。
  あと、イチョウブランドの話があって♡もうっ♡だから大好きなんだよね♡♡

 『サブマリン』は、哀ちゃんの可愛さがギュギュッと詰め込まれた神作です。興行収入すごいのも納得!! おめでとう哀ちゃん! 崇拝する心は消えても、いつまでも大好きです!
 

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