エノシマフユキ

美大卒、季節労働の蔵人。友達にそそのかされてnote書いてみようと思い立つ。発酵や醸造…

エノシマフユキ

美大卒、季節労働の蔵人。友達にそそのかされてnote書いてみようと思い立つ。発酵や醸造について気ままに書いていきたい。

最近の記事

ヤクルトで菜漬け

3月からヤクルトを使った乳酸発酵漬けを何度か作成しており、安定して成功しているのでここにレシピとして記したい。 このレシピで今までに乳酸発酵させた野菜は 野沢菜・広島菜・かつお菜・青梗菜・キャベツ の五種類である。いずれもアブラナ科の葉野菜のみでの成功で、他の種類の野菜での成功は保証しない。 材料はとてもシンプルである。(別途、消毒用のアルコールを必要とする) ・任意の野菜 1.5〜2kg ・水 1ℓ ・塩 任意の野菜と水の総重量×0.03(kg) ・ヤクルト 1本

    • 発酵物はどこかトマソンに似ている。

      先週の記事で、オフフレーバーを酒質の設計に組み込んだ妄想をしていたが、このような不適格とされる要素を酒の内へ取り込むという妄想を行うことが好きだ。 それの結果が腐造性乳酸菌の酒のように妄想と結果が違ったり、非効率な車輪の再発明になったりということも多いが、これをやめられない理由は発酵という過程に僕が"トマソン"的な性質を感じているからに他ならない。 ”トマソン”とは赤瀬川原平が提唱した建築に由来する構造物群に与えられた通称である。彼は”登って降りるだけの階段”や”通過でき

      • 鬼と付き合うために

        この時期になるとどれくらいの家が豆を巻いて春の到来を祝ってるのだろうか。「鬼は外、福は内」の掛け声からも分かるようにこれはお祓いの儀式だ。そのほか、街を歩けば柊の枝に鰯の頭をくくりつけた奇妙なオブジェを見つけることもできる。そもそも”鬼”は ”陰”由来にもつ言葉でツノの生えた怪物ではなく目に見えない霊的な気や穢れを意味する言葉だったようだ。 物心ついた頃から家に帰ったら手を洗うように学校で指導されてきた僕らにとって穢れと菌や寄生虫、ウイルスという概念と切っても切れない関係に

        • アウラと酒

          部屋の片隅、押し入れの肥やしになっていた酒を見つけた。もちろん熟成させてるわけではなく粗略の結果である。だが、意外なところで寝ている酒を見つけると嬉しくなるものだ。 酒飲みはみんな知ってると思うが日本酒は古酒になっても美味しい。なんとなくだが、フレッシュな軽快で香りある酒よりどっしりして甘くアルコール度数の高いものが美味しくなる傾向にある気がする。日本酒に限った話ではないがワインなども樽で寝かせるし、美味しい酒は熟成させて2度楽しめるななどと考えていると酒の価値はアウラに裏

        ヤクルトで菜漬け

          脱法ジンのすゝめ

          ジンは薬用酒にルーツを持つ酒であり、ジュニパーベリーに由来する針葉樹の爽やかで、かつ甘くもスパイシーな香りが特徴的だ。中世において病は瘴気に起因すると思われていたので香りの良いものはそれだけで薬たりえたのだろう。 だが、スッキリとした飲み口ににもかかわらず蒸留酒よろしくアルコール度数が高く、かつてはその安価さも相まって低所得者を中心にジン中毒をもたらした悪名高き酒でもある。時代が違えばセカンドサマーオブラブの主役はLSDなどではなくジンだったかもしれない。 そんなアウトロ

          脱法ジンのすゝめ

          危険な酸…

          昨今、酒母しぼりの酒が流行して酸味の強い清酒が一般的になったが、かつて「酸の強い酒を飲みたい」と憧れたことがあった。そして、それは奇しくも酒造りの中で実現した。 寒くない時期に酛立てした山廃がつわり、醪になった後も酸度が上がり続けたのだ。上槽まで大きくなり続ける数字は杜氏さんにとってはとんでもない悪夢だったと思う。だが、責任と関係のない僕は(自分が蔵入りする前にすで酛立てが終わっていたし酛屋でもなかったのもあるが)非常に申し訳ない話ではあるが内心とてもワクワクしていた。

          僕にとって酒が何なのか改めて考えてみた

          あれは高校3年の夏…僕は初めて飲むチューハイを片手にこんなもんかと思った。 確かクラスの体育祭の打ち上げで誰かが言い出したのだったと思うが、誰も酒の味も酔うことも知らなかった。もともとアルコールに耐性があったのか「ジュースと大差ないな…」というのが正直な感想だった。 それからしばらくして酔うこと覚え、酒お純粋にドラッグとして捉えていたこともあったし、そんな酒の側面に助けられることもあった。だが、「あの時の”酔い”が最高だった」とか「あの時の”酔い”は不思議な体験だった」と

          僕にとって酒が何なのか改めて考えてみた