論語 微子3 行動は変えても理想は変わらず。

 斉の景公は孔子を重臣に起用しようとして言われた。「季孫氏のように待遇することは、私にはできませんが、季孫氏と孟孫氏の中間くらいで待遇しましょう」。(しばらくすると)言われた。「私は年老いた。あなたを起用
することはできません」。孔子は(斉を)立ち去った。

井波律子(訳)(2016)『完訳 論語』 岩波書店

 引用文献によると時期は曖昧であるようだ。孔子が斉という国に起用されそうになったが、結局されなかったというエピソードである。
 この「しばらくして」というのがどれくらいの期間を指示しているのか分からないので、事情が変わって起用できなくなったのか、最初から起用する気が無かったのかは判断がつかない。

 ただ、この微子という章は論語の中でも話の数が少ない部類であり、孔子の苦境や様々な人物の伝聞、伝説等が多い。単純にエピソードとして把握するにとどめて置いた方がいいという事だろうか。

 孔子は順風満帆な人生を歩んできたわけではない。理想の政治を目指して国の重鎮として起用されたのは50歳になった頃である。さらにそこから数年で自国の堕落ぶり(策略にはまったともいえる)に見切りをつけた孔子は
理想とする国を見つける為に長い旅に出ることになる。結局定住する様な理想の国を見つけることは出来ずじまいであった。

 そんな中でも理想を追い求め、自分が出来る事に邁進する姿勢は勇気を与えてくれるものである。論語を読んでいると教えだけではなく様々なエピソードとも出会う。時には嘆き、時には弟子たちと冗談を言う場面もある。
 ただのお説教ではなく生きている人間の姿を想像出来、身近に感じられるのである。

 

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