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【詩】赤筍

山道の細くなった先に
見慣れない標識が捨てられていた
黄色いだけのなにも書かれていない
四角い標識が捨てられていた
以前にも見たような気がして
少しだけ気になって
その標識が倒れている方向へ
歩き出した

錆びついた路の先に
トンネルのような穴が待っていた
なんとなく手招きされたようで
うれしくなった
中は少しだけあたたかくて
なつかしいにおいがした
この場所を知ってる
そんな気がした

帰り道はとても気分がよかった
どれだけ歩いても疲れなかった
聞いたことのない虫の声が
少しうるさかったけど
そんなに悪い気はしなかった
なにをしに来たのか
どうしてここにきたのか
忘れてしまったけど
嫌には感じなかった

うしろを振り返ると
見慣れない赤い筍が
ただしずかに生えていた

そのときすべてを察した
標識の意味もすっかりわかった

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