論語 憲問28 嘘偽りなく闇の中

 曾子は言った。「君子は、自分の職分、本分を超えて考えるようなことはしない」。
 

野中根太郎(訳)(2016)『全文完全対照版 論語コンプリート』 誠文堂新光社

 専門の事は専門家に任せるというった事だろう。しかしながら最近は素人や関係ない人の意見も新たに取り入れる動きも出てきている。裁判員制度はその代表的な物だろう。地方自治に行政職員だけでなくその地にに住む人が進んで参加する事も増えてきている。

 また、分業だからと言って全てを他人任せにしていては自分が何をやっているのかという実感を持つ事が出来ない。円滑な仕事をする上ではお互いの仕事をある程度は可視化していた方が良いという話も聞く。

 これらの事は専門分野に口出ししないという事と両立可能ではある。素人がメスを握って外科手術をするのも運転免許がないのに車を運転するのも事故が起こるは目に見えている。
 専門知識に関して口出しをするのは良くないという事だろう。 

 ただ、それにしても問題がある。専門性の高い分野はその専門内での偏った常識になりがちであり、固まった組織になる可能性がある。それを防ぐために裁判員制度等の話に戻ってくる。

 医療の世界で、医師と看護師では仕事に従事しているという点では同じであるが、指示を出す側と出される側でどうしても階級的になりやすい。看護師が医師に相談できずに医療事故が起こってしまったという話を聞いたことがある。問題なのはそこから自分たちのコミュニケーションの不足が原因と反省するのではなく、尽力した結果であると結論をつけてしまい問題が闇に消えてしまいかねないという事だ。

 悪意や隠ぺいする意思があるのではなく、本当にそう思ってしまうのである。どちらかというと人格や環境の問題と言える。

 こうしていろんなケースを考えて行くと中庸という言葉の大切さが良く分かる。単純に言葉を鵜呑みにするのではなくそれ以外のケースがあり、柔軟に対応しなければならないという事である。

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