ゴロツキ邪道 vs 武士道

ゴロツキ邪道 vs 武士道
“シーチン”修一

【雀庵の「大戦序章」225/通算656 2023(令和5)年9/26/火】小人閑居してアレコレ思う。普通の庶民は暗殺される恐れはない。何故か。暗殺者が狙うのは「敵のボス」で、「こいつが生きているのは禍、邪魔だ、消すに限る」と評価される“大物”である。

「差別だ、俺にも暗殺される権利がある」と嫉妬する小生のような変人もいそうだが、それなりの地位にのし上がり、世間にそう認められないと「権利はあっても資格はない」から、普通の人生を送ることになる。政治家の場合「凶刃に倒れる」という立派な評価を得るには、私利私欲を捨て、国家国民のために努力しなければならない。凡人や悪人にはなかなかできることではない。

「武士道」や「いさぎよさ」「正道」を「美」とする日本人は大方、そんな風に思うだろうが、世界は色々だから、私利私欲や自己保身を優先する為政者もいる、と言うか「それが正道」という人の方が多いようだ。

ラージャオ(中国人風刺漫画家)&トウガラシ(コラムニスト)コンビによる以下の「国とカネのためなら肉親も犠牲に 国民が互いを“密告”しあう現代中国の流行語『歩く50万元』」(ニューズウィーク2023/9/22)にはちょっと驚いた。

<「行走的50万」(歩く50万元)は中国ネットにおける最近の流行語で、中国に潜伏しているスパイを指す。北京市国家安全局が2017年4月に公表した「公民挙報間諜行為線索奨励弁法(公民スパイ行為告発奨励規則)」に関連する造語だ。

それによると、スパイ行為の防止あるいはスパイ事件摘発に重大な役割を果たした人に対して、最高50万元(約1000万円)の賞金が与えられる。つまりスパイ1人は「歩く50万元」である。

どうやって「歩く50万元」を見つけるのか。中国の人気サイト「知乎(チーフー)」によると、新聞記者や外国の貿易会社、海外NGO職員は「歩く50万元」である可能性が高い。ある公安局の宣伝用ショートムービーは、誰かが軍事施設の付近で撮影したり、ネットで不適切な発言をしていたら「歩く50万元」として疑っていいと断言している。先日、ある中国人男性が中国国歌を歌えなかったため、愛国的な彼女にスパイと疑われ警察に告発されたという記事がSNS上で大量にシェアされた。

中国政府は「歩く50万元」発見運動を全国に押し広げており、家族間で互いに「大義親を滅す」ことも奨励している。これは「君主や国家の大事のためには骨肉の情も犠牲にする」ことを指す言葉で、人々は再び「文化大革命」的な恐怖を身をもって感じている。
文化大革命の時代は中国の歴史上、家族間の相互告発が最も盛んだった。当時、ある母親が家で毛沢東を非難して16歳の息子に告発され、母親は即座に連行され死刑になった。告発したその息子は70代の老人になったが、若かった自分の過ちを悔やんでも悔やみきれないでいる。

最近、22歳の中国系アメリカ人海軍兵士が国家機密に関わる軍事情報を中国に漏らしていたとして、逮捕・起訴された。こんなことをやったのは将来、米海軍から退役して中国に帰るとき、いいポストの職を探せるだろうという母親の打算から。軍事情報を提供することで、アメリカにいながら祖国への変わらない忠誠心を表明する絶好のチャンスと考え、息子のスパイ行為を奨励したらしい。

母親の愚かさは息子に災いをもたらした。しかも、それはカネ目当て。結局、中国の「大義」はカネ次第なのだ>(以上)

上が銭ゲバなら下も銭ゲバ・・・習近平一派をつぶせばまともな国なると思っていたが、4000年の苛烈な政治で下もおかしくなっているよう。除染は相当難儀しそうだ。以下のBloomberg News 2023/9/19の「中国、一般市民でスパイあぶり出し 共産党支配への外部の脅威警戒」によると、中国の将来を担う学生への洗脳も、まるでジョージ・オーウェルの「動物農場」や「1984年」みたいだ。

