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ロート製薬妊活白書2023にみる「子どもをほしくない若者半数超え」の現実と未来

妊娠検査薬や排卵日予想薬を製造販売しているロート製薬が2018年より公表している「ロート製薬妊活白書(2023)」発表されました。それによると、
18~29歳の未婚男女400人のうち「将来、子どもをほしくない」と回答した割合は55.2%に上り、この設問を開始して以来上昇が続き、4年目となる今回初めて半数を超えたとのことです。
(調査対象は18-24歳/25-29歳/それぞれ男女100名ずつ のサンプル計400名)

なおこの設問部分だけがネットのニュースで何度か取り上げられていますが、調査全体の趣旨としては妊活に対する10代~40代の男女の意識調査のようなもので、女性の妊娠力は35歳くらいから急速に低下すること、妊娠しやすい時期などの妊娠に関する正しい基礎知識量が男女間で大きく異なることが示されており、インターネットの普及により昔に比べて情報が得やすい環境になる一方で、妊活のための適切な知識を家庭や学校教育等で早期に得る機会はいまだに不足しているとまとめられています。


ロート製薬WEBサイトより https://www.rohto.co.jp/news/release/2024/0301_01/

18歳と29歳ではだいぶ環境や考え方も違うと思いますが、今後出産適齢期の女性そのものの人数がどんどん減っていく中で、半数以上がそもそも子どもを持ちたくないと考えているという現象は、政府の予想よりはるかに速い速度で少子高齢化が進む可能性を示唆しているように思います。
「将来子どもを欲しくない」若年男女が増加の一途をたどっている理由は複数あると思いますが、日本では出産と結婚はセットで考えられているため、「結婚のメリット<デメリット」と考える若者が増えるほど自動的に出産も遠のくことになります。今の中年世代や団塊の世代が20代だったころは、女性が十分な収入を得られるほど働くのは難しく、男性はまったく家や身の回りができないことが珍しくなかったため、結婚は男女とも生きていく手段として必要不可欠なものであり、昭和30年代の婚姻率は98%だったという統計が残っています。

そして現代では女性が十分な就労収入を得ることも不可能ではなくなり、男性は家事ができなくてもコンビニや総菜、家電の進化により単身で生活することが困難ではなくなりました。これが結婚しない若者が増加している第一要因と言われることが多いですが、個人的には、2000年代以降のインターネットの普及による情報量の急増がより最大の要因なのではと感じています。

それ以前は、「20代のうちに結婚して速やかに子供を2人はもうける」のが国民のスタンダードであり、そうでない人は変わり者とか負け犬とか揶揄されるような風潮がありましたから、結婚や出産でその後の人生や抱えていくものがどうかわるのかというのを深く検討せずに結婚や出産を迎えるという人が多かったように思います(特に私が育ったような核家族であまり親戚づきあいもないような場合、他の家庭・よそのご両親というのを観察する機会もほとんどありませんでした)。

それが今では、SNSでは育児世帯の苦労や配偶者、義理の親族へのネガティブな情報も溢れ、大体においてそれがポジティブな情報よりはるかに多いため、人生計画を丹念に考える若者ほど結婚や出産育児を前向きに考えられなくなるのは当然のことでしょう。
SNSもさることながら、私はYahoo!ニュースなどのネットニュースのコメント欄というのが、単発で言いっぱなしができる分、SNSのアカウントを使っての書き込みよりもより本音が吐き出されているような気がして、興味のある記事の場合は熱心に読んでしまいます。

先日は男性育休に関するnoteの記事を書きましたが、男性育休に関するニュースのコメント欄を見ても、「育休で戦力になってくれるならいいが、ただの休暇気分で喜んでいる旦那なら、働いてくれていた方がマシ」といった趣旨のコメントがとても多く、そこに多くのいいね!や共感の返信が続いていたりすると、共働きが当たり前となってきた今であってもこんなにも苦労している女性が多いのかなとか(もちろん男性にとっても、特に祖父や父親がほとんど育児参加をしていなかったような家庭環境で育った方には、同等に家事育児をやらない夫なんていらない!という言葉が並ぶのは恐怖でしょう)、こういうのを見たら未婚男女はますます結婚や育児に希望を持てないだろうなと絶望的な気持ちになってしまいます。

結局のところ、政府が取り組んでいる「異次元の少子化対策」は、既に子育て中の世帯に恩恵を与えてあわよくばもう一人という動機付けにはなりえても、未婚者の結婚や妊娠への動機づけにはなりえないのでしょう。自治体レベルでは子育て支援が功を奏して、若年世帯の増加につながっている自治体も見られますが、結婚願望のない未婚者を結婚出産に向かわせるまでの力は持ち合わせていないと思われます。

そして上記のようなネットの情報の氾濫はもはや政策で統制できるようなものではなく、中途半端な少子化対策に財源を使うよりは、急速に進む労働力不足やインフラ崩壊の防止に注力したほうが賢明といえるのかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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