マガジンのカバー画像

父の資格

6
不器用ながら父親になろうと奮闘する医学生の銀次郎。 自由奔放な妻亜季とその連れ子、りん。家族になれる日は来るのか。連載
運営しているクリエイター

#連載小説

父の資格 2

はじかれた手を所在なさそうに持て余すと、
りんは床に落ちた肉を拾って銀次郎の皿に戻し、
また二人の中間に座った。
 「俺は食わねぇからな。」
銀次郎が言うと亜季は
 「なんなの、大人げないわね。」と言う。
 「りんが食べるの手伝ってあげる。」りんが銀次郎に言う。
りんの食べ残しを、いつも銀次郎が「手伝って」食べてやるのだ。
 「いいわよ、ママが食べるから。」
 「いいじゃねぇか、ばっちり柔らかくな

もっとみる

父の資格 1

「お前が馬鹿だからまともに学校にも通えない馬鹿ガキに育つんだ」
 銀次郎は持っていた箸の一本を絶妙なコントロールで投げた。
箸は亜季の顔の横を高速で飛んで、襖に当たって落ちた。
亜季の背後にいたりんがそっとそれを拾う。
 りんの入学祝に買ったランドセルが、ほとんど使われることなく半年が過ぎようとしていた。
 「お絵かきだか何だか知らねえけど、だからお前や、お前のご実家連中みてえなお偉い文化人様はど

もっとみる