<9月に入り、北京市の名門大学には新学年を迎えた多くの学生が戻ってきた。こうした中、キャンパス内で宣伝活動が強化され、スパイを見つけた場合の通報方法に関する短期集中講座がシラバス(講義などの授業計画)に追加されることが示唆されている。

情報機関の国家安全省によると、清華大学では外部勢力に対する「防衛線」になるよう教職員や学生に指導する映像が学内のスクリーンに映し出されたほか、北京工業大学でも国家安全をテーマにした行事が開かれた。また、北京航空航天大学の学生は「スパイは誰だ」という対話型のトレーニングゲームに参加するよう求められた。

習近平指導部が共産党支配への外国からの脅威と見なすものを排除するため、国家安全の統制を強める中、中国当局は大学だけでなく一般市民に対し「スパイはどこにでもいる」というメッセージを送っている。河南省の警察は近隣に疑わしい人物がいた場合、中国の流行文化について質問し、愛国心を確かめるよう市民に促したほか、山東省のメディアは「あなたの周りにスパイがいるかもしれない」と書かれたポスターを掲載した。

習総書記(国家主席)は5月に開いた中央国家安全委員会の会議で、「極限思維(極端なシナリオを想定した思考)」を堅持する重要性を強調。この表現はそもそも自然災害への備えを説くために使われていたものだった。その後、改正反スパイ法が施行された。中国当局は海外の情報機関のために働いているとしてコンサルティング会社を批判したほか、外国勢力がエネルギーセクターに侵入しているとの警鐘も鳴らした。

毛沢東氏が主導した文化大革命では、友人や配偶者、親に関係なく、共産党の瓦解をたくらむ勢力とつながりがあることを示すわずかな手掛かりでもあれば報告するよう奨励された。密告し合うことを市民に求める悪影響を記憶している人もまだ多い中国で、不信感が強まっている。

テキサス大学オースティン校ジョンソン公共政策大学院のシーナ・グレイテンス准教授は、相互監視を市民に促せば、中国全般の統治に「有害な影響」が及ぶ恐れがあると指摘。「虚偽の報告につながり得る」とした上で、「ますます不正確な情報に基づくことになり、国内の治安当局にとっても裏目に出る可能性がある」と述べた>(以上)

「裏目に出る」、すなわち中共統治への不信感や反発が拡大するかも知れない、ということだろう。グレイテンス准教授は東アジア研究者。経済紙のブルームバーグは日経のように「是々非々的中庸」を心掛けているようで、グレイテンス女史も穏やかな感じ。櫻井よしこ氏を崇敬&畏怖している小生にはちょっと物足りないが、呉 軍華女史(日本総合研究所上席理事)はなかなかの論者で、日経2023/9/22に掲載された論稿をもとにした以下の「中国経済を妨げる『制度のワナ』」も刺激的で勉強になった。

<中国経済の「日本化」を指摘する声が聞かれる。不動産市況や物価など、バブル崩壊後の日本と似通う問題に直面しているためだが、一党支配で発展段階も異なる中国経済が「日本化」する可能性はほぼないだろう。それより注目すべきは「ソ連化」が進むか否かだ。

フルシチョフ時代のソ連は高い経済成長を遂げたが、その後は長期にわたり停滞した。体制維持を最優先とすることで、中国はその轍(てつ)を踏む可能性がある。旧社会主義国陣営では、中国のみが改革開放下で高い成長を遂げた。このため改革開放は中国独自のものと思われがちだが、そうではない。

中国の改革開放は、レーニンが1921年に始めた新経済政策「ネップ」がルーツといえる。レーニンは内戦による経済危機から脱するため、便宜的に資本主義的手法を取り入れた改革を進めた。一方で、政治や文化などの面では民主国家の影響を遮断し、あくまでも共産党政権の維持を最重要課題に据えた。ネップはレーニンの死後、しばらくして終了したが、その間にモスクワに滞在した若きトウ小平には深い印象が残ったようだ。トウ小平は何度もネップを高く評価した。中国の改革開放が「中国版ネップ」と言われたほどだ。

もちろん中国の改革開放にはネップにない要素もある。両者の主な違いは、民間企業の活用と対外開放にある。以前、本欄でも指摘したが、中国共産党は政権獲得後、すべての権利を中央に集中するソ連型の全体主義的体制を移植したが、やがて「郡県制」の伝統を受け継いだ地方分権的全体主義に改めた。この体制の下、民間企業の誘致合戦が地域間で活発になった。
また、中国は先進国の資本・技術を容易に取り入れる経済のグローバル化にも恵まれた。だからこそ、中国はソ連などとは異なる成長パフォーマンスを実現できた。

