脱法ジンのすゝめ
ジンは薬用酒にルーツを持つ酒であり、ジュニパーベリーに由来する針葉樹の爽やかで、かつ甘くもスパイシーな香りが特徴的だ。中世において病は瘴気に起因すると思われていたので香りの良いものはそれだけで薬たりえたのだろう。
だが、スッキリとした飲み口ににもかかわらず蒸留酒よろしくアルコール度数が高く、かつてはその安価さも相まって低所得者を中心にジン中毒をもたらした悪名高き酒でもある。時代が違えばセカンドサマーオブラブの主役はLSDなどではなくジンだったかもしれない。
そんなアウトローで危険な魅力を持ち合わせたジンは日本の酒税法上はスピリッツに分類される。
酒税におけるジンの定義
ジュニパーベリーを蒸留した一般的なジンは酒税法ではスピリッツに分類されるが、スピリッツの定義は以下のような蒸留酒のオルタナティブをまとめたものである。
ジンのようなものを指し示す表現は酒税法の3条連続式蒸留焼酎を定義する条文の中に例外の定めというネガティブな形で以下のように存在する。
つまり何が言いたいかというとジンを定義する法律は存在しない。
だが、もちろんジュニパーベリーをアルコールと共に蒸留してジンを作る場合はスピリッツとなるし製造には免許が必要になる。この国では酒税法という悪法によって免許なしでの酒類の製造は禁止されている。
みなし醸造について
ところで梅酒を家で作ったことある人はどれくらいいるだろうか。酒類と水以外の混和も法律上は酒類の製造にあたるが、自家製梅酒のように自家消費を目的とした混和は規制の対象にはならない。
つまり何が言いたいのかというと、ジンも混成酒として自家消費の範囲内であれば自由に作れるのではないか?ということである。なので次に混和を認められている物品を見ていこう。
混和できるものについては以下二つの法令でこの様に定められている。
脱法ジンのすゝめ
さあ、ここまで来たら感のいい人は気づいているかもしれないが、僕が提案したいのは「ジュニパーベリーを買ってきてお酒に漬け込む」ということではない。
製品のジンも試作段階では各種のボタニカル別で蒸留し割合を決めたりするが、アルコールとジュニパーを別々に蒸留し調合した場合それはジンとは呼べないのだろうか?ということである。
つまりはジュニパーベリーの蒸留物を既に蒸留されたアルコールと混和することでジンを作成できるのではないか?という脱法ジンのすゝめである。
生憎、蒸留機なんて新幹線に乗るより安い値段で落ちているし、質の高い原料アルコールも自分で醸造・蒸留したら個人では到底払えない設備と光熱費が必要になるが、ネットショッピングにはガソリン10リットルほどの値段で落ちているのである。
ジュニパーベリーをはじめとした各ボタニカルを水蒸気蒸留もしくは乾留し出来た精油ないしはハーブウォータを47度ほどにわる。昨今ビアボールという炭酸で割ることで作れるビールが流行っているが、逆にアルコールで割ればジントニックになる清涼飲料水の開発すら可能である。
2010年台中盤から始まったクラフトジンブームからそれなりに時間が経ったが、未だにジンのムーブメントに陰りは見えない。それにはこの酒の定義のファジーさ、トライできることの裾野の広さが一役買っているような気がする。ジュニパーベリーによって香り付けがされていればアルコールの原料も、一緒に蒸留するボタニカルも何が入っていても構わない。それは作り手にとっても自由な気運を纏った酒であるが、その扉は個人で蒸留を楽しみたい人にも開かれているのではないだろうか。
今後春が来たら山には山菜のシーズンが到来し色々な野草を蒸留できる様になる。それらの実験結果もnoteに書き起こしていきたい。
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