経済成長とそれに伴う中間層の拡大は、民主化につながるとされる。西側の対中接触政策を支えた理論的根拠だ。しかし、中国共産党にとっては、平和的手段で体制崩壊を狙う「和平演変」にほかなく、絶対阻止すべきことだ。
習近平体制発足以来、社会統制の強化や民間企業の締め出し、米国など西側諸国との関係悪化が顕著に進んだ。その原因を習氏個人に求める声も聞かれるが、そうではなく(和平演変を阻止するという共産党の)制度的なものと言わざるを得ない。

共産党の支配や公有制を基本とする社会主義制度の維持などは、改革当初からの基本原則だ。反「和平演変」は江沢民・胡錦涛時代でも最重要課題だった。習体制となってこうした動きが劇的に強まったのは、国力の増強により、便宜的な改革で成長を促す必要性が低下したためだ。そして、社会の多元化に向けた圧力が増大し、「和平演変」(による体制崩壊)のリスクが高まった、と指導部が判断したからだろう。

中国経済の苦境を「中所得国の罠」で説明する向きもある。しかし、成長を妨げる罠は所得水準ではない。それ(経済苦境の原因)は(社会主義制度の維持など)基本原則に裏打ちされた制度(そのもの)だと言えよう>(以上)

マルクスによると、ブルジョアジーを叩き潰したプロレタリア(労働者)による共産主義独裁経済の発展のキモはこうである。
<1)土地を国有にして地代を取って貸し出し、国家支出に充てる。2)強度の累進課税を課す(金持ちを作らない)。3)相続制度を廃止する(金持ちを根絶する)。4)亡命者、反逆者の財産を没収する。
5)独占的国立銀行により信用を国家に集中させる。6)運輸機関を国営にする。7)工場など生産手段を国有にする。8)平等な労働強制、産業(特に農業向け)支援軍の編成・・・

革命によりプロレタリア階級が支配階級になり、古い生産関係を廃止していけば、階級対立、階級そのものが消えていくだろう。ブルジョア社会の代わりに、そこには一つの「協力体」が形成され、個人の自由な発展が、すべての人々の自由な発展の条件になる>(マルクス「共産党宣言」1848年)

結果的にどうなったか。赤色エリートによる苛烈な強権独裁国家を生み育てることになってしまった。高学歴の人はイエスマンにならないと良い仕事に就けない、パンにありつけない。圧倒的大多数の庶民は食うのがやっと。苦情を言えばラーゲリ(強制労働収容所)行きだ。身に覚えがなくても、ある日突然逮捕される。諦観と逼塞で静かに目立たぬように暮らすしかない。習近平独裁の中国も同様だ。

<ロシア人の70%以上が自分たちをロシア正教会のキリスト教徒であると考えており、その数は増え続けています。また、2500万人のイスラム教徒、150万人の仏教徒、17万9000人以上のユダヤ人がいます>(ロシアのサイト greelane)

プーチンはウクライナ侵略が想定外の長期戦になり兵士不足になったため、ロシア正教以外の主に地方や辺境に暮らすマイナーな宗教信者を徴兵しているという。彼らが戦死してもモスクワなどの大都市はロシア正教信者ばかりだから、ほとんどニュースにもなっていないようだ。辺境の地の異教の若者はプーチンから見れば安上がりの兵士、いくら死のうと痛痒を感じないし、異教徒の減少はむしろ“願ったり叶ったり”かもしれない。中露北はそんな国だ。

日本は異形の中露北の独裁者を殲滅しなければならない。世界から英仏蘭米の植民地を一掃した初めの一歩は日本による。日本は矢尽き刀折れボロボロになり敗戦、以来、主権を奪われ米国の属国に甘んじているものの、武士道精神は熱き血潮のように残っている。対中露北の戦争は「ゴロツキ邪道 vs 武士道」の激突だ。日本独立の運命、皇国の興廃もこの一戦にあり。各員一層奮起すべし。